芹川の堤を歩む青年武士、長野主馬の姿を
遊郭の一軒の二階から、なぜか心惹かれて見送る村山たか女。
船橋聖一の名作「花の生涯」の冒頭シーンである。
海の音はるかに聴ゆ
観音の
腰から背への豊かなる張り
所は彦根・袋町。今もバーや料亭の並ぶ、歓楽街だ。
その一角に偶然見つけたのが、商人宿「よろず屋」さんだった。
古風なたたずまいに、気を惹かれて、少し大き目の戸をひき開けてびっくり。
広い三和土、左手に格子がはまった座敷があり、二階の端には露台が。
むかしの遊郭のまま、出張の会社員や長期の工事のひとの宿だった。
友とふたり、一晩をすごした訳だが、見るもの聞くもの驚きの連続だった。
いくつにも折れ曲がった廊下。あまつさえ、曲面しているのだ。
歩きにくいたっらあらぁしない。なぜ、そんな造りなのか?判りますよネ、
二階は四畳半が並んでいるとか、所謂、ちょんの間というやつ。
私達が通されたのは、次の間付の座敷だったのだが、
酒屋へビール頼むやら、あちこちから料理取り寄せるやら、
よく気のつく明るいおかみさんには、えらいご迷惑おかけした。
雷鳴は鈴鹿の山へ去りゆけり
湖を大きく
架け渡す虹
柱のひとところ、深い傷口が。酔った軍人が斬りつけた跡とか。
トイレの扉には、雪隠の札が。玄関のバルコニーは、朝、帰る客を見送る
遊女の立つところとか。
宿にまつわるエピソードが面白く、夜は更けていったことだった。
一年後、東京の句会仲間が大挙して押し寄せ、みんなご満悦。
不思議な空間での句会は、大いに盛り上がったことだ。
残念ながら、今は営業されていない由。親戚の家へ遊びに行くごとく、
もう一度、一晩を過ごしてみたいものである。
遊郭の一軒の二階から、なぜか心惹かれて見送る村山たか女。
船橋聖一の名作「花の生涯」の冒頭シーンである。
海の音はるかに聴ゆ
観音の
腰から背への豊かなる張り
所は彦根・袋町。今もバーや料亭の並ぶ、歓楽街だ。
その一角に偶然見つけたのが、商人宿「よろず屋」さんだった。
古風なたたずまいに、気を惹かれて、少し大き目の戸をひき開けてびっくり。
広い三和土、左手に格子がはまった座敷があり、二階の端には露台が。
むかしの遊郭のまま、出張の会社員や長期の工事のひとの宿だった。
友とふたり、一晩をすごした訳だが、見るもの聞くもの驚きの連続だった。
いくつにも折れ曲がった廊下。あまつさえ、曲面しているのだ。
歩きにくいたっらあらぁしない。なぜ、そんな造りなのか?判りますよネ、
二階は四畳半が並んでいるとか、所謂、ちょんの間というやつ。
私達が通されたのは、次の間付の座敷だったのだが、
酒屋へビール頼むやら、あちこちから料理取り寄せるやら、
よく気のつく明るいおかみさんには、えらいご迷惑おかけした。
雷鳴は鈴鹿の山へ去りゆけり
湖を大きく
架け渡す虹
柱のひとところ、深い傷口が。酔った軍人が斬りつけた跡とか。
トイレの扉には、雪隠の札が。玄関のバルコニーは、朝、帰る客を見送る
遊女の立つところとか。
宿にまつわるエピソードが面白く、夜は更けていったことだった。
一年後、東京の句会仲間が大挙して押し寄せ、みんなご満悦。
不思議な空間での句会は、大いに盛り上がったことだ。
残念ながら、今は営業されていない由。親戚の家へ遊びに行くごとく、
もう一度、一晩を過ごしてみたいものである。