伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

J.K.ローリング「ハリー・ポッター」の奇跡

2008-10-18 17:16:40 | 人文・社会科学系
 「名作を生んだ作家の伝記シリーズ」第7巻で、J.K.ローリングの伝記だそうです。生きながらにしてもう伝記が書かれてしまうのですね。
 伝記といいながら中身はハリー・ポッターシリーズの内容とそれに対する読者や世間の評価が大部分で、ローリング自身の半生については目新しい情報は皆無と言っていいでしょう。
 しかも原書は2002年の出版でハリー・ポッターシリーズでは4巻の「炎のゴブレット」までしかフォローしていません。そのため出てくる写真も最新刊の話をしているところで4巻関係のものばかり。
 それを2008年に日本で出版するのであまりに酷いと思ったのか「はじめに」と「第8章 それから」が訳者によって書き下ろしで追加されて最近のことにも言及はされています。でも、中身には立ち入れないと考えてか、例えば、ローリングが子どもの頃、ワイ渓谷の「ディーンの森」を探検したエピソードを紹介して「禁じられた森を書くとき、ローリングはもしかしたらディーンの森を思いうかべていたのかもしれない。」(25頁)と書かれていて、そのことを訳者あとがきでもそのまま「子どものころ遊んだディーンの森と、禁じられた森とをつなぐ糸」(128頁)なんて挙げています。でも、新たな書き下ろしをする訳者がハリー・ポッターの7巻をちゃんと読んでいたら、ディーンの森のことに触れるなら、ハリーとハーマイオニーが追っ手を逃れて転々とする中でディーンの森に行きハーマイオニーが「グロスター州のディーンの森よ。一度パパやママと一緒に、キャンプに来たことがあるの。」(「死の秘宝」上531頁)と述べていることに言及しないでいられるはずがないと思います。
 こういう本がハリー・ポッターシリーズを十分愛していない人に書かれるのは、なんだかなぁと思います。


原題:WHO WROTE THAT? : J.K.Rowling
チャールズ・J・シールズ 訳:水谷阿紀子
文溪堂 2008年8月発行 (原書は2002年)
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容赦なき牙

2008-10-18 13:17:36 | 小説
 パラダイス警察署の署長ジェッシイ・ストーンを主人公とするサスペンス小説、ジェッシイシリーズの最新作(第7作)だそうです。
 ジェッシイはかつて妻との関係に悩みアル中となり妻と離婚したものの、元妻との関係をあきらめられず元妻の方もつかず離れずの微妙なつきあいで、それぞれに他の異性とも関係を持ったりしながら悩ましく生きています。警察署長としては、法的にはかなり危ないというかはっきり違法な手段をも使いつつ、より悪い者を排除し、より弱い者を保護していきます。違法な部分への目のつぶり方というかとぼけぶりが、読んでいて楽しい部分ではありますが、私にとっては仕事がらちょっとなぁと思ってしまいます。
 この作品で登場するお尋ね者のクロウが、アウトローなんですが、魅力的で、かつてパラダイス署管内で起きた事件の絡みで仇敵のはずなんですがジェッシイもその存在を認めて事実上組むことになります。クロウはインディアンでアパッチとされています。2008年の作品で「アパッチ」とか「インディアン」なんて言葉が出てくるだけでもビックリものですが・・・。それが魅力的で次々と登場する女性と関係を持ってしまうという設定は、エキゾティック好みか差別への反発か・・・。
 それにしてもこの作品で保護される14歳少女アンバーのいい加減さ身勝手さは、読んでいていらいらさせられますし、そのために多くの人が犠牲になるのは哀れに思えます。


原題:Stranger in Paradise
ロバート・B・パーカー 訳:山本博
早川書房 2008年9月15日発行 (原書も2008年)
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