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書籍、映画、旅、最新技術から選んだ心に残るもの。速読者向けは、青文字表示。内容は小学生でも理解できる表現使用

推理は観点を変えることがヒントとなる『絶叫城殺人事件」

2021-12-20 07:49:23 | ミステリー小説から見えるもの
@この5つの短編推理小説は、ミステリー事件の捜査に犯罪社会学者と犯罪事件等の推理小説家が謎を解いていく。それぞれの観点が違い、そこからの推理はなかなか面白い。「絶叫城殺人事件」通り魔事件での証拠が少ない推察はかなり難しいが連続殺人の繋がり、想定など謎解きプロセスは面白い。
『絶叫城殺人事件』有栖川有栖
「黒鳥亭殺人事件」夫婦のいざこざで夫が妻を殺害し、夫は身投げをした事件。ところが夫の死体が庭の井戸の中で見つかった。何故夫は家に戻ってきたのか。蓄えていた金貨を取りに来たが雪で滑って井戸に落ちた。
「壺中庵殺人事件」密室殺害事件、トリックはいかにして密室から犯人は閂をかけ出たのか、いかにして殺害された死体が空中に浮いていたのか。自殺から他殺に変わった要因は何か。
「月宮殿殺人事件」ホームレスが作った3階建ての煌びやかなアート的違法な建物(ガラクタで作った)が燃やされ主が亡くなった。主は亡くなった妻が好きだったサボテンを鉢に入れて大事にしていた。放火したのは高校生。主を知るお隣は「自分たちは理由もなく辛くあたる者に殴られても文句が言えない。仕返しがしたかった」と言う。
「雪華楼殺人事件」
20代のカップルが家出をして建築中のビルに寝泊まりする。そのビルには前から一人の浮浪者がいた。事件はそのカップルの男が屋上から後頭部を殴られ地上に落ちたという殺人事件。カップルの女は出来事に対する精神異常で話ができない。
「紅雨荘殺人事件」
資産家の妻が自宅で殺害された。その人気で大きな館の別宅では3人の娘・息子が暮らしておりアリバイがある。ところが館の隣に住む元友人、他界した妻の夫と密接な交友関係があり妻とは犬猿の中と分かり、殺害事件の時間帯のアリバイが不明だとわかる。
「絶叫城殺人事件」
通り魔殺人事件、4件の事件は何も若い女性を狙った犯行。だが最後の4人目には今までに違った仕方が疑問に残り、その人間関係をあたると殺された弟の存在が浮上する。


たとえ警察官でも欲には勝てない『もう年は取れない』

2021-12-16 07:55:22 | ミステリー小説から見えるもの
連続殺人犯の目的は欲。仕事上得た情報が「大量の金塊」で自分のものになると察した時、欲が出るそれまで平凡で且つ真面目な刑事人生を送っていた人物だったのがその「欲」で業務上の情報と役柄から殺人を犯し変貌する。 人は大金が目の前に積まれると一寸先は読めない。
『幸福とは、その人間の希望と才能にかなった仕事のある状態をさす。不幸とは、働くエネルギーがありながら、無為な状態にあることをさす』ナポレオン・ボナパルト -
『もう歳は取れない』ダニエル・フリードマン
捕虜収容所でユダヤ人の友人からナチスの将校が生きているかもしれないと、臨終の床にある戦友からそう告白された、87歳の元殺人課刑事バック・シャッツ。その将校が金の延べ棒を山ほど持っていたことが知られ、周囲がそれを狙ってどんどん騒がしくなっていき…。
87歳、元殺人課名刑事がナチ収容所の友が死に際につぶやく「ナチの一人が金塊を持って逃亡した」と。その後話しはバックのみならず他にもおり、捜査するこになる。
ー一人はカジノの借金を抱えた教会の管理者、バックの友人の娘の夫がバックに相談し動き始める。ところが何者かに殺害され、さらにイスラエルの難民職員、バックの孫の恋人、同じように次々と殺害されていく。
ーバックと孫は漸く元ナチを見つけ、貸金庫に隠してあった金塊を奪った後、孫の容疑を晴らすために金塊を警官に渡す。ところがその直後、バックは誰かに狙撃され入院。その警官は金塊と容疑者を連れ去り、後日容疑者は亡くなったと証言してきた。
ーバックは入院するが一命を取り戻すが、その時の警官が現れ、全て自分が企んだ殺害で、金塊を横取りしたと告白。バックを消しにきたのだ。

身勝手な愛情を求める『悪寒』

2021-12-09 07:48:26 | ミステリー小説から見えるもの
人への憎しみ、積年の憎しみが抑えきれなく一気に爆発、事件を起こすことになるサスペンス小説だ。相談相手もなく、孤独に耐え切れなくなった時だ。一歩悪の道に出る前に立ち止まり、心を落ち着かせれば何でもないことで済むはずなのに。周りに必ず頼りになる人(家族)を据え、冷静に物事を考える時間をもつことが大切だと教えてくれる
『人は、人を愛していると思い込み、実は自分自身だけしか愛していない場合が多い』瀬戸内寂聴 -
『悪寒』伊岡瞬
「概要」妻が殺したのは、夫が勤める会社の重役だった――。大手製薬会社「誠南メディシン」に勤める藤井賢一は、会社の不祥事の責任を一方的に取らされ、東京から山形にある小規模な関連会社「東誠薬品」に飛ばされた。それから八か月ほとが経ったある夜、東京で娘・祖母と暮らす妻の倫子から、不可解なメールを受け取る。「家の中でトラブル」がありました。賢一はすぐさま倫子に電話をするが、繋がらない。その数時間後、警察から「藤井倫子を傷害致死の容疑で逮捕しました」という電話を受ける。妻が殺した相手は、賢一にとっては雲の上の存在、「誠南メディシン」の常務、南田隆司だった――。
会社組織で上司の過ちを部下が受け左遷させられ、家族が疎遠となる。この小説はさらにその妻と会社の上司との関係、妻の家族関係など複雑な「人間関係」が絡んで事件を起こすサスペンスだ。
「中年男の鈍感さは、それだけで犯罪」という文中の言葉は「家族は放っておいてもうまくいくものじゃない。全力で守りものだって」と夫の心にグサリとくる。 仕事、仕事と忙しいばかりで家族に関心を示さなかったことで家族に亀裂が生じた事も一因があった。
ー犯人像は2転3転と、展開する度に誰もが真犯人かのように疑うが実は事件に繋がるきっかけは血のつながった家族なのか、そこから広がりを見せた憎しみが殺害事件へと発展させた事だ。

狡賢い者は自ら手を出さず獲物を得る『代償』

2021-12-03 07:42:44 | ミステリー小説から見えるもの
「狡賢い犯罪者」とは正にこの達也だろうか。これだけ巧妙に犯罪の旨みを横取りしながら罪は周りの人間に巧みな口実でなすりつける。弁護士になった圭輔以上の知恵は逆に称賛したいところだ。最近の「悪」は自分の手を汚さず「獲物を得る」知恵を蓄えている。特にネット社会では人を巧みに騙し、巻き込み、おこぼれをうまく取得するのだ。気をつけたい。
『代償』伊岡瞬
平凡な家庭で育った小学生の圭輔は、ある不幸な事故をきっかけに、遠縁で同学年の達也と暮らすことに。運命は一転、過酷な思春期を送った圭輔は、長じて弁護士となるが、逮捕された達也から依頼が舞い込む。「私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。私の弁護をしていただけないでしょうか」。裁判を弄ぶ達也、巧妙に仕組まれた罠。追いつめられた圭輔は、この悪に対峙できるのか?衝撃と断罪のサスペンスミステリ。
火事で家族を亡くし、身元を引き取られた家での貧素で冷遇、悔しく、耐え難い圭輔が自分が過失だと言えたのは「自分の意見をはっきり言えない引っ込み思案、臆病者」に悔いたこと。それは遺族として貰い受ける保険金、宅地、預金など一才言われるままになったことが原因だ。

地位と名誉のための悪行・次期候補者への罠『捜査官ガラーノ』

2021-12-02 07:48:04 | ミステリー小説から見えるもの
地位と名誉を保持する為に次期候補者に罠にかけていく。昔の事件の捜査はそれらの明解を阻止するべく動き、絡んでいた。現代でも地位と名誉を保持するために他人を犠牲にする事は政治家の世界には多い、政治家vs政治家秘書のように。不正は不正をさらに隠蔽するために誰かが犠牲になった事件は多い、それには初期行動が最も大切だ。正義と悪との選択だ。
『捜査官ガラーノ』パトリシア・コーンウエル
捜査官として確かな手腕を持つウィンストン・ガラーノは、20年前の老女殺害事件を再捜査するよう命じられる。だが、彼が動き出そうとした矢先に、脅迫と不吉な予言が来る。
ー20年前の老女殺害事件は強盗の仕業だと処理された。当時はDNAの検査がなく真犯人を特定できず未解決のままだった。
ーウインは次期州知事候補の女性地区検事に再捜査をするように依頼された、それは地位と名誉を勝ち取るために動き出すと、それを察知していたか、予期せぬ予告電話とともに不気味な伝言が伝えられる。
ー老女殺害事件を再捜査する資料そのものが紛失しており、元の担当刑事(既に死亡)は独り占めにしていたことによる隠匿、他の殺害事件への疑いも発覚し始め混乱する。
捜査の裏で科学捜査研究所所長、現知事等が関係していたことを知る


恨みを持たれた人間は単純で他人を想う心が無い『夜姫』

2021-11-22 07:55:50 | ミステリー小説から見えるもの
人の恨み、特に執念を持った人間は恐ろしい。目的以外に何も見えなくなることが周りを恐怖に落ち込ませる。案外恨みを持たれる人間は常日頃、性格的、習慣的に気にしていないことで、余計に相手に潜む深い感情は読めないかも知れない。
『嫌な思いをすると、やり返したくなるもの。優しさで帳消しにすれば、自分が気持ちいい』美輪明宏 -
『夜姫』新堂冬樹
キャバクラのキャストとして、日本人離れした外見と政治経済から下ネタまであらゆる話題を盛り上げるトーク力で男星矢を虜にし、年数億の売上を生む花蘭。新宿・歌舞伎町の絶対女王だが、アパレルで働く乃愛にとっては、最愛の妹を失う原因を作った憎き女だ。復讐のため、乃愛は昼の仕事を捨て、虚と実、嫉妬と憎悪が絡み合う夜の世界に飛び込むが……。
女の執念のサスペンス小説。乃愛の妹をゲームのように使い捨て、自殺までさせたキャバクラ#1の男星矢、その恋人の女花蘭、キャバクラトップキャストに対し素人の姉が妹の恨みを晴らす
ー姉は素人ながらその持ち味を出し歌舞伎町のキャバクラにフルタイムで勤め出した。その目的は妹への復讐と星矢と女花蘭に言われた憎悪の言葉に執念を燃やす。
ー姉はお店で#1を獲得するとオーナーが全5店舗で#1(夜姫杯)を取れば現在のキャバクラキャスタ#1(花蘭)を歌舞伎町から追い出すと約束。但し、1年間#1をこの店で取り続け、全店舗での夜姫杯を手にすることを条件とした。
ー姉は#1を続け、いよいよ夜姫杯の決戦になると、最後に仕掛けに出た。それはあのキャバクラ#1の男星矢と女花蘭を刑務所送りにすることに賭けた。
ーキャバクラで売り上げを上げるための仕法
    幼さと素直さを全面に良心を忘れず、お客に感謝をする事
    どんなタイプのお客も満足させられる話術、魅力を持っていること

騙し続けた結果「慣れ」で罪を感じなくさせる不幸な人生『老たる詐欺師』

2021-11-05 07:47:16 | ミステリー小説から見えるもの
「生き残るために嘘をつき他人に罪をなすり付ける」そのきっかけは戦時中、14歳の時から始まり、生涯「嘘と詐欺」の繰り返し続けた老紳士ロイ。自分を騙し他人を騙し続け罪の意識が無くなったことがとても悲しく映り、人間「慣れ」というものが、如何に人間を狂わせ、行動をさせるのかと恐怖を感じた
#138老たる詐欺師
ニコラス・サール2021年10月
「概要」インターネットを通じて知り合った老紳士のロイと未亡人のベティ。お互い高齢の彼らは親睦を深め、共同生活を送ることになる。だがそれはロイによる策略だった。彼はこれまで数々の人間を騙し、陥れてきたベテランの詐欺師だったのである。ロイは悠々とした老後を過ごすべく、ベティの資産を奪い取ろうと着々と計画を進めていくが……。冷酷な犯罪と並行して明らかになっていくロイ自身の秘められた過去。嘘と偽りに満ちたその生涯の奥底にあるものとは
ー1938年、14歳のロイ、本名ハンスはドイツにある資産家の一家を妬み、その4人娘の一人が好きだったがその家族から除け者扱いされた。そしてハンスはナチスに一家は反政治的活動をしているユダヤ人だと告発一家は捉えられ父親は処刑、母親含め2人の姉たちも収容所ホロコーストで殺害された。唯一2人の娘は処刑寸前に終戦で生き残り、エリザベス(リリ)は英国の大学教員の夫婦に引き取られ養育された。
ーエリザベスは大学の教鞭後、自分の家族の追跡と誰が家族を告発したのかを調査するとこに専念した。するとハンスという男が浮上し、ハンスにその罪を認めさせるために仕掛けをつくった。
ードイツを離れイギリスに逃れ住み込んだハンスは名前を色々変え、最後にロイと名乗った。それは14歳から今まで自分の糧を得るために多くの嘘をつき仲間を、女性を裏切り騙し続け、その度に資産を手に入れるという詐欺行為を数十年繰り返していた
ーエリザベス(ベティー)はロイとの出会いのきっかけを仕組み、あたかもベティーの資産をロイに詐欺出来る様に仕組んだ。年老いたロイは短気で物忘れもひどく、挙げ句の果てに病気がちだったが、最後の最後まで詐欺師として計画実行した。だが最後にそれはベティーの仕返しと解った。ロイは生涯、人を騙すという行動がやりがいであり、ベティーからの仕返しは後悔もなかったが、死ぬ直前まで嘘をついたことで病床でうなされ続け亡くなる
ー文中で見つけた言葉
「気をつけろ、人生はリハーサルじゃないんだ。欲しいものがあるのなら、体当たりで手に入れろ」
あなたが非常に不幸な人だという事です。惨めな老いぼれだという事ですよ。間違いなく」

罪を犯すのは「欲の選択」『暗殺のジャムセッション』

2021-10-21 07:42:50 | ミステリー小説から見えるもの
人の信用・信頼は付き合った年月ではなく、金次第、というのがこの世界の慣わしだ。目の前に大金が積まれれば誰もが多い方に賛同したがる。人の浮気心は見た目以上に軽い。現実、誰もが「欲」が絡む選択の間違いから罪を犯すのだ。
『人間の最大の罪は不機嫌である』ゲーテ -
『暗殺のジャムセッション』ロス・トーマス
「概要」ドイツ冷戦後、マッコークルは、連れ帰った恋人フレドルと結婚し店をを再開。そこに突然、かつての相棒パディロが転げこんできた。元共同経営者にして腕利きスパイ兼殺し屋のパディロは、潜伏先の西アフリカから脱出してきた。某国の首相暗殺を依頼され、それを断わったことからトラブルになったという。だが暗殺の依頼者たちは、何としてもパディロに暗殺を実行させるべく、卑劣な手段に訴えてきた……
首相の暗殺は実は首相自らが計画し、2人の大臣に命令、だが、失敗するようにと指示していた。そのことで名誉と知名度を上げる目的だった。だが、首相自身はガンで数か月の余命だった。
ーパディロが暗殺を断ると、マッコークルの妻を人質に首相の計画を実行させようとする。パディロはその妻を助け出すことを第一に仲間を集め計画を立てる。だがその仲間らは金でどうにでもなるならず者だったことが後で窮地に追い込まれる。
ー人質の救出と首相の暗殺未遂を同時に、計画は進んだ


人の異常な欲望から全て始まり事件が起こる『13・67』

2021-10-16 08:01:01 | ミステリー小説から見えるもの
@警官の捜査、調査における様々な行動はそれぞれの感性かもしれない。適材適所という言葉もあるがやはり綿密な操作には一般の人以上のセンサー(特技)がなくては務まらない。6つの短編犯罪ミステリー小説はストーリー性も、警察官の解くための流れも素晴らしく、どの小説も犯行現場の描写は素晴らしい。犯罪の根源はいずれも「金・権力・地位・名誉」など人の欲、貪欲さから全て始まっていることで、「人間の欲望」は収まるところを知らないのは残念だ。それだけ人間は愚かなのか・・・
『13・67』陳浩基
「概要」華文(中国語)ミステリー傑作。現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)をたどる本格ミステリー。雨傘革命(14年)を経た今、67年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分。 6つの短編小説
1.黑與白之間的真實 (黒と白のあいだの真実)
上司(犯人を知る)の病床を犯人の餌食に仕掛けを作る。母親違いの子への執念、親の相続権への執念、決して親子の関係は裏切れない。金と権力に欲が出た親近者たちの殺戮。
2.囚徒道義 (任侠のジレンマ)
二つの巨塔のマフィアを如何に挑発し、摘発、潰していくか。囮捜査の騙しは身内から事件を偽装させる。「囚人ジレンマ」敵同士のいがみ合い告発は刑期を軽くすることで自白する。
3.最長的一日 The Longest Day (クワンのいちばん長い日)
マフィアの知能犯が病棟から脱走、同時に起こった硫酸爆弾事件に混同した警察は人手不足で定年するクワンも偵察・調査に乗り出す。脱走した受刑犯は多くの内通者を利用し、病院で他人になりすまし療養していた。両方の事件はいずれもつながりがあり囮脱走を図るための悪知恵だった。
4.泰美斯的天秤 The Balance of Themis (テミスの天秤)
マフィアの主犯者の一人を包囲し、突入した。主犯者等は皆殺害されたがそこにいた多くの人質も犯人によって殺害された。事件後調査すると皮膚技なメモが見つかり警察内に内通者がいた事が発覚、疑わし警官を免職にした。ところがメモ等から分かったことは突入の前に如何にしてメモを主犯者に渡し、本部の命令を無視して突入したのか。実はその前に若い女性が警官によって殺害されていた。
5.Borrowed Place (借りた場所に)
警察内部調査をするイギリス人の家族に息子を誘拐したという電話があり、クワンが秘密裏に動き出す。ところが途中からその誘拐犯の行動に不信と思われる異常行動があると感じ誘拐犯を追跡した。だが誘拐は失敗し家に戻ると息子とを介護人が夕方に何事もなく戻ってくる。クワンはこれはこれは偽装犯罪で目的は内部調査書を盗み出すことだったと判る。その内部調査書とは警官の身元調査で特に賄賂・贈与を受けた警官等のリストだった。
6.Borrowed Time (借りた時間に)
香港の中国返還前、イギリス人、香港警察vs労働者(中国支援)が勃発。内乱を勃発させ社会を複雑化させる囮の爆破事件を起こす。それをいち早く察知した若き警察はそのアジトと共犯者を操作する。爆破はイギリスからの貴賓者を狙いイギリスの統治下の不備を拡散させる目的だった。


権力者には罪に問われない法の限界がある『死亡通知・暗黒者』

2021-10-12 07:39:31 | ミステリー小説から見えるもの
@様々な「死亡通知」(殺害予告)を執行していく犯罪者の巧みな仕掛け、IT・メカにも相当な知識を持った知能犯、証拠が残らない意外性を持たせた企みは凄い。犯罪者の痕跡を完璧に消し、姿を変え、関係者を事件に絡ませ、メカ機器を応用し、警察を如何に欺くか推理は果てしない。読んでいても次の仕掛けはどんな展開になるのか一気に読まないではいられない現代でも、悪事を重ね権力者はいつか裁かれると期待したい
『死亡通知暗黒者』周浩暉
「概要」中国、省都A市でひとりのベテラン刑事が命を落とし、復讐の女神の名を冠す謎の人物〈エウメニデス〉による処刑の序曲は奏でられた。インターネットで死すべき人物の名を募り、遊戯のごとく予告殺人を繰り返す〈エウメニデス〉から挑戦を受けた刑事の羅飛(ルオ・フェイ)は、省都警察に結成された専従班とともに、さらなる犯行を食い止めるべく奔走する。それは羅飛自身の過去――18年前の警察学校生爆殺事件の底知れぬ暗黒と相対することでもあった。
「死亡通知」を受け取った人物、元は悪事を施したが見逃された者、免罪された者などと同時に警察にその通知が知らされた。その後その通知通りの殺害が執行されていく。それを阻止、犯人を見つけて行こうと刑事が動き始める。
「死刑執行」されるものの対象は「法律は世界を浄化する道具だ。しかし法の働きには限界がある。悪事を行っておきながら、その悪事が法の管轄を外れている者、または悪事を行いながら、有罪にできるだけの証拠を法の側が見つけられない者」とした。それは警察・警官の不甲斐な捜査を批判した事でもあった。
ー警察学校での仲間同士のゲームが発端で18年前の爆破事件から繋がり、その前の麻薬事件がその発端を作った。それは警察組織の上層部が情報屋と企んだ大規模な犯罪グループの摘発だったが、その影に警察の上層部が情報屋とその大麻と現金を横取りした。
ー横取りした警察の秘書がその話を知り、殺害される。すると秘書の恋人の警察学校の刑事が仕返しをしていく「死刑執行」者「Eumenides」(ギリシャ神話の復讐の女神)として動き始める。


婚約者のために罪を負う『フレンチ軽視最初の事件』

2021-09-29 07:59:51 | ミステリー小説から見えるもの
一人の男が酒に酔ったギャンブルで大損、その金を返すために恋人を抱き込み様々な罪を犯していく。恋する人のためならと罪を負う姿は頷ける、だが嫉妬から裏切られたと思うことで人間の欲と恋心は一変する。その屋敷で「自殺」事件が起こり「殺人」事件へと展開する。更に本当に元恋人が犯人なのか、最後まで犯人像が変わっていく様は、一気に読み終えたくなる。
フレンチ軽視の言葉「決して望みを捨てず、どんなに不利な状況でもいつかは好転すると信じること」が印象的だ。
『フレンチ警視最初の事件』F.W.クロフツ
恋人の言うがまま詐欺を働いたダルシー。彼氏は貴族の秘書に納まって足抜けしたが、当の貴族が突如自殺。これは偶然か? 警視に昇進したフレンチが登板するや事件は一転……。
富豪貴族の老人が自殺をした。リュウマチで下半身が不自由となり車椅子の生活で気弱化していた。自殺は本人の拳銃で屋敷の森の一角で周りには誰一人姿を見たものはなく警察も裁判所も「自殺」と断定した。
ーところが1年前に屋敷に雇用されたハンサムで優秀な男が殺害したのではないかと、昔の婚約者が弁護士を通じて調査を願い出る。実はその婚約者相手はハンサムな男で、屋敷にいる相続人の一人娘と懇意になり結婚するのではと嫉妬していた。
ー一旦「自殺」だと断定された案件を警察が再調査することへの時間は単なる無駄だと思われたが、事件を功名な仕掛けで金を手に入れようとしていた犯人の企みだった。

伝説をミステリーの犯行に利用する『裏切りの塔』

2021-09-26 07:48:48 | ミステリー小説から見えるもの
著者の豊富な知識(現地と歴史)は読者の想像を超える様々な場面とその背景、登場人物を混乱させる、特にこの「裏切りの塔」。「高慢の樹」でも御伽の国の話(伝説)と現場との違いを混乱させ、犯人が最後まで特定できない。巻末での謎解きでなるほどと思わせる術もあるミステリー小説だ。
『裏切りの塔』G・K・チェスタトン
人を食う樹として怖れられる三股(みつまた)の怪樹。この樹に登る賭けをした大地主の失踪事件から始まる怪異の連続を綴る傑作中編「高慢の樹」、名探偵としての才に恵まれたスティーヴン神父が不可能犯罪に挑む表題作、夢見がちな姪を案じた公爵が取った奇策が思わぬ騒動へと発展する。
「高慢の樹」
    村に森の上に突き出ている「孔雀の樹」があり、不気味で恐怖心を煽る伝説と住民に不安をもたらせていた。その地主は人を騙すのが好きで「人喰いの樹」とか「毒を持った病魔」を振りかざす樹とか言われたことを覆すために芝居をする。ところが実際にその樹からは毒素が出ており病気がちな人に移すことが判明すると言う事実も作ってしまった。
「煙の庭」
瓶の中にあったのは麻薬。中毒症となった詩人の妻が、麻薬を是が非と入手しようと口論の末、摂取した。そのことが一旦麻薬摂取が自滅を招いたということがなくなった原因とされた。ところが庭の薔薇に噴霧器で毒を振り撒いたことで妻は殺された、ことが証明される。
「剣の五」
トランプでイカサマをやったことでフランス式剣で決闘、若者が殺されたとされた。が、実は相手は全くの剣の持ち方も解らない輩だと分かると、周りにいた合併で富を築いていた数人が反対した若者を殺害したことが分かった。アリバイ作りにフランス式剣の決闘で反対者を揉み消そうをしたのだ。
「裏切りの塔」
1度読んだだけではこの短編小説は理解できない、想像力が著者に追いつけない、空想もできない次元だ。

犯罪アリバイの「完璧」は無い、ミスは何処かに『パンチとジュディ』

2021-09-10 07:42:42 | ミステリー小説から見えるもの
「金」にまつわるミステリー事件では、往々にして捜査する側の内部組織が疑われるがその一つだ。いくつかの証拠に、アリバイ等を用意するのはお手の物、だがやはりミスはどこかで発見され疑問を持たれ、解決に向かう。この小説のミスは偽金で挟んだ本物紙幣束を見抜いたこと、複雑化させる人物・証拠・アリバイなど人柄からの陽動心理作戦だ。
『パンチとジュディ』カーター・ディクソン
「概要」結婚式前日、かつての職場、英国情報部の上司であるH・M卿に呼び出されたケンは、元ドイツ・スパイの老人の屋敷に潜入を命じられた。その老人が国際指名手配中の怪人物Lの正体を明かすと情報部に接触してきたので、真贋を確かめろというのだ。だが、屋敷でケンが目にしたのは老人の死体。事態の急変にめげず、ケンは任務を遂行し、式を挙げることができるのか。奇想天外な大犯罪を暴くH・M卿の名推理。
ーケンの屋敷侵入は何やらゲームをしているかのような展開で、ケンに対する嫌がらせ行為の感のする指令で、その後の変装も、逃亡するも既に筋書き等りに生かされているかのように感じた。ところが実際2つの殺害現場を目撃した容疑者になる。スパイとしての極秘情報を誰にどのように伝えればいいのか、指令したH・M卿及び警察部長・大佐に疑いを持つ。
ミステリーは昔の偽札殺害事件と国家間の情報漏洩事件、さらに殺害された情報提供者らの関係が入り混じった複雑な展開になる。
ー「パンチとジュディ」は英国の人形劇でパンチとジュディの喧嘩で最後に警官も殴りつけてしまい、最後に残るのは道化師だという


如何にすり替えられたのかその秘密『誰の死体』

2021-09-07 07:51:03 | ミステリー小説から見えるもの
推理小説の読み応えは犯人が何故、どのように事件を起こし、如何に証拠を隠し、何を得たのかに尽きる。探偵・捜査側では残されたわずかな証拠、裏付けるアリバイ捜査など如何に捜査を広げ展開するのか、そして誰が犯人なのか最後まで興味をそそる。犯罪は得手して些細な事が原因で起こる場合もあるが、恋愛の復讐は稀なケースかもしれないが、恨み辛みは執念として残ると恐ろしい
『誰の死体』ドロシー・セイヤーズ
「概要」実直な建築家が住むフラットの浴室に、ある朝見知らぬ男の死体が出現した。場所柄、男は素っ裸で、身につけているものは金縁の鼻眼鏡のみ。一体これは誰の死体なのか? 卓抜した謎の魅力とウイットに富む会話、そしてこの一作が初登場となる貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿。
ー資産家で貴族のピーター・ウイムジー卿が探偵役となって元軍隊の部下バンター従僕と動く。それは2つの事件、1つは友人の家に全裸の他殺体、容疑者としてその友人が逮捕。もう一つは金融界の名士が失踪するという、いずれも距離のある場所で発生した事件となった。
ー解決の糸口は全裸の他殺体の身元が失踪した人物を極似していたことでその日に一人の女の目撃者がいたこと、失踪した金融界の名士との関係にある精神医であり解剖士が過去恋愛関係で揉めいた事、更に名士の絡んだ株が大幅に変化した事だった。
実は二人の他殺はすり替えられており一人は救貧院からの名士に似た格好の浮浪者が全裸の他殺体となり、もう一人は既に見分けがつかないように顔等に解剖のメスが入り墓地に埋められていた。
殺害原因は過去恋愛の復讐、それに富裕層から罵られた過去から計画的犯行を狙っていたことが、2つの事件が実は一人の犯人が犯した事に繋がる。以外や犯行は捜査する側の内部にあり、この小説は身元確認の解剖士が金目となっている。ではその背景に何があったのか。


愛する、愛されるの差を知ること『情事の終わり』

2021-09-03 07:45:00 | ミステリー小説から見えるもの
結婚、離婚で愛情に苦労した母の生き方を学んだ、サラの生きがいを求めた行動だったかもしれない。それは人を愛することと愛されることがどれくらいの違いなのかを知ること。夫との情の差を埋めるには自分の寂しさを誰かと共有して満足させたいと探し続けた、のかもしれない。
人は侘しさを何処で満足させるのか。理想の愛の姿が見えない事に苛立ちが見え、誰かといる事でその隙間を埋めようとするのは自然かもしれない。究極の満足を探し求めることは決して現世では得られないということだ。
『情事の終わり』グレアム・グリーン
「概要」三角関係、理想と現実の愛する、愛されるは何が違うのか。人妻サラとの道ならぬ恋から1年半。なぜサラは去っていったのか――捨てきれぬ情と憎しみとの狭間で煩悶する作家ベンドリックスは、その雨の夜、サラの夫ヘンリーと邂逅する。妻の行動を疑い、悩む夫を言葉巧みに説得した作家は、自らの妬心を隠し、サラを探偵に監視させることに成功するが……。夫とのすれ違いが妙な結果を生み出す、それはサラの日記、サラが教会に頻度よく通い始め、そして長く続いた病気で自分の死を覚悟、遂に三角関係の終焉となる。