ヤコブへの手紙
2009年/フィンランド
シンプルなメッセージだが奥深い小品
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shinakamさん
男性
総合
85点
ストーリー
85点
キャスト
80点
演出
80点
ビジュアル
85点
音楽
85点
フィンランド映画といえば、アキ・カウリスマキ以外思い浮かばないが、クラウス・ハロはこれから目が離せない北欧の監督であろう。75分という小品だが、シンプルなメッセージなのに奥深い。
終身犯のレイラ(カリーナ・ハザード)は模範囚で12年の服役後恩赦となり釈放される。姉がいるらしいが帰るところではなさそうで、所長が勧めてくれた牧師館で住み込みの仕事をすることに。仕事とは盲目の老牧師ヤコブ(ヘイッキ・ノウシアイネン)宛ての手紙の代読と返書をすることだった。誰にも言えない悩みを手紙にしたため打ち明ける相談内容に、丁寧に聖書を引用したアドバイスをするヤコブ。信仰と向き合い隣人を愛する敬虔な牧師であるヤコブに対し、信仰を持たず希望と愛を持とうしない無愛想なレイラ。届いた手紙の何通かは汚物貯水槽へ捨ててしまうほど。2人の関係はとても長続きしそうもない。レイラは手紙を届ける郵便配達人(ユッカ・ケイノネン)ともウマが合わず、お互い疑心暗鬼に。
時代も場所も明確には分からず、ほとんどが2人の静かな言動でぐいぐい引き込んでゆくシナリオは魅力的。ヤーナ・マッコネンの原案・脚本に惚れ込んだハロ監督が脚本に参画し、心が洗われる感動ドラマに仕上がっている。ハロ監督が持つ人生感<世間から断絶して必要とされていないヒトはいない。誰の役にも立たない人間はなく存在意義は必ずある。>が大いに反映されている。
孤独なのはレイラだけではなく、ヤコブも孤独な人間だった。手紙がこなくなった途端気の毒なほど落ち込み老けこんでゆくヤコブ。初めて手紙は自分のためだったことを知り、聖書をただ引用して善意を押し売りすることの無意味さを悟る。それはレイラの頑なに閉ざされた心にも沁みいり、思わぬ行動につながってくる。信仰と希望だけでは人間の孤独は癒せない。最も大切なのは愛であるというメッセージでもある。雨の音とショパンのノクターン、ベートーベンのト長調メヌエットが白樺林に囲まれた静かな村に響き心が洗われてくる。
出演者はフィンランドでは有名な俳優のようだが、筆者には予備知識がない分役柄に溶け込んでいるように思えた。
ただ郵便配達人の言動には謎が多く、夜中に忍び込んだのは?自転車が新調されたのは?手紙が急にこなくなったのは?と観客の想像力を試すようなシークエンスが気になった。
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