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伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

司法官僚 裁判所の権力者たち

2010-02-13 22:05:36 | 人文・社会科学系
 憲法上独立が保障されているはずの裁判官が最高裁事務総局を中心とする司法官僚の人事政策により統制されていることとそれが司法制度改革の議論の中でも取りあげられずに温存されてきたことを紹介し、改革の提言を行う本。
 裁判所法が予定した裁判官会議による司法行政の決定が骨抜きにされて地家裁所長、高裁長官、そして最高裁事務総局が司法行政、とりわけ裁判所の人事を握ったことから、再任、転任、昇給といった人事面から、また裁判官会同等での「最高裁見解」の周知などにより裁判官への統制が強められて行き、司法制度改革で新たにスタートした人事評価書の開示と裁判官指名諮問委員会も、開示対象の評価書には当たり障りのないことしか書かないようになり、諮問委員会には作業部会が「重点審議者」を選定して詳細な報告書を出すことによってすでに骨抜きにされていることなどが論じられています。そして著者の提言は司法行政における裁判官会議の復権と裁判所情報公開法の制定、事務総局の再編(実権を裁判官会議に移して裁判官でない事務官のみにする)です。
 著者の主張自体は大筋賛同できるものですが、それだけに論証はもう少し丁寧にやって欲しかったと思います。司法制度改革以前の問題点については「危機に立つ司法」(宮本康昭、汐文社、1978年)で既により緻密に指摘されているところです(参考文献リストに「危機に立つ司法」がないことは私には驚きでしたが)。司法官僚の人選の不透明性やそのキャリアパスについては、学者が論じるのならある一時期の人だけで分析するのではなく相当期間の人事をきちんと統計的に分析して欲しいと思います。民事事件の弁護士を「弁護人」(正しくは「代理人」)と呼び続けたり、裁判官が民事事件で期日以外に「弁護人」と頻繁に面談しているかのような記述があったり(14ページ)するのは、法律家業界で軽く見られてしまいます。また、使われている資料や本文中の「現在」が発行の丸1年前の2008年8月というのも、どうしたことかと思います。
 そのあたり、専門家向けには脇の甘さが目につきますが、裁判官の人事を中心とした司法行政の問題点と、司法制度改革以降のその動向を一般の人が知るには手ごろな本だとは言えます。


新藤宗幸 岩波新書 2009年8月20日発行
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留学生と日本人学生のためのレポート・論文表現ハンドブック

2010-02-13 11:14:26 | 実用書・ビジネス書
 大学生、大学院生がレポートや論文を作成する際の構成とそれぞれの部分での言い回し(本の趣旨としては日本語の言い回し)についての解説書。
 実験、調査に基づく検証型論文と文献検討による論証型論文に分けて解説していますが、部外者からはその点の差よりも表現としては人文科学・社会科学系特有の言い回しとしてコメントされているところの方が差異が目につきます。
 各項目の総論的説明部分と表現(言い回し)文例の部分に英訳が付いています。ただ、その英訳の位置づけがあいまいで、「本書の特色」では「辞書のように使えて便利」と売りにしているのに、「ページの例と使い方」(vxiiiページ)では「英語は原文の意味を示すものである。英語論文の文例としては、自然でない場合もある」としています。つまり英文は本書を読む留学生が本書で示す日本語独特の表現の意味がわかるように(敢えて)英語にしてみただけで英語でこれが正しいとは限らないと逃げを打っているわけです。英訳を見ていて、本当に英語でもこういう言い回しするのかなと疑問に思うところもあります。読者の多くは日本人でしょうから、英訳を付するなら英語論文として書くならこういう表現という英訳もつけて欲しかったと思います。留学生だって大学生、大学院生なのだから英語論文の表現は理解しているはずですし。
 そのあたりどこまで通じるのかという不安は残りますが、それでも論文調の言い回しの英語表現や日本語と英語での言い回しのギャップについての知的好奇心はそこそこ満たされました。


二通信子、大島弥生、佐藤勢起子、因京子、山本富美子
東京大学出版会 2009年12月24日発行
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