晴れ、ときどき映画三昧

「馬上の二人」(61・米) 70点

・民族への偏見と拉致という悲劇を絡ませた晩年のJ・フォード作品。
 西部劇の巨匠ジョン・フォード監督晩年の作。
テキサス・タスコサの保安官・マケープを訪ねてきた旧友ゲイリー中尉は、上司の命令でグラン砦のコマンチ族の拉致救済のためにコマンチと交流のある彼を軍に雇うためだった。
酒場の女主人に好い寄られるのを逃れるため同行するが、月給80ドル以外に一人当たり500ドルの成功報酬の約束を取り付ける。
さらに途中出会った開拓者から拉致された子供と同じ年頃の少年を連れてきたら1000ドル払うという約束まで。派手な撃ち合いもなくアクションシーンも限られるが、保安官・軍隊・開拓者・コマンチ族が登場し繰り広げる人間ドラマは間違いなく西部劇である。
フォード作品では、類似作に「捜索者」(56)でジョン・ウェイン主演による弟一家がコマンチ族に殺され2人の姪を追って復讐に燃えるドラマがあった。
復讐鬼J・ウェインと違って、本作はちゃっかり者で抜け目ないジェームス・スチュアートが主演。悪徳保安官ではないが決して正義の味方ではないリアリストを<アメリカの良心>と言われる彼が演じているのが面白い。
バランスを取るためにリチャード・ウィドマーク演じるゲイリー中尉が役目に忠実な軍人役で相棒を務めている。西部で暮らした人々の民族への偏見や哀しみを鋭く突いた<白人=正義、コマンチ族=悪という概念を覆す作品>でもある。

旧知の間であるマケープとコマンチの酋長クアナは武器と引き換えに女性と少年を引き渡そうとするが、武闘派リーダー・ストーンの妻となっていた女性とコマンチ族と思いこんでいる少年は無事白人社会に溶け込むことができるだろうか?思わず日本人なら北朝鮮拉致問題と想いが重なってしまう状況設定だ。
J・フォードは、マケープとゲイリーの友情、コメディ・リリーフ役のポージー軍曹(アンディ・ディヴァイン)を登場させ雰囲気を和ませたり、ゲーリーと弟が拉致されトラウマを抱えた娘マーティ(シャーリー・ジョーンズ)、マケープと拉致された女性エレナ(リンダ・クリスタル)のラヴ・ロマンスなどを織り込んで彼ならではの手腕で重いテーマによる悲惨さが薄められている。
その分単純な勧善懲悪モノではない設定の割に中途半端な印象は否めなかった。
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