湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

末期がん

2012年01月31日 | 詩歌・歳時記

母の命があと半年と宣告されてから、ひと月半経ちました。

元旦の夜明けに、看護婦が突然、あわただしく車椅子に乗せてくれたそうです。

                    

南側の窓辺に連れて行かれて、丁度グッド・タイミング!! 山の端に初日の出を

見せてくださいました。 白内障のゆえか、真珠色に輝いた、そして、生まれて初めて見る

初日の出でもありました。 母のその折の感動はいかばかりか。

一句つぶやいていました。

      わくら葉に ひとの情けの 初日の出

                   

遠縁の娘が書道の講師をしていまして、彼女に短冊への揮毫をお願いしました。

そのやさしいナースへ贈ると、母が申します。 届いた短冊に添えて、母の手作りのポーチを

感謝の気持ちをこめて、貰っていただきました。

            

          湖にふる

          雪はむなしく水となる

          孜々と重ねてひとの営み

桜の花の咲くころまで、生きていてくださるでしょうか。むくんだ足を擦るしかない私です。

          湖の果て

          雪嶺はありけぶるごとく

          ついには行けぬ国を知らしめ 

                                       魚津・ミラージュ・ランド        

          死ぬるため生きるいのちよ

          さわあれど

          湖のほとりに母の名を呼ぶ


はっぱ、ふみふみ

2012年01月25日 | 詩歌・歳時記

    母の手作り        

何十年と愛用していた、漆塗りの万年筆がとうとう駄目になった。

中学校へ入学の折、父に買ってもらった初代から、いったい何本の万年筆を使ったことか。

巨泉さんがパイロットの万年筆の、テレビCMで「キャップ・レス」を宣伝していたのは、高校生の

頃だった。 新しもの好きな私は、バイトの金ですぐに買ったさ。

    みじかびの きゃぴれすとれば すぎちょびれ すぐかきすらの はっぱふみふみ。

少し太めの胴回りの感触を、今に覚えている。 代々のペンの想い出はつきない。

          姉川は

          厳冬の水流れきて

          厳冬の湖なほもめざすか

                             近江名物・鮒寿司

ネットのアマゾンで物色した。2時間あまり。これぞ、という一品を買い物籠に入れた。

25,000が14,300である。支払いは、ローソン。バーコードをプリント・アウトして、

ローソンのロッピーという機器にかざす。紙片が出てきてそれを店員に渡して、

金を払う。いたって簡単至極。翌日に品物が届いた。唖然とする間もないのよね。

「なんなんだ! これは!」と、一瞬は思うよ。 便利すぎる、この落とし穴はないのかね?

と、考えるのは私が年をとったせいなのかしら・・・・。

           ふとよぎる面影のあり

           雪けむる山里あたり

           君も老けむや                                            

「巨泉」 というのは

早稲田大学の俳句同好会時代の俳号なんですね。本名は、大橋克己。

同級生に俳句ではどうにも勝てそうもない、男がいてそれゆえ俳句は断念したとか。

句会で、抜かれた句に名乗りをあげる 「すうじゅ!!」と。 それが故・寺山修二でした。

 

巨泉さんは、男の生き方の理想です。尊敬しています。

            湖に鴨

            野に群雀それぞれの

            生を育くみ冬を耐へるか


療養病棟

2012年01月19日 | 詩歌・歳時記

           母の生まれ在所  

母が入院してやがて一ヶ月が経つ。 膵臓にガンが見つかったのが、昨年の10月。

二度にわたるCTの検査で、肝臓にも転移して、高齢のため、手のほどこしようがないと、

余命半年を宣告されてしまった。

            肩をもみ肩を叩きて

            病室に

            肉付きうすき母をかなしむ  

                    

                    清流の美しい邑である。

            雪嶺は

            空ととけあひ夢のごとく

            あの世この世のひかりまといぬ

       彦根城・二期咲き桜

療養病棟は一般病棟とは違い、ゆったり・のんびりしている。

すべての看護婦が天使の化身のように見える。

                      

            肩先の蒲団かすかに上下して

            母のいのちを

            知らしめるなり

むくんだ足をさすりながら、足りな過ぎた親孝行の積み上げの毎日である。

          水戸市より寄贈・冬のさくら

            長浜の町を浮かべて

            湖しずか

            雪つむ山のひそかなる声

 

             

 


沈黙・・・・・作詞

2012年01月13日 | 詩歌・歳時記

1  ともしびのかげに 目をつむり              

   細い指をくみ ひざまずくひと

   あなたのその上を ひそやかに

   今、かなしい愛が 通りすぎる

     泣くこともせず にくみもしないで

     重い涙に 耐えながら

   沈黙のなかで あなたは

   あの人の後ろ背に 手をふるの

                                    

                    長浜・黒壁ガラス館

2  賛美歌はひくく 北国へ

   遠い旅びとへ 鐘の音はひびく

   あなたのその胸を しめやかに

   今、終わった愛が 遠ざかる

     いのちを賭けて 誓った恋なら

     石のマリアは 知っている

   沈黙のなかで あなたは

   あのひとの面影に ほほえむの

               うしろ立山

                                    

                        

                        長浜・舟板塀                


幌馬車はゆく

2012年01月07日 | 詩歌・歳時記

BSで日活映画 「幌馬車はゆく」 を、満を持して観るとともにビデオ・テープに収めた。

これで、トニー・赤木圭一郎の主演作品は網羅したのだ。

映画のロケ地が、なんと生まれ故郷の富山県なのだった。

                 

50年前の氷見の町が、映されている。そして、八尾の風の盆。 

ミツバチの箱を、幌馬車に積んで、花を求めて立山山脈を旅する養蜂一家に、

列車強盗の一味がからむという、日活お得意の西部劇まがいのアクション映画である。

トニーの魅力全快!! 可憐な笹森礼子。 幌馬車隊の隊長の芦田伸介、ギャングの親分

しぶい水島道太郎。 とどろく銃声に駆けつけたふたりの警官が、馬に乗っている。

埋没林                          

うーん、時代ですなー。 そういえば、トニーの別の映画 「男の怒りをぶちまけろ」 では、

所の警察官が、夜に堤燈を下げていた。 

私達は、そんな時代をくぐり抜けて、今に生きている。

思えば長い長い人生の、ひと波もふた波も、乗り越えてきたのですね。

                         

若くして死んだ、トニー・赤木圭一郎を愛してきました。 私より丁度10歳年上の彼を

兄のように慕って生きてきたのです。 立山の草原でほろ苦く笑う赤木さんの微笑は

富山の故郷を恋してやまない私には、「ヨッと」指先を挙げてくれたように感じました。