晴れ、ときどき映画三昧

「11人のカウボーイ」(71・米)70点



 ・ ジョン・ウェインが2度目のオスカーを狙った西部劇。


 頑固な老カウボーイと11人の少年たちが牛追いの旅で心を通わせて行く西部劇。原作のウィリアム・デール・ジェニングスがシナリオを担当し、「華麗なる週末」(69)のマーク・ライデルが製作・監督している。
 出演した映画150本以上のうちおよそ半分が西部劇というジョン・ウェイン。初のオスカー獲得の「勇気ある追跡」(69)には必ずしも満足していなかったという。
 そこで2度目の獲得を目指したのが本作で、従来の不死身のイメージとは違って老いた牧場主・ウィルを演じている。

 最年長で15歳の少年たちで1500頭の牛を400マイル先の町へ移動させるという不釣り合いな設定は、ゴールド・ラッシュで男たちが去ってしまい人手不足のため窮余の策。経験不足を承知で訓練しながらの旅で様々な困難に出逢うが、少年たちを甘やかさず勇気と知恵で立ち向かわせる。

 川を渡るシーンは必死の少年たちにハラハラ・ドキドキさせ、刑務所帰りの男・ワッツ(ブルース・ダーン)が執拗に追いかけて少年を脅したり、少年のひとりが落馬でなくなったり、なかなかドラマチックな展開で飽きさせない。

 唯一ウィルの話し相手になったのは黒人コック・ナイトリンガー(ロスコー・リー・ブラウン)で危なっかしい少年の盗み酒や商売女との出会いも温かくそっと見守る。苦い想い出は成長への貴重な体験として学ばせるオン・ザ・ジョブのスタイルだ。

 目的地まであと2~3日のとき、追いかけてきたワッツとウィルの対決は<想定外の展開>を迎える。
 西部魂を少年たちに託し怒濤の終盤となる。これが上手く行き過ぎリアル感に欠けたキライは否めずオスカーはノミネートすらされなかったが、興行的には大成功を収めている。

 ロバート・キャラダイン初め11人の少年たちは精一杯頑張ったが、筆者にはロスコー・リー・ブラウンの滋味溢れる演技とブルース・ダーンのネチっこい敵役の演技によって御大ジョン・ウェインを両脇から支える作品という感想となった。

 

 

 

コメント一覧

風早真希
この映画「11人のカウボーイ」は、何とあの西部劇の王者で、絶対的に強い男のジョン・ウェインが殺されてしまう映画なのです。

ジョン・ウェインが本当に亡くなった1979年より7年前、彼の映画人生での遺作となった「ラスト・シューティスト」での死より5年前の死です。

だが、遺言という意味では、この映画でジョン・ウェインが演じた老牧場主のウィリー・アンダースンこそが相応しいのかも知れません。

ゴールド・ラッシュで大人の男たちがいなくなったので、ウィリーが11人の少年をカウボーイとして雇って牛の大群を運ぶ、"キャトル・ドライブ"の旅に出ます。
そして、様々な苦労を重ねつつも、牛の輸送の旅は順調に進んでいきます。

だが、その途中で、ウィリーは卑劣な牛泥棒(ブルース・ダーン)の一味に襲われ、殺されてしまいます--------。

ウィリーは死の間際、黒人の料理人に少年たちを無事に送り届けてくれと言います。
しかし、彼の遺志に反して少年たちは、ウィリーの復讐を実行しようとするのです。

この復讐劇は、子供が大人になるための儀式とも言えるもので、それは酒を盗み飲みするといった"大人ごっこ"とは違った、大人になるための"殺るか殺られるか"の本気の世界なのです。

少年たちが、カウボーイの仕事を結構、見事にやってのけるのは、ウィリーによる修行シーンがあるのでうなずけます。

だが、拳銃の練習を全くやった事のない少年たちが、鮮やかなガンさばきを見せるのは、不自然とも言えます。

でも、そこにウィリーこと、ジョン・ウェインの願いが込められていると思えば、納得できるのです。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「外国映画 1960~79」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事