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伊東良徳の超乱読読書日記

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基本判例から民事訴訟法を学ぶ

2022-12-11 19:53:58 | 実用書・ビジネス書
 民事訴訟法学上の論点について、主要な学説とその論拠、問題点を概説し、主として最高裁判例を紹介して裁判実務を示し、その当否や残された問題について「課題」を提示するという体裁で解説した本。
 民事訴訟法上の問題は、ふだんあまり考えないんですが(大半の事件では、民法とか、労働事件なら労働契約法とかの「実体法」レベルのことで決着が付くので)、ときどき、あーそういう問題があるのかというように出てくることがあります。弁護士としては、そういうときの備え/嗜みとして判例を読み込むことはとても勉強になります。
 原子炉設置許可処分の取消訴訟において「被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべき」であるのに、安全審査に関する資料をすべて被告行政庁側が所持していることを理由に、「被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである」とした伊方原発訴訟最高裁1992年10月29日第一小法廷判決について、著者自身は「微妙です」「従来の主張・立証責任の理論とは異なる考え方」とし、学説上評価が分かれるとしつつ、批判的な見解が多数紹介されているように感じられます(137~143ページ)。スモン訴訟で東京高裁1974年4月17日決定が別の裁判で別の患者(被害者)から損害賠償請求されている医師の補助参加を認めなかったことについて批判的な見解を述べている(275~276ページ)ことも合わせ、著者は、裁判所が原発訴訟を起こす周辺住民や薬害訴訟の被害者を利するような(国や医師の利益を制限するような)判断をすることには批判的/敵視する姿勢を持っているように見えるというのは、私の偏見/僻目でしょうか。


長谷部由起子 有斐閣 2022年9月30日発行
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