

古代史セミナー9月講座の会場である神奈川県立地球市民かながわプラザで、写真展「昭和」(写真家が捉えた時代の一瞬)を開催していた。講座終了後に450円で入場した
木村伊兵衛、入江泰吉、土門拳、浅野喜市、濱谷浩、緑川洋一、林忠彦、芳賀日出男、長野重一、田沼武能、熊切圭介の11人がの写真家が昭和10年(1935)~45年(1970)までの作品161点が展示されていた。
大正デモクラシーの時代の残照が残り、関東大震災からの復興が東京をはじめ都市を大きく変えた時代から、昭和の恐慌を経て日中戦争から第二次世界大戦にのめり込み、敗戦、戦後復興、高度成長期と政治の季節への道筋がモノクロームの印画紙に克明に記録されている。
大正デモクラシーの明るくそして逞しい庶民の生活が、昭和恐慌から日中戦争へと急傾斜で市民生活を圧迫し、国民をあっという間に巻き込んでいったか、人々の表情から察することもできる。同時に大正デモクラシーの残照の時代の人々の明るい表情がとても印象に残った。あの明るい表情の下には、戦争の足音が迫っていたと思う。さらにあの明るい世界の後ろには明治維新以来のアジアにおける覇権を求める日本のアジア侵略と、国内における過酷な格差社会と収奪が存在していたことを思い出す必要がある。
しかし果たしてあの戦争の惨禍から回復することができたのであろうか。高度成長を経て豊かな社会になったといえるのだろうか。明治維新以降の近代化の歪みが私たちにもたらしたものは何か、あの戦争がもたらした惨禍とは経済的な損失だけではなかったのではないか、高度経済成長はそれらの歪みを拡大再生産しただけではないのか、いつもこんな疑問を私は持ち続けている。
そんなことを想いながら会場を後にした。
下の写真は土門拳の「原爆ドーム」(昭和32年(1957))。
