・ M・チミノ監督デビュー作は西部劇スタイルのロード・ムービー。
アメリカン・ニューシネマの終焉期を迎えた頃登場したマイケル・チミノ監督。「ダーティ・ハリー2」(73)で脚本を担当した彼が、クリント・イーストウッドを主演に据えたロード・ムービーで監督デビューした。
アメリカ中西部モンタナの小麦畑に囲まれポツンと建っている教会で、説教中の牧師が入ってきた男にいきなりモーゼル銃で襲撃される。
逃走した牧師は若者が運転するポンティアック ファイヤー・バードに乗り込み、難を逃れる。この出会いから2人に奇妙な友情が生まれる。
牧師は朝鮮戦争の英雄で、退役後銀行の大金庫から50万ドルを奪った通称サンダーボルト(C・イーストウッド)と呼ばれた中年男。仲間から金を独り占めした疑いで追われていた。
若者はライトフット(ジェフ・ブリッジス)という天涯孤独なベトナム戦争世代で、車も盗んだものだった。
2人が亡くなったボスが金を隠した小学校を訪ねると、そこは新校舎になっていた。執拗に追ってきたのは大男のレッド(ジョージ・ケネディ)と気弱なグッディ(ジェフリー・ルイス)で真相を知ってガッカリする。
モンタナの詩情溢れる風景とともに、車を乗り継ぎ旅する2人と追いかける2人の情景は、まるで西部劇を観るような趣き。何度もカーチェイスがあって飽きさせないが、むしろサンダーボルトとライトフットの緊密さが増してゆくエピソードが続く。
無口だが、頼りになるサンダーボルト。C・イーストウッドの定番だ。対するライトフットは威勢がいいが女好きで刹那的。どこか憎めない笑顔が人を惹きつける。23歳で好演したJ・ブリッジスの出世作となった。
ライトフットに<またやればいい>と明るく言われた3人は、また金庫を襲うことを決意する。そのための資金作りに4人は地道にアルバイトを始める。ここからのライト・コメディタッチの展開がなかなか面白い。
時代はこのタッチが微妙だったのかもしれない。一部の高評価を除くと大ヒット作にはならず、イーストウッドとチミノのコンビはこの1作のみとなりそれぞれの道を歩むこととなる。
最後に白いキャデラック・エルドラドが登場するまで、アメ車好きには堪らないこのロードムービーはポール・ウィリアムスの主題歌とともに終焉を迎える。
C・イーストウッドは役柄ではJ・ブリッジスに慕われるが、この後2人の競演は実現しなかった。M・チミノがライトフットに肩入れしすぎた本作は、イーストウッドには気に入らなかったのでは?と邪推するほど。
2人に加え、G・ケネディ、G・ルイスがそれぞれの持ち味をだした男のドラマは<70年代の西部劇>だった。
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