湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

セブンイレブンVSローソン、by湖北

2012年10月28日 | 詩歌・歳時記

                  

東海道と北陸道が交わる、ここ湖北では、古より争いが絶えない。

今は、コンビニ合戦がはっしと急を告げている。

          竜胆の庭いちめんの馳走かな

          秋風や塵ひとつなき能舞台

国道21号線に、走ること10分の間にローソンの店舗が三つあった。当然のように真ん中の

店が閉店してしまった。理知的な、素敵なオーナーの奥様でしたが。

つぶれるのは、すべてローソンだ。素人眼で見ても立地条件を無視したような、急増マンション

でもあるまいに、そしてまた、つぶれた店の極近くに新しく店が開くのである。

                 

セブン・イレブンでは、店と本部の間に、精密なネット・ワークが確立しているらしい。

売れた商品がたちまちイン・プットされ、翌日・・・・その商品を補充にくるとか。

ただ、この湖北でつぶれたセブンの店を一店だけ知っている。

          十六夜の月を真中に別れけり

          新涼の刀身さゆる彦根かな

その店のオーナーは、口やかましく、パートのおばちゃんやアンちゃんが長続きしない。

あまつさえ、ゴミ箱を外から店内に入れちゃって、ひそかな顰蹙をかっていたのだ。

                     

いずれ・・・・と思っていたが、ある日「貸し店舗」の張り紙が・・・・・。

栄枯盛衰、いろいろありまする。立地条件もあるのだろうけれど、結局はオーナーの

経営哲学がものをいうのでしょう。 厳しい、厳しいコンビニ経営であることです。


池波さんと近江

2012年10月22日 | 詩歌・歳時記

              マキノ高原

「片目猿」という、横山光輝の傑作劇画がある。当初は「ボーイズ・ライフ」という昭和40年代の

「プレイボーイ」「平凡パンチ」へは、まだ早い少年から青年向けの雑誌に、連載されたものだ。

油商人の身で美濃一国を乗っ取り、戦国大名にのし上がった斉藤道三と、陰で支えた「片目猿」と

呼ばれた凄腕の伊賀の忍者の物語りである。

          鰯雲あるがままいく老ひの道

          秋の湖まことの水のいろなりし

この1週間というもの、池波さんの忍者小説に耽溺している。

甲賀の女忍び「於蝶」を主人公にした 「蝶の戦記」「忍びの風」・・・・全五冊である。

謙信と信玄の川中島の決戦から始まり、信長の桶狭間の急襲、姉川の合戦、等々

戦国時代の大パノラマを、女忍びの眼を通して俯瞰した、一代ロマンの傑作である。

          歩みさる愛しき夢よ曼珠沙華

          ひこにゃんの登場まじか秋の風

甲賀の地は滋賀県の最南端に位置する。 取材のために何度もこの地を訪れた池波さん

である。特に「姉川の決戦」の描写において、わが知ったる土地と地名であることだ。

小谷山の浅井長政のその心中たるや、我にこそあるべし! ってなものだ。

               

歳をとって記憶力がおぼつかなくなったおかげで、この小説は三度目の再読であるが、

今もみずみずしく、面白い。 なんせ「鬼平犯科帳」などは、6、7度も読み返しているのだが、

読むべき本が見当たらなければ、今一度、手にしようと思うのだ。

 

  


愛ちゃんは・・・太郎の・・・

2012年10月16日 | 詩歌・歳時記

急激に秋になった、その夜にまぁー眠れない。それはそのはず、朝起きたのが9時だもの。

             

でね、えいっやっとベッドから起き上がり、台所へ立ったのだ。

じゃがいもの皮をむき、玉ねぎをさくさく、鍋に投入。鯖の水煮をリリーフ。母がいつも作った

あつあつのご馳走である。 でも、母には到底及ばない。 なぜかしら?

甘い玉ねぎが女性なら、ズンとほくほくのジャガイモは男性の象徴でしょうか。

なかを取り持つ鯖缶は、さだめし仲人さんかな。

  琵琶湖博物館・アマゴ                 

母の従妹に愛ちゃんがいて、結婚した相手が太郎さんでした。

あまつさえ、仲人がさ、なんと米太郎!!  

♪ さようなら さようなら 今日かぎり

  愛ちゃんは 太郎の嫁になーる オイラの気持ちも知らないで

  意地悪オヨネに 手を引かれ 愛ちゃんは 太郎の嫁になーる

         「愛ちゃんはお嫁に」 作詞・原  俊男 作曲・村沢良介  歌・鈴木三重子

その後、愛ちゃんが幸せか、どうかは私は知らない。

          三段に雲のかげおく秋の山

          秋の星孤独に果てはなかりけり

          夏星や母の微笑のあるごとく


秋の野原の大戦争

2012年10月10日 | 詩歌・歳時記

          秋風となりて

          湖北の野をゆけば

          乙女のままのひとと逢わむか

                              

日本の秋の象徴は、陽に輝きながらも切なく揺れ動く「すすき」にとどめをさす。

ところが、このすすきの好む土壌を、これまた偏執的に好むのがアメリカ外来の

「背高泡立ち草」なのである。 

          逢ひもせで

          恋せしといふ偽りを

          海にほどかむ秋のしるしに

セイタカアワダチ草の眼をむくような繁殖力に、一時弱りはてたすすきなのだが、

アワダチ草自身が、その根に秘める「毒」に自身が害されて、およそ3年のサイクルで、

すすきが復活する、秋の野山の景観だ。

                  

          死ぬるため生きる

          哀れを重ねつつ

          伊吹の山の秋をかなしむ

今年はどうやら「すすき」が優勢のようである。 佳きかな、良きかな、日本の秋よ。

           


母の好きな男

2012年10月04日 | 詩歌・歳時記

                 

母とプロ野球のホークス戦をテレビで見ていた時だ。 「わたしー、この選手、好きやわー」 と

まるで乙女のような、かすかな恥じらいを含ませて母がつぶやいた。

当時は中継ぎの投手・攝津正であった。 「なるほど! さもあらん」 と腑に落ちたのだった。

5歳という幼少で死んでしまった、次の弟の浩が青年になったならば、 

こういう風貌になるであろうという、摂津投手なのである。 

          ああ海よ

          おまえのなかに母がいて

          永久に寄せくる波はなつかし

ノートにひそかに和歌などを書き付けていた、母の血を色濃くひいた私に比べて、

かの人見絹江選手と同じトラックで、陸上競技に明け暮れて、卒業後は職業軍人の道を

歩んだ父のDNAを完璧に受け継いだ、弟・浩は男らしい気の強い子供であった。

                               

友だちにいじめられて、泣きべそをかきながら帰ってきた私に代わって、

「兄ちゃんを泣かせたのは、誰だ!!」 と、

やおら履いていた下駄を右手に振り上げて、表へ飛び出していくような弟であった。

          雨けむる流れも速き梓川

          こしかたの夢

          ゆくすえの道

それにしても、若くして亡くなった人間とは、実に素晴らしいひとが多いものだ。

赤木圭一郎、山川登美子、尾崎 豊・・・・・・。 弟も生きてさえあらば、何事かをなし遂げた

人物になれたやもしれぬ。

        

攝津投手は今やホークスのエースに成長し、最多勝のタイトルをほぼ掌中にしている。

その投げる姿を見るたびに、みまかった母と弟の面影を、偲んでいる今日この頃である。