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近江・青木城西城館 遺構はほぼ完存でわかりやすく見どころが多い山城 

2021-05-05 | 歴史

青木城西城館は滋賀県甲賀市甲賀町滝にあります。県道を挟んで東側には青木城東城館があり、合わせて青木城とされているようです。それぞれに独立した城郭と見えますが西城館が青木城の主郭部とされています。
 一帯は甲賀東部の古くからの雄族、多喜氏に属していましたが青木城は発掘調査から築城は十六世紀後半とされています。今回の資料は(1)「甲賀市史 第七巻 甲賀の城」2010 と (2)「図解近畿の城郭Ⅲ」2016 です。


青木城西城館 図1 北に伸びる尾根の南側を掘り切って備えている。城道は尾根北にある
 東城館との間にある青木池は農業用の溜池と思われ、往時はなかった可能性がありそうでした。両城は一体だったとされますが、そうだとすると青木池周辺の平地に居館があったのかもしれないと思いました。


青木城西城館 図2 城道Aは見学路よりも北に伸びていたかもしれない
 城は単郭の主郭Ⅰの四周を土塁で囲んだシンプルな造りでしたが、遺構はよく残っていて見ごたえがありました。特に虎口bの東側に翳土塁が設けられているのが興味深かったです。
 道Bは西側の谷を下っていましたが、城郭遺構に関連するものかは判断できませんでした。Ⅰ郭南辺の土塁の内側にはテラス状の地形Cが有り、資料(2)では南側からの攻撃を土塁越しに防ぐ仕掛けとして紹介していました。堀切aと相俟って南への守りが厚かったと思います。


青木城西城館 青木池北側から城址方向 見学路が見える
 往時の城道は東城館との間にもあったと思われますが今は不明です。道Aの延長線上に尾根を北に下る城道があったのではないかと思いますが確認できていません。


青木城西城館 平場  南上から 図2の②からの道があったと思われる
 地形を少し削平した平場③には②から登る道があったと思われます。戦いのためのスペースではないように思えますが、具体的な用途まではわかりませんでした。


青木城西城館 虎口bの目隠しの翳土塁   南から 城道Aは左に曲がって虎口に入る
 Ⅰ郭の虎口bには虎口を隠すように土塁①がありました。いわゆる翳(茀 かざし)土塁ではないでしょうか。遺構として明確に残っているのはあまり見かけませんので、ここも見どころでした。


青木城西城館 Ⅰ郭 虎口b  外側から
 虎口bは樹木が成長して一部を塞いでいましたが、地形として完存状態でした。写真奥にⅠ郭の西辺土塁も見えています。


青木城西城館 Ⅰ郭 内部  北から 奥に南辺土塁とテラス地形が見える
 多くの城址では竹が繁茂している場合が多いのですが、ここではまだそれほどでもなかったです。近年まで耕作地として使っていたのかもしれませんね。
 

青木城西城館 Ⅰ郭北辺土塁 東から   幅が広い
 土塁は小屋掛けができそうな広い幅がありましたが、図2で東向きに見ると横矢掛りの地形にも見えますね。


青木城西城館 Ⅰ郭 南辺のテラス地形C  東から
 テラス地形の幅は広く、土塁越しに南側からの敵を攻撃するだけの目的のスペースだったのか、少し疑問でしたが、多くの兵を入れる必要があるほどの脅威が南方向にはあったのかもしれません。


青木城西城館 堀切a 東から 右手にⅠ郭
 南尾根を断ち切る堀切aは規模も大きく完存状態で見どころでした。堀切aからⅠ郭の東側を巻いて虎口へ通じる細い通路が有りましたが、往時のものかはっきりしませんでした。


青木城西城館 平場⑤付近には何段もの平場がある。耕作地跡か?
 図2の平場⑤、⑥以外にも何段もの平場が下方に続いていました。城郭遺構ではなくて耕作地の跡ではないかと思いました。下段には廃屋があり近年まで付近は耕作地として使われていた感が強かったです。

青木城西城館は山城遺構のパーツが殆ど揃っいて残存状態も良く見どころも多くて大いに楽しめました。隣の青木城東城館も同時に見学しましたので、改めて紹介したいと思います。