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伊東良徳の超乱読読書日記

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カンランシャ

2010-02-17 23:02:20 | 小説
 かつての部下いずみと結婚し現在は独立して人材派遣会社を立ち上げてそこでの部下25歳沢田愛を愛人にしている蛭間直樹と、不動産会社時代の後輩の34歳瀬尾隆一と直樹の妻30歳いずみの恋愛もようを描いた中年恋愛小説。
 妻と別居中の身で先輩の妻に惚れコントロールが効かなくなる隆一の一直線ぶりがどこか切なく、頭は比較的冷静なのに平然と夫の後輩とほとんど絶え間なく肉体関係を続けるいずみがどこか怖い。
 夫が愛人との関係を続けているいずみと妻が年下の男と不倫したことから別居した隆一という、「被害者コンビ」にダブル不倫をさせているので、同情心からまぁ仕方ないかと思える設定ですけど、同じ不倫するにしても「先輩の妻」「夫の後輩」とするかなぁ。妻と愛人をともに騙して関係を続ける直樹が悪役になっているので許されるんでしょうけど、直樹も妻といると愛人が恋しく愛人といると妻が恋しい切なさを感じ、2人の女を手玉に取っているつもりで実は踊らされていた面もあり、なんかかわいそうな感じもしますしね。
 それにしても中年になっても恋に落ちるとブレーキが効かなくなるものでしょうか。ちょっと考え込んでしまいます。
 タイトルの観覧車は、観覧車は外から見る方がいい、中でいちゃついているやつらは馬鹿にしか見えない、乗ってみたら地上の人の方が馬鹿みたいに見えるかもしれない(6~7ページ)、灯りの消えた観覧車って、なんだか惨め、光の渦みたいに見えてたのがただの鉄の塊になってしまう(175ページ)、観覧車にふたりで乗り込んで新しい頂上を目指そう、いつかまた地上に戻るのだとしても(236ページ)と、外からは愚かしく見えるが自分たちは夢中でしかしそれはいつまでも続かないという恋に落ちた姿を象徴しています。
 でも、この小説、一番すごいのは雑誌連載がちょうど作者自身の離婚と同時進行の時期ってところかもしれません。小説の中身や登場人物の不倫や離婚と作者の経験が一致するかどうかは別として、そういう時期にこういうテーマを書き続けられるのって、作家の魂か定めか業か・・・


伊藤たかみ 光文社 2009年6月25日発行
「CLASSY.」2007年1月号~2008年12月号連載
コメント
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