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ちょっと気になるいい事、言葉、最新技術

書籍、映画、旅、最新技術から選んだ心に残るもの。速読者向けは、青文字表示。内容は小学生でも理解できる表現使用

蜘蛛の巣の習性に無知な警察『透明人間の納屋』

2022-02-25 07:47:17 | ミステリー小説から見えるもの
「透明人間の存在」を作り上げた工作員の技は小さな窓からでも自由に出入りでき、そこにあった「蜘蛛の巣」は証拠を隠滅するに十分だった。蜘蛛の巣は「1時間もあれば1年も前からそこにあるような厚いものになる」という事実を警察は見逃していた。蜘蛛の巣の習性を知る、知らないでこの事件は大きく動いたのだ。最近の知能犯は想像以上の仕掛けと技を持っている。それらの情報網はやはりネットなのか。
『透明人間の納屋』
島田荘司2022年1月
「概要」昭和52年夏、密室状態のホテルの部屋から一人の女性が消え失せ、海岸で死体となって発見された。孤独な少年・ヨウイチの隣人で、女性の知人でもあった男は「透明人間は存在する」と囁き、納屋にある機械で透明人間になる薬を作っていると告白する。混乱するヨウイチ。心優しき隣人は犯人なのか? やがて男は外国へ旅立ち、26年後、一通の手紙がヨウイチのもとへ届いた。そこには驚愕の真相が記されていた!
ー密室から一人の女性が消え、数日後に他殺体で隣の街の海から発見された。「消えた女性」として事件当日一緒に部屋にいた男が疑われたが、その後なんの証拠もなく裸で腐乱状態で発見されたのがその「消えた女性」だと検証される。
ー田舎で印刷屋を始めた男が母子家庭の少年にとても気前よく、気配りをしていたが、ある日その男の妹が来て喧嘩を見た。それは男が母子家庭の母親が好きになったことで嫉妬し、喧嘩となったことを知る。
ーある日母子家庭の男の子、ヨウイチがある機械を見つけて触ると怒られた。その機械は「透明人間の薬を作る機械だ」と説明を受けて驚愕、もしやあの事件はこの薬を用いたのかと疑問を呈する。が、実は3人の工作員のもう一人の男が嫉妬して仲間を殺してしまったのだ。
ー印刷屋の男は母とヨウイチに何も不住な生活がない外国へ行かないかと誘うが断った。それは26年後、一枚の手紙で解ったが、印刷屋の男と女は元北朝鮮の工作員で偽札作りの機械で日本を混乱させる計画予定だったが、女が殺されたことで息詰まり男は帰国したということだった。そして男は失敗した罪で犯罪者扱いとなり、衰弱、もうこの世にはいないと知らせを受けた


守るのは偽りのない組織と正義感だけか『ラスト・コード』

2022-02-18 07:42:36 | ミステリー小説から見えるもの
刑事と公安、それに各省庁、特に外務などが絡むと日本の警察機能はむやむやになるのは日本の特徴だ。外向けの顔(外交の良好関係)を保持したいばかりに見ぬふりをし、自己地位保持に必死になるからだ。縦割り、横割り社会の不備は至る所で噴出するが、正義感を持って、断固たる姿勢で素早く、強く、一歩前に出れる組織が日本にも是非欲しい。 
印象的な台詞「守る人がいる限り、俺は警官をやめない・・・・」
『ラスト・コード』堂場瞬一
「概要」豪奢な一軒家で、執拗に切りつけられた惨殺体が見つかった。渋谷中央署の刑事・筒井は、被害者の娘・美咲と署へ向かう道中、何者かに襲われる。だが、警察上層部から圧力がかかり、襲撃事件は揉み消されてしまう。孤立無援となった筒井は、探偵の小野寺冴とともに調査を始める。警察内部の「事情」、襲撃者の目的は――ノンストップ・アクション・ミステリー。
警察官、刑事と公安とはいつも対立する。そこに政治家の大物が事件に絡むと双方の立場が変わってくる。その場面に遭遇した筒井刑事は殺された父親の娘を保護するが、14歳ながら秀才で、大人顔負けの言動に出る。父が殺害されても悲しい思いは見せず、何が父を殺害させたのか筒井刑事、元刑事で私立探偵冴ともに探り出していく。
ー殺される前に父が娘に言った「コード」とは、機密書類ファイルの暗証で襲撃した外国人は薬品会社の回し者でその仲介をしていたのが代議士だったのだ。 代議士が関わる事件では外務省など所轄の権力者が地位を揺さぶられないように操作していた
ー結局、下っ端刑事のできることは娘を保護し、父親を殺した殺人犯を捉えるまでに、終えた。


内部告発を防ぐための悪知恵『編集者を殺せ』

2022-02-16 07:40:21 | ミステリー小説から見えるもの
職場の地位を守るため、証拠を持っていると疑われた人物を次々に殺害した犯人。最後に真犯人は容疑を逃れようと仲間を犠牲にしたが、・・・僅かな証拠を次ぎ次ぎと暴いて真犯人を見つけ出す探偵ミステリー小説だ。たった一枚の残された手紙から真犯人を探し出したのだ。犯罪者の心理、それは証拠隠滅の為に周りも巻き込み事件を複雑化させることだったのだ。現代、内部告発は多発している。それは一辺倒ではいかない社会ルールをぶち破ることから始まっており、一部の役員の行為が「成功の為・地位保守する為」に曲げるからである
『編集者を殺せ』レックス・スタウト
「概要」探偵ネロ・ウルフを、事故死した娘は実は殺されたのではないかと考える父親が訪ねてきた。娘は出版社に勤める編集者で、亡くなった晩は原稿の採用を断わったアーチャーなる作家と会う約束をしていたという。ウルフはこのアーチャーという名前に聞き覚えがあった。先日、弁護士事務所で起きた殺人事件にも同じ名が登場したのだ。ウルフに命じられて二つの事件を調べるアーチーの目前でさらなる殺人が!
ー弁護士事務所で働く一人が個人的に小説を書いていた。その内容は事務所内で起きた陪審長の買収と仕事の人間関係だった。そのことで3件の殺害事件となった。一人はこの小説を売り出したいと思っていた事務員、それを一度読んだ編集者、その小説をタイピングした秘書である。
ー事件の要は、この小説内容が当弁護士事務所で起きた内部事情の詳細で、公になる事を恐れた経営者の心理っだった。共同経営者は会社を守り、自分達の名誉を守る為に殺害に及んだ。
ーミステリーは一旦一人の共同経営者の拳銃による自殺として処理しようとしたが、探偵ウルフがその自殺劇はカモフラージュさせるための証拠であることを暴いたことで、新たな真犯人探しへの捜査が広がった。 やがて意外な人物が証拠隠滅等殺害容疑で逮捕される。


政治家を監視、精査する組織が日本でも必須『警視庁情報室』

2022-02-14 07:44:46 | ミステリー小説から見えるもの
@前半は警察組織の説明とエリートと言われる警視庁の出世コースへの手引き書内容だ。事件は国の中枢を揺るがす大規模となり、内閣・国務大臣には極秘に捜査、摘発に動く。やはり政治家の賄賂は官僚への文章改竄など権力を持った人物への事件捜査はこういった独立した組織が動くべきで、できれば別途、最終的に「政治家諮問員会」(政治家を国民が監視、精査する体制組織)がほしいところだ。日本の政治家への処置は全て「むやむや」なのは許せない。
『警視庁情報官』濱嘉之
「概要」警視庁情報室。それは警視庁が秘密裏に組織した情報部門のプロ集団である。情報室へ舞い込んだ1通の怪文書。エース情報官・黒田は、抜群の情報収集力と分析力で、政・官・財界そして世界的な宗教団体までもが絡む一大犯罪の疑惑を嗅ぎつけるが……。公安出身の著者による迫真の「インテリジェンス」小説。
警察庁には海外と比較しても、特に大国の米国のCIA、英国のMI-6、ロシアのKGBなど秘密工作をはじめとした国内の要の情報をまとめる部署が無いことで国内にも優秀な人材を集め新たに設立も目論み動き出す。「警視庁情報官」の養成と機密情報の収集・保守を目的とした「警視庁情報室」。それは警視総監をトップに公安を含むエリートをかき集め国を揺らがす事件事故に対応する組織だった。
ーやがて大手有力電力企業と官僚、政治家、企業の下請け(ヤクザ絡みの)が原子力発電所建設での調査が開始され、その事実が国を揺るがす組織まで及ぶことが分かる。それは認可事務局である国土交通省、経済産業省がターゲットになり情報収集が活発になる。 やがて「怪文書」が出回り、さらに北朝鮮の麻薬ルートと下請けしたヤクザ絡みの企業(土地買収工作)が浮き上がる。それは現大臣とのつながりから多額の利益を吸収する組織(宗教団体)につながっていたことが明らかとなる。
ー「警視庁情報室」は極秘に証拠を探り遂に二百人を動員した捜査を開始。国務大臣には極秘に検事総長と警視庁が権限を持って動くことになる


看取り、看取られる人の想いとは『遮光』

2022-02-03 07:36:29 | ミステリー小説から見えるもの
人の「死」を理解する、ましてや愛し愛された人の場合は非常に辛い。それを乗り越えるために人は何をして、何を忘れたいと思うだろうか。人にはそれぞれの苦しみや悩みがあり、往々にして「時」が解決していくと言うが・・・「死」に対する理解、納得だけは違うような気がする。
人はいつか「死」を迎える、看取り、看取られる立場に変わる時、人間の儚さを知る・・のか。
『遮光』中村文則
「概要」恋人の美紀の事故死を周囲に隠しながら、彼女は今でも生きていると、その幸福を語り続ける男。彼の手元には、黒いビニールに包まれた謎の瓶があった──。それは純愛か、狂気か。喪失感と行き場のない怒りに覆われた青春を、悲しみに抵抗する「虚言癖」の青年
幼少の時に両親を亡くし、「人の死」と言うものに対して「周りを喜こばせる」を抱え生きてきた青年が、一人の女性美紀と偶然会う。意気投合し、愛し合う。今までにない人生をこれから新たに歩もうと言う矢先、その女性美紀は交通事故で亡くなる。これからという夢を互いに描きながら信頼しあい、愛し合っていたことで、目の前に幻想が現れるようになる。
ー離れ難い女性美紀の遺体を見たときに咄嗟に「カタミ」として裁縫された指を持ち帰り、「瓶」に入れ、いつでも一緒にいることで自分の心を落ち着かせ死と言うものを納得させたいと願っていた。仲間にも女性美紀は渡米し勉強しているという幻想を語り始め、自分自身への夢を叶えようと努力した。
ーだが、その幻想と錯覚が現実と合わなくなり、もう一人の女性の愛人が罵倒、暴力を振るったことで、幻想が現れ自分の女性美紀と勘違い、喪失感からその愛人を殺害してしまう。


大人が作り出す子への悪環境『ヒトリシズカ』

2022-01-29 07:55:49 | ミステリー小説から見えるもの
未成年の犯罪、警察官も見逃す犯人像が増えている。未成年だから犯罪は、嘘は付かないという思い込みが事件を複雑化させ、冤罪となる。この小説でも子供なりの犯行動機があるということだ。結局、大人(親)が作った犯罪のキッカケが子供の心に悪影響(生活環境)を残すという事。大人は子供の前での暴言、暴力行為はできる限り慎むべきだろうが、TV・SNSなど外からの悪益情報はもはや止めれないのが現状だ。それと中学生女子でも化粧を施すことで一人前の大人になりきる事ができ、生活保護無しに生き抜くことが可能な世の中、それを思うだけで寂しく、侘しく、恐ろしい
『ヒトリシズカ』誉田哲也
見えそうで見えない。手が届きそうで届かない。時と場所、いずれも違うところで起きる五つの殺人事件。その背後につらつく女の影。追う警察の手をすり抜ける女は幻なのか。いまもっとも旬な著者の連作ミステリー。
「闇一重」上司の娘を現場で目撃、報告書には記載しなかったことで後々仕事上の問題になる
殺された体内の弾丸に疑問が浮かぶ、それは心臓に何かで弾丸を推し進めたことを発見する。
「蛍蜘蛛」一目惚れしたバイトの女性を疑うことなく黙秘したことで上司からの忠告を受ける
「腐屍蝶」自殺と他殺、上司の娘が行方不明になってから数ヵ月後遺体が山林で発見されるが狂気が見つからず学生服の証拠しかなかった。ところが虫歯の有無でその娘ではない事がわかる。 
「罪時雨」長年同棲したが暴力を振るわれ別れたいと思ったが、男の方が離れたがなく付き纏うようになった。部屋の鍵を変えたことで怒りが爆発、ドアの前でイザコザが起きるとその男が瀕死の重傷を負っていた。イザコザを知っていた部屋の中にいた娘がとった行動。それは犯人を庇う行動だった。
「死舞盃」ヤクザの武力抗争で五人が殺され三人が重症となる事件が発生。その殺された親の9歳の子供と拳銃1丁が発見できなかった。 子供が大人に変身し、敵となる男と結託、親を見限った。
「独静加」17年前に消息が分からなくなった元警視の娘(養女)が一連の事件の発端だった。唯一同じヤクザの父親で生まれた妹を愛し、その孫を最後に交通事故で庇う事で人生を全うしてしまう。


コンプレックスへの執念『殺人鬼フジコの衝動』

2022-01-22 07:36:07 | ミステリー小説から見えるもの
生活環境で人は苦労もするが、コンプレックスも生まれる。人が成長することはそのコンプレックスをなんとかしたいと「欲」が出る、しかし「貪欲」になると人は全く違った人物に様変わりする。家族を愛し、深い絆を保つには「子の教育」特に家での教育は子供ながらに何かを心の中で作ってしまう。「人を思う人」に育って欲しいものだ。
『殺人鬼フジコの衝動』真梨幸子
「概要」一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生はいつしか狂い始めた。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか? あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。
「母親に似ている」を嫌い、自分の容姿を嫌い、家族を嫌う。そこには貧相な家の暮らしから生まれた僻みと欲が成長と共に変化していく。 母親のだらしない生活を嫌いながらも「秩序」(強いものに任せる)を守ると言いながら、いつしか成長した自分を省みるとその「母親に似ている」と言われた事を思い出す。その度により良い、幸せな生活を渇望していく。ところがその「欲」が「バレなければ」と人を絞殺し、それに慣れるかのようになってしまった
女は醜いより美しいことが幸せになると信じ、その欲望のために家族を放棄して美容整形に走る。すると言いなりの男が近寄り貢ぐようになる。贅沢三昧な生活をするようになると昔の母に似た生活を思い出した。昔幼かった頃のコンプレックスが湧き上がると、またしても「欲」を達せする為に繰り返し人を絞殺することに。そして「寂しい人だった」母を思った。



心地よい時間は長続きしないが人生『9月が永遠に続けば』

2022-01-20 07:53:12 | ミステリー小説から見えるもの
1人組の夫婦の離婚(原因は長男の不祥事から事故死)から周りの人・家族への愛と嫉妬が複雑に絡み合うミステリー小説だ。離婚で孤独感を味合うことは逆に誰かに恋して愛することで克服したいと思っているのか。人を思うことは決して悪くはないが家族が絡む人をその対象にするのは道徳違反になる。孤独は決して悪いことではない、ただその楽しみを一人では見つけれないのかもしれない。
『九月が永遠に続けば』沼田まほかる
「概要」高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか――。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。
離婚家族に生まれた不幸な結末。人を思い愛することから自制できなくなる。家族との絆を打ち消すような人間関係を繰り返し、ついには嫉妬が事件を起こす。


「個人情報」の管理は自己責任『ちの轍』

2022-01-11 07:50:46 | ミステリー小説から見えるもの
他人になりすまし(背乗り)裏取引を仕切り凶悪犯となる。表の顔は上場企業の役員として公安部の中枢に潜り込み極秘情報を盗み出す。その公安官僚との縁のきっかけはPCにある個人情報が抜き取られ、弱みを握られたことで縁が経ちきれなくなったことが原因と、ある。現代でも金で操られる公職は改竄は愚か、データーの漏洩にも手を犯す。気を付けたいのは「個人情報」をどの端末・アプリにどれだけの情報をインプットしているかだ。責任は全て個人に返ってくることだ。
『血の轍』相場英雄
「概要」命を賭した、刑事部と公安部の壮絶な覇権争い。刑事たちを突き動かすのは、正義か、威信か、それとも本能か。東京都内の公園で絞殺体が見つかった。被害者は元刑事。警視庁捜査一課の兎沢が調べると、被害者は殺される直前、パソコンのメモリーカードを知人に送っていた。兎沢はカードを追うが、入手寸前に邪魔が入る。立ちはだかるのは、かつて所轄時代に数々の事件を解決しながら兎沢に捜査のイロハを叩き込んだ公安部の志水だった。殺された元刑事は警視庁全体を揺るがす、ある事件の真相を掴んでいたのだ。事件を詳らかにしたい刑事部と、闇に葬り去りたい公安部の熾烈な争いが勃発し、兎沢と志水の絆が引き裂かれていく。
ー公安部の次期警視総監とその背後にいる半導体ブローカーの役員が権力を蓑に日本を震撼する計画を図っていた。その証拠たる一部が殺害された元刑事の極秘の文章に欠けされており、USBメモリーに託されたその文章が事件解明の鍵を握った。公安部トップはその証拠をもみ消すため公安部利用し殺害を含めあらゆる手法を繰り出していく。
ー刑事部は元同僚の資料文章を確保し用途決死の大勢で挑むが公安部との熾烈な戦いとなる。刑事部の担当者は公安部の担当者の元部下だが、公安部は手術で治るとされた当日、医者を逮捕、娘の命が閉ざされるという悲惨な目にあっていた。
ー資料文章には、背景に日本を震撼させた過去の多くの事件、総監連続殺人(天下り)、企業事前情報漏洩(株価)等で総会屋(仕立筋)が公安部の副総監と絡んでいと見た部下の公安部は極秘に捜査、また刑事部は
ー副総監はこのブローカー役員から裏金、クレジットカードなど含め不正な金銭を受けていることが公務部の部下が発見、刑事部は元警官を殺害した容疑者を知能犯担当と捜査し始める。


恨み、仕返しから犯罪者を作り出す『去年の冬、君と別れ』

2022-01-07 07:49:16 | ミステリー小説から見えるもの
「僕」がさまざまな角度から語られることで少々人物認識感覚が麻痺する。が、結末まで読むとその正体がはっきりする。「恨み、仕返し」の一言がこのミステリーなのだ。現代でもこの「恨み、仕返し」で関係のない人まで巻き込んだ殺害「放火殺害事件」があった。世の中を見る視野が狭くなり、孤立化。世の中の不満として起こした事件だろうがあまりにも自己主義だ。
『去年の冬、君と別れ』中村文則
ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。
「僕」は事件のネタで本にすることを目的に犯罪者に接近する。少々狂言的な写真家とその姉が世間を違った角度から人間を「モノ」として扱ったことに恨みを持った人物(作家と弁護士)が現れる

「差別される人間」を思いきり感じさせる小説『夜がどれほど暗くても』

2022-01-06 07:50:23 | ミステリー小説から見えるもの
「被害者が突然加害者になり、加害者が被害者になりうる」、とはこの小説にある言葉だ。被害者も場合によって誹謗中傷、嫌がらせなども被る場合もある世の中なのだ。世の中の情が薄っぺらく細く狭くなったことで、ちょっとした世の中の矛盾でも憤りを感じる人が増えているのは頷ける。特にTwitterやSNSでの一言が最も簡単に悪夢に引っ張り込み、引き込まれるのだ。人は弱者には何事も強要したがる動物なのか。
文中で読んだ気になる言葉
「差別される人間」「鎹が亡くなる」(夫婦の縁を持つことがなる)
「マスコミの世界では聖なるものよりは邪なるもの、美しきものよりは汚いもの、高貴なものよりは下賤なものの方に需要がある」
『夜がどれほど暗くても』中山七里
志賀倫成は、大手出版社の雑誌の副編集長で、その売上は会社の大黒柱だった。志賀は、スキャンダル記事こそが他の部門も支えているという自負を持ち、充実した編集者生活を送っていた。だが大学生の息子が、ストーカー殺人を犯した上で自殺したという疑いがかかったことで、幸福だった生活は崩れ去る。スキャンダルを追う立場から追われる立場に転落、社の問題雑誌であるへと左遷。取材対象のみならず同僚からも罵倒される日々に精神をすりつぶしていく。一人生き残った被害者の娘・奈々美から襲われ、妻も家出してしまった。奈々美と触れ合ううちに、新たな光が見え始めるのだが……。

人間の欲望と性から「騙す・騙される」のうまい顛末展開『合理的にあり得ない』

2022-01-03 08:09:10 | ミステリー小説から見えるもの
世間は詐欺的行為が頻繁化しているが、如何に騙されないようにするかは誰もが注意を払っている。だが、ギャンブルになるとそうはいかない。負けを取り戻そうと一気に賭けに出ることでその仕掛けにハマるのが人間の欲望と性である。騙される方は罰として仕方ないが、騙す方を野放しにしておくことは第二第三の被害者を生み出していく。そこにメスを入れ探偵業として「仕返し」展開が実にうまくこなしていくことに、とても興味深く面白い
『合理的にあり得ない』柚木裕子
法より節義に報いたい。 危うい依頼は美貌の元弁護士がケリつけます!上水流涼子は弁護士資格を剥奪された後、頭脳明晰 な貴山を助手に探偵エージェンシーを運営。
「確率的にあり得ない」若き会社社長、親からの遺産、は決断力が乏しく母に頼っていた。ある時「預言者」なる経営コンサルタントを紹介されるとその男の的中率は嘘がなく相談者となりある日年間契約をすることにした。その契約の当日小切手を渡すと隣の席の中国人(涼子と部下が扮装)がロト6の当選番号を推測させ、当選の半分(契約書小切手の額面)と交換条件に交渉すると男は「詐欺を見破られたと」小切手を捨てて逃げる。 「詐欺師」を見破る。
「合理的にあり得ない」
人を不幸にした人にはその不幸が返ってくる 不動産で詐欺師的に人を騙した男に仕返しする それは妻の悩みに入り込み幸運として物で貢がせることだった。
「戦術的にあり得ない」
ヤクザ同士の将棋勝負に八百長を見抜く それは親分を欺く子分の八百長だった
「心情的にあり得ない」
以前罠に陥れ弁護士資格も剥奪された会社役員からの依頼は、孫娘を探し家に帰らせることだった。調査するとその娘はある男と一緒に暮らし麻薬を吸っていた事がわかり、警察と共に摘発させる。漸く会社役員への昔の仕返しができたことで感無量となる。
「心理的にあり得ない」
野球賭博にハマった父親が自殺、「騙された」を娘が調査を依頼する。元締めのブローカ的役割をしていた男が中をくすめている事がわかり、逆に「嵌める」仕掛けをする。


家族は一緒にいるのが最高の幸せ『死相学探偵最後の事件』

2021-12-29 07:47:00 | ミステリー小説から見えるもの
現実離れした妖怪・妖術世界の想像は難しいが、家族の隠された過去が背景にあった。それは家族愛を求めた母親が子供と疎遠になったことで巻き起こった事件に繋がった。子と一緒に幸せな暮しを求めた母親はどれほど寂しかったことか。母とこの繋がりは誰よりも強い。
『ほんとうに他人の人柄がわかるのは、その人と大喧嘩したときだということです。そのときこそ、そしてそのときはじめて、その人の真の人柄が判断できるんです。』アンネ・フランク -
『死相学探偵最後の事件』三津田信三
黒術師の居所を探し、候補地である孤島に渡った黒捜課のメンバーと、俊一郎と祖父母たち。そこで待ち受けていたのは、どこか奇妙な言動のスタッフたちと、次々と発生する不可解な連続殺人事件だった
「黒術師」の正体の謎に警察の捜査官、俊一郎の家族がある島に招待される。次々とその宿泊先の従業員が次々と証拠も無く殺されていく。やがて隣にある黒術の塔に隠された秘密を探るとゾンビなど魔物が襲ってくる。謎解きは「おみくじクッキー」に隠されているが、果たして「黒術師」の正体は!



悪党への憎悪、憎しみは一生消えない『悪党』

2021-12-28 07:48:37 | ミステリー小説から見えるもの
未成年の犯罪は殺害事件でも刑罰が軽い、だが殺された家族、残された家族は生活が乱れ、犯人の年齢に関係なく一生憎悪が募る。犯人が悔いを新ため出所後にどのように暮らそうと「許すことができない」のだ。そんな人間はどのようになれば許されるのか、残された家族の思いそのものの小説の主旨が心を突き刺した。 法的解決は残された家族に「無念さ」だけが残る。これは決して具体的な解決策があるわけではない非常に厄介な問題だ。
『悪党』薬丸岳
探偵事務所で働いている佐伯修一は、老夫婦から「息子を殺し、少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい」という依頼を受ける。実は佐伯も姉を殺された犯罪被害者遺族だった。
ー悪党
子供を殺された両親の恨み。殺したのは未成年で少年院で過ごした後、雇われ「振り込めザギ」を営んでいた。探偵の依頼で身元が判り両親は許せないその男に殺傷事件を起こす。半身不随になった男の彼女はその両親を恨み始めた。
ー復習
幼い二人兄弟が母親に見捨てられ、弟が餓死する。探偵に現在の母親の状況を確認すると妊娠しており、兄はその恨みをはらしたかった。親の愛情を受けないで育った子供として・・・
ー形見
未成年の息子が殺害事件を起こしたことで、母と姉は世間の厳しい目を縫い生き抜いてきた。息子は出所後も、社会の除け者暮らししかできない状態。そんな時、癌の末期の母が息子に最後に会いたいと切望したが・・・
ー盲目
一人の男に貢いで逮捕された女性、実は銀行員で真面目な女性が愛した男がいた。女性は断固として貢いだ先を告白なく刑期を終えても話そうとしない。その男は資金で商売を開始、結婚もしていた。(人を盲目に、ずるい人間)
ー慟哭
弁護士からの依頼で出所した男の今を調査する。その弁護士は昔姉を殺された犯人の弁護士だった。弁護士の仕事は犯罪人でも無罪を勝ち取る事、たとえそれが身内の事件でも・・・
ー帰郷
探偵捜査の為、盗聴器を設置して証拠を元犯人の家から盗み出すが、気づかれ打撲傷を負ったキャバ嬢、探偵の愛人。元キャバ嬢の過去を知ることで人の不幸が自分と同じに映った。
犯人はもう一人の仲間、姉を実際に殺害した男、を強請っており、やむなく逃亡を手助けすることに同意する。その後逃亡した男は他殺体で発見された。
ー今際
姉を殺した最後の一人の男が見つかった。それは末期癌で入院していた。その男を弁護した弁護士が現れ余命幾許もない病人の男に与えたのは、母親との面接だった。「母親を呼んだのは弁護士としての最後の情けですか」に対して「いいえ、私なりの彼への罰です」と弁護士は答えた。

「人を憎み続けることは苦しい。憎しみはやがて激しい焔となって、心の中を焼き尽くそうとする。そして烈火を人に向けるのだ」
「犯罪者に対する憎しみ。人を傷つけて平気な顔で生きている人間に対する憎しみ。それは手のつけられない火焔となり多くの人たちを不幸にする」
「犯罪の被害に遭った者にとって最も苦しいのは加害者が幸せに暮らしていること」
「憎しみは完全に消えることはない」
「たまには笑えるような仕事をしろ、いつでも笑ってもいいんだぞ。いや、笑えるようにならなきゃいけないんだ。俺たちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」
「悪党は自分が奪った分だけ大切な何かを失ってしまうこともちゃんとわかっている。それでも歩いことをしてしまうのが悪党なんだ」


「真贋眼力」人間の能力はどれだけ信頼されるのか『真贋』

2021-12-21 07:56:08 | ミステリー小説から見えるもの
真贋眼力、美術品などを鑑定するキュレーターは豊富な経験者だろうか。そんな人材がいない警察捜査にはこの種は難題だろう。骨董品などを扱う業者もまさに熟練と経験が物を言うが、世間の評価価格について、いつも不思議だと思うのは実際誰が初値をつけるのだろうか。その基準は、その理由は!。人間が極める評価は権威者が極めるものが最も「適度」だと思うのだが。
『真贋』今野敏
盗犯を担当する警視庁捜査三課のベテラン刑事・萩尾と、部下の女性刑事・秋穂。窃盗事件の報に臨場した萩尾と秋穂は、その手口から常習犯・ダケ松の仕業と見抜く。しかし、逮捕されたダケ松に面会した萩尾は、供述に疑問を持つ。どうやら弟子がいるらしい……。
国宝の展示される陶磁器展が絡み、本物か偽物か。二転三転する捜査。果たして真犯人は。
ー美術館員のキュレーターの眼力。真贋を判断できる能力次第となるが、その美術館員自身が事件に絡んでいるとすれば解決するのは非常にややこしくなる。
故買屋とは窃盗犯が持ち込む盗品を売り捌く業者。その故買屋がいなければ窃盗犯は一才金に換金できないどころか商売が成り立たないという仕組み
ー窃盗屋が故買屋に仕掛けた大芝居の結末は中々面白いが、奇想天外的な展開がなく中身が薄い。