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伊東良徳の超乱読読書日記

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なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか 逃れられないバイアスとの「共存」のために

2022-12-14 20:51:42 | 人文・社会科学系
 人種・性別・宗教・性的嗜好等に関する差別的な行動パターンが今なお繰り返されることの原因を(意図的な差別主義者の言動は別として)人が持つ無意識のバイアス(偏見)によるものと分析指摘し、バイアスへの気づきとそれを意識した行動を求める本。
 人が見知らぬ相手を外見・外部に表れた徴表から瞬時に評価判断することは、生存に欠かせない基本的な機能として脳に組み込まれたものだということが、まず解説されています(38ページ、64~65ページ等)。特定の類型的な情報を選択して注視して判断することは、日常でも、また専門的な仕事や趣味を効率的に行うためにも有用だとも(96~97ページ)。
 そして、優位集団に属している者は、その判断における偏見に気付く必要がないので容易に気付かず(100ページ)、自尊心の高い理性的な人ほど自分は公正に振る舞っている、偏見などないと思い続け(54~55ページ)、他方、非優位集団に属している者は他者の些細な振る舞いに気付くことが日々の生存に欠かせないので敏感に感じ取る(99~100ページ)と説明されています。
 バイアスを是正するために研修プログラムで、いかに苦しみ傷ついてきたか、虐待受けたという話を聞かせることは逆効果で非優位集団の人との感情的な溝が拡がるだけでまったく効果がないとされています(224ページ)。偏向していると夢にも思っていない者に対してその偏向を非難しても相手は心を閉ざすだけというのです(277ページ)。偏見は(生存やルーティーンの判断のために)脳にプログラムされているもので誰にでもあり避けられない、従って自分にも当然あるということを認識した上で、だから仕方がないと開き直るのではなく、自分の判断や今相手に持った感情がどこから来るのか、偏見ではないかと立ち止まって考える、また偏見に基づく直観的判断で突き進まないようにさまざまな場面で意識的に検討できるような手立てを準備しましょうというのが、著者のアドバイスになるようです。
 ごもっともな指摘であり、自分を振り返り心がけるべきこととしては、そうだなぁと思うのですが、その偏見に基づく行動(差別、ハラスメント)が裁判の場で問われる場合の対応が業務の1つである者としては、なかなかに悩ましいところです。


原題:EVERY DAY BIAS : updated ed.
ハワード・J・ロス 訳:御舩由美子
原書房 2021年10月25日発行(原書は2020年、原書初版は2014年)
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