昨日7日は立冬であった。
★柴垣を透く日も冬に入りにけり 久保田万太郎
★凪ぎわたる地はうす目して冬に入る 飯田蛇笏
★立冬の軋むばかりの椅子の音 庄司たけし
第1句、太陽の高度も午後にはあっという間に低くなり、生垣も葉を落しているにもかかわらず、透過する陽射しも寒々しくなる。生垣の周りの色彩は乏しいが、生垣にあたる陽射しの周りは夕陽の鮮やかな茜色に染まっている。
第2句、甲斐の地は相模・武蔵よりも寒く、そして乾燥している。冬のきりりとした寒さも風がない日もある。そんな地面が「うす目」で作者を凝視しているというのである。その目は暖かい親しみのある視線なのだろうか。これから厳しい冬だという警告の目なのだろうか。何か含みのある目なのか。
私は冬の眠りに入る甲斐の自然に自身を投影しているように思える。決して冬を厭うてはいない。
第3句、多分会議か打合せが行き詰っているのではないか。参加者の口が重くなり、回転いすを揺らす音だけが室内に響く。こんな場面は早く逃げ出したいのだろうが‥。冬に入り乾燥して金属などが摺れて軋む音ばかりが響く、季節感タップリである。