湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

湖北・紅葉の「鶏足寺」

2014年11月24日 | 詩歌・歳時記

各地で紅葉の見ごろが最盛期を迎えている。 ここ湖北の地でも、彦根城や醒ヶ井養鱒場をはじめ「紅葉」の名所は数々あれど、

この4、5年のトレンドは最北・木の本の「鶏足寺」の、境内や石段を真っ赤に染めて散り敷いた紅葉の絨緞の豪華さであろう。

今年も大型の観光バスがひっきりなしにお客を連れてきては、10分ほどの待機場所へ入っていく。

            石道寺裳裾の紅や紅葉す                ・・・しゃくどうじ。  ちなみに石道の邑は、いしみちと読む。

井上靖が「星と祭り」の小説のなかで、邑の娘さんをモデルに彫り上げた、と評した石道寺の十一面観音を拝してのち、

アップダウンの山道をぶらぶらと20分ほど散策する。 鶏足寺は廃寺である。 そのわびさびた風情の情景のなかで、散り敷く

紅葉の紅色が見るものを圧倒する。 けれどもボクは二度とは行かないだろう。

10年以上も前、知る人ぞ知る「秘境」をひとりで歩き、行きかう2、3人と挨拶かわして・・・・熊の出現にいささかおそれながら、

「鶏足寺」のもみじと、湖北の晩秋をたっぷりと堪能したから・・・・である。

            湖初冬竹生島かけ朝の虹

さらに北へ歩く。 やがてたどり着くのは古橋邑の「己高閣」という、仏像の収蔵庫である。 この地はかの関が原の合戦の折り、

無念にも破れさった石田三成が、伊吹山ろくを逃げおちて隠れひそんだ邑である。 冶部どののご母堂のふるさとなのである。

ここには邑のおかみさんを模したと言われる、やや大振りな十一面がおわします。 

己高庵という日帰りの薬草風呂やレストランを完備した宿泊施設がある。 都合1時間ほどの散歩であることだ。

            吾子の尻掌になつかしきゆず湯かな

     

そして、知る人ぞ知る・・・という聖地はなおもあるのだ。 古橋の邑を見下ろすようにそびえる「己高山」・・・こだかみやま・・・である。

京の叡山の鬼門にあたるこの山は、中世、一大山岳仏教の興隆をみたのだが、廃れるにしたがい落雷や風雪により、廃寺となり

あまたの仏像群がふもとの寺へ、あるいは御堂へと下ろされたのである。

湖北に十一面観音およびその他の仏像が多い・・・という訳けである。 この己高山への登山者が疲れた体を癒すのが、己高庵の

薬草風呂であることだ。 そんなこともまったく知りもしない人たちが、今日も紅葉狩りにひしめくように集まってくる。

            はてもなく

            天の意に添ふ詩歌まつ

            冬のはじめの孤独なる夜

この10年、ボクの「湖北」は壊滅状態でござんす。