カラヴァッジョの「聖マタイ伝連作」のひとつである。
この作品をエックス線調査をすると、人物が小さい下絵があり、全面的に書き直されたと「1時間でわかるカラヴァッジョ」(宮下規久朗)に記載されている。
また中央の一番小さく奥に描かれている振り向く男はカラヴァッジョの自画像という。
これまでの「聖マタイと天使」「聖マタイの召命」、あるいは他の作品から私が第一に受け取った印象は、「クローズアップによる焦点の明確化を促す光線」、そして「劇的な動作による登場人物の視線の集中」である。
これは一見俳句の方法に似ている。また藤田嗣治の戦争画の密集化した集団表現につながるものである。劇的な場面といっても、人々の意識がすべてある出来事に集中しているわけではなく、個々の意識は散漫である。
自分の後ろで交通事故が起きても、その事故に意識が向いているわけではない。一つの出来事に登場人物の視線や意識や、小さな動作がすべてそこに集中している。この集中がカラヴァッジョの構成の真髄だと思い至った。当たっているのか、頓珍漢なのかはわからないが、あくまでも私の思い付きである。
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