
我が家にはバッハの「ゴールドベルク変奏曲」は2種類ある。ひとつは本日取り上げるグレン・グールド(1932-1982)の1981年のピアノによるデジタル録音盤、もう一枚はジャス・ピアニストのキース・ジャレット(1945-)のハープシコードによる1989年の演奏のもの。
よく人に「両極端」な選択と指摘されることがある。極端な選択をした覚えはないが、たまたまそうなっただけである。
毀誉褒貶、評価はいろいろあるグレン・グールドであるが、1955年にこのゴールドベルク変奏曲でワシントンにて衝撃的なデビューを飾っている。その後1964年以降演奏会で人の前で演奏することをやめ、録音一筋となってしまう。またバッハへの傾倒でも有名である。この1981年版は1955年のデビュー以来の録音として貴重なものであるという。
作曲家の指定を変更するなどさまざまに物議をかもしており、このゴールドベルク変奏曲でも作曲家よりも演奏家グールドの奏法、それも旧盤と新盤の比較に大半が費やされている。
グールドとジャレットのCDしか知らない私は、「正調」のゴールドベルク変奏曲を知らないといえるのかもしれない。
このゴールドベルク変奏曲は本来の題名「アリアといろいろな変奏 クラヴィーア練習曲集」というのだそうだが、「カイザーリンク伯爵の不眠症をいやすため」の曲ということである。しかし幾度聴いても私には心地よい眠りにいざなわれるという感覚には襲われない。どちらかというとポツンポツンという切れ切れの印象の方が強い場合がある。一気に聴き通してしまうことの方が多いが、気分的に高揚していないとそんな感想にはならないと思う。




