Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

ゴキブリの俳句

2018年05月19日 23時38分10秒 | 俳句・短歌・詩等関連
 先ほどゴキブリの出現の記事をアップした。ウォーキングから戻って、「もしかしたら」と半信半疑ながら歳時記で「ゴキブリ」を探してみた。
 なんと夏の季語に「ごきぶり」があった。二つの歳時記ともに取り上げており、「油虫ともいう」としている。アブラムシはカメムシと同類でアリマキともいう。集団で発生し密生して維管束に口針を突き刺して師管液を吸って栄養としている。
 ゴキブリは単独でゴキブリ目に含まれ、和名は「御器囓り(ごきかぶり)」、「御器(食器)を被る」事から「御器被り」、「御器のふりをする」事から「御器振り」、と食器との関連に由来するといわれる。
 しかし両方の歳時記とも、ごきぶり=油虫として例句まで出ているので、俳句の世界ではこうなってしまっているらしい。
 今回は好きな句というのではなく、あくまでも「ごきぶり」の句として‥。

★滅多打ちしてごきぶりをかつ逃す    安住 敦
★ごきぶりを滅多打ちする気の弱さ    宮澤裕子
★ごきぶりを打ち損じたる余力かな    能村登四郎


 これほどまでにゴキブリを虐待するのでは、ゴキブリに同情もしたくなるほどである。ゴキブリの姿は確かに私の眼にも醜悪に見える。しかしそれ以上に嫌なのは、叩いた後のゴキブリの体液が床にこびりつくことであり、そしてゴキブリ用の殺虫剤のべたべたして拭いてもとれない油ッ気である。それを想うと新聞紙を丸めて滅多打ちにしたくなくなる。
 東北地方で育った妻はゴキブリをあまり見たことがないそうである。都会の場末のビルの片隅に生息しているイメージが昔からあった。私も横浜に戻ってきて、そのような場末の飲み屋で最初に見たが、次第に団地の中にも多数いることに気がついて驚いたものである。
 我が家では使い古しの窓付きの封筒を用意しておき、軽く殺虫剤をかけて弱ったらその封筒にそっと移して封をする。一晩中ガサガサしている強靭なゴキブリもたまにはいるが、朝までには静かになっている。何故殺虫剤をあまり使わないかというと、セキセイインコを飼っていたためである。ゴキブリ用殺虫剤をセキセイインコに噴霧はしたくなかった。

★ごきぶりの走る夜長にカフカ読む    相羽宏紀

 むろんカフカの「変身」からの連想であるが、主人公ザムザが返信するのは「巨大な毒虫」という表現でゴキブリではない。作者も挿絵には昆虫を連想することを避けている。この句、作者はごきぶりの這いまわるのを聴きながらカフカを読んでいる光景を想像しているらしいが、読書に集中できるのだろうか。ちょっと作り過ぎた感の強い句である。

★あるはずのなき隙間へと油虫      土生重次
★書斎派と厨派のをり油虫        鈴木鷹夫


 ともに「油虫」の句であるが、確かにごきぶりの一側面は言い当てている。

★愛されずして油虫ひかり翔つ       橋本多佳子

 この程度にはゴキブリにも目をかければ、我が家には出没しなくなるであろうか。


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