次のような書き込みを見つけた。私としてはとてもわかりやすく参考になったので、そのまま引用させてもらう。私の頭の中の整理にもなったと思う。
【https://www.facebook.com/tetsunari.iida】
なお、「エコーチェンバー:価値観の似た者同士で交流・共感し合うことにより、特定の意見や思想が増幅する現象。閉鎖空間で似た者同士で意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってきて増幅していく状況」(ウィキペディアより)
ツィッター(X)に流した処理水/汚染水問題の構図の考察です。ご参考まで。
〇全体構図
・完全に二極化してそれぞれがエコーチェンバーに入って、双方を「非科学的」と見做している
・日本政府が丸ごと一方のエコーチェンバーに入っている。
以下、双方のエコーチェンバーを私見と独断で対比してみる。
・「処理水放出は安全で問題ない派」を「処理水派」(処)と呼ぶ。
・「汚染水放出は危険・問題派」を「汚染水派」(汚)と呼ぶ。
〇主要論点と双方の食い違い
(1)廃炉に必要?
(処)福島第一原発の「廃炉」には避けて通れない
(汚) 「廃炉」には無関係、むしろ優先度の高いことが数多くある(地下水流入の防止や水冷却から空気冷却への転換など)
・デブリ取り出しが可能か、可能だとしてそれが「廃炉」か?そもそも「廃炉」の定義もなく、「廃炉の在り方から再検討が必要
(評価)
「汚染水派」の批判が妥当
(2)代替案
(処)他にスペースもなく、放水が最も低コスト
(汚)すでに放出案は風評被害対策評価を考慮すると高コスト。水蒸気放出、コンクリート化、巨大タンク化など多くの代替案がある。
(評価)
「汚染水派」の提案が妥当かつ合理的
(3)安全論
(処)トリチウムは安全、濃度も告示限度以下に抑えている
・IAEAも安全と評価している
(汚)トリチウム以外の多種多様な放射性物質核分裂生成物(約200種)が含まれており、多くは計測すらされていない
・トリチウムも有機結合型トリチウムは生物濃縮を起こす可能性がある
・告示限度は敷地境界1mSv/年以下に過ぎないが、こうした一般環境への放出には、長期かつ集団被曝の確率的な影響を考えて少なくとも100倍の安全裕度が必要
・IAEAは日本政府と東電の出したデータと評価を承認しただけ、そもそも原子力推進機関で、チェルノブイリ事故後にも被害を大きく過小評価した前科がある。
・人類が過去半世紀以上の公害、オゾン層破壊、気候変動などを引き起こす中で学んだ予防原則に立てば、未知・不可知のリスクを恐れるべき
(評価)
「汚染水派」の批判が真っ当で人類の叡智を踏まえている。
(4)他もやっている
(処)中国、韓国の原発からもトリチウムは大量に出ている
(汚)原発から必然的に出るトリチウムと、メルトダウンデブリの核汚染水とは根本的に違う。
・排水口から「出てしまう」トリチウムと、いったん地上で保管している「核汚染水」をわざわざ放出する行為は、意味合いが全く違う。
・再処理工場の排水は、トリチウム以外の汚染も懸念されるが、そもそも破綻した核燃料サイクルも再処理工場も止めることがベスト。
(評価)
「汚染水派」の批判が真っ当
(5)呼称
(処)処理済みであり「処理水」と呼ぶことが妥当
・汚染水と呼ぶと風評被害を招く
(汚)処理しても、なお汚染しており、正しく呼ぶことが重要
・風評被害以前に実害リスクも考慮すべき
・国がメディアに「処理水」と呼ばせる言論ファシズムの気配がある
・海外メディアは汚染水(Radioactive contaminated water) と呼んでいる
(評価)
「汚染水派」の主張が真っ当
(6)風評被害
(処)汚染水と呼んだり被曝リスクの主張は風評被害を招く
(汚)「風評被害」という言葉でリスクの問題定義を封じ込めることは実害リスクの隠蔽に繋がる
・汚染水放出そのものがすでに中国や韓国など海外による輸入規制など経済的実害を生んでいる
(評価)
「汚染水派」の主張が真っ当
★ この問題が、拙速な決定で輸入禁止から日本製品全般の不買運動にまで広がり外交問題に発展している。中国の過剰なナショナリズムは現中国共産党などの最近の動きから十分に予想されていたこと。そして日本にも巣くう偏狭なナショナリズムを煽る今のマスコミのあり方にも大いに問題があると思う。
ナショナリズムの不幸な尖鋭化は、国家間の衝突に発展する。とても危惧している。一歩処理を間違えば取り返しはつかない事態になることは、自国の歴史をひも解けばすぐに理解できるのだが、現在の為政者もマスコミも無自覚である。あまりに情けない。