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伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

アニメはいかに夢を見るか

2008-10-04 22:56:08 | 趣味の本・暇つぶし本
 アニメ映画「スカイ・クロラ」の監督とプロデューサーによる「スカイ・クロラ」のメイキングストーリー。
 衣食住に困らぬ社会でハングリー精神や目的を持てず将来の選択肢も現実には狭い中で閉塞感を感じている若者たちの気分を描きたいというような動機が語られ、例え永遠に続く生を生きることになっても昨日と今日は違う、そうやって世界を見れば僕らの生きているこの世界はそう捨てたものじゃない、同じ日々の繰り返しでも見える風景は違う、そのことを大事にして過酷な現代を生きていこうというようなメッセージを伝えたいということが語られています(7~11頁)。
 しかし、そうだとしたら、何故キルドレは生を実感するために死を意識し戦闘機乗りを選ぶのでしょうか。むしろ昨日と変わらぬ地道で退屈な日々を送る若者たちの閉塞感をそのまま描き、その中から、わずかな変化を見出していくという設定の方が、語っている内容からはずっと素直に思えます。
 メイキングストーリーの中で語られている経過(例えば62頁、94頁)からすると、単純に戦闘機が好きで、今まで誰もやったことがないような空中戦を描きたくてそういう話にしただけじゃないかと。草薙水素の髪をおかっぱにすることを監督が譲らなかったのも単に好きだから(116~117頁)というのと同じように。
 映画を見ていて感じた、アニメにしては異様に多い無言の間と長いカット、空のCGと地上の2次元手書きアニメの対比、光の過剰なまでの強調などの背景と思い入れは、読んでなるほどと思いました。
 タイトルはさておいて、「スカイ・クロラ」を見た人のためのファンブックと思った方がいいでしょう。


押井守編著 岩波書店 2008年8月6日発行
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愛のうたをききたくて

2008-10-04 01:56:45 | 小説
 何度も結婚と離婚を繰り返す実務能力がなく逃避しがちな母親の元で育ったために、強気で実務能力があり愛(男)なんて信じられないと期間限定のボーイフレンドを作っては別れることを繰り返すレミーの高校卒業から大学進学までの夏を描いた青春小説。
 レミーにいきなり駆け寄ってきて運命の出会いと語るだらしないバンド男に反発しつつ、大学に進学するために街を離れるまでのおつきあいと決め、別れつつも何か気になるけど、また反発を繰り返す中でレミーの気持ちが揺れ動き、前に行く様子がテーマになっています。揺れ動いた末に最後の展開が、今ひとつ唐突な感じもしますが、青春・恋愛ってそんなものと見ておきましょう。
 つまらない男と離婚を繰り返す母親を不幸な女と捉えていたレミーに、別れて傷ついても愛し愛されたことは事実でその方が遥かに大切なこと、一人でいたっていいことは起こらなかったし傷つくのを恐れて閉じこもっていても強くなれない、弱くなるだけと、母親が諭すシーン(337~338頁)が印象的です。


原題:THIS LULLABY
サラ・デッセン 訳:おびかゆうこ
徳間書店 2008年7月31日発行 (原書は2002年)
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