もう、「DIE ZW3E」を知っているヴィジュアル系バンドマンはいないかな?
(約一名、某M君を除いて…)
Lynch.のメンバーなら、知っているはず(苦笑)
久々の「V-CLASSIC」シリーズです。
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毎年、なぜかこの時期になると聞きたくなる一枚のご紹介です。
DIE ZW3E(ディザイ)の初のフルアルバム、
【SIDE-B】
です。
ディザイを知っている人、好きだった人とはすぐに仲良くなれます(苦笑)。
ヴィジュアル系の歴史の中でも、かなり「異質」なバンドだった、と改めて思います。
いわゆる「名古屋系ヴィジュアル系バンド」として登場したバンドですが、
その後、「不良系」「Bad boy系」に変貌を遂げ、活躍が期待されました。
ストレートでソリッドでリアルな日常を歌った粗削りなロック。
しかし、惜しまれつつ、1996年に解散してしまいました。
僕のヴィジュアル系人生の中で最も影響を受けた二人のボーカリストの内の一人、
結城敬志さんが在籍していたバンドです。
メンバーは、ボーカルの結城さんの他、
G 由希
G 喜多圭介
B 智貴
Dr. RAN
の5人組バンドです。
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この「SIDE-B」は、ディザイの代表作品になります。
フルアルバムとしてのボリューム感はとんでもない一枚でした。
牙を剥き出しにした「反逆」の歌が10曲入っています。
でも、単に「反抗」するだけじゃなくて、「迷い」や「葛藤」が渦巻いていて…。
ただのバッドボーイロックじゃなくて、悩み苦しんでいる歌たちでした。
【全曲解説】
01.路上から
DIE ZW3Iのアルバムは、謎のイントロダクション的なノイズ?が入り、突然演奏が始まります。この曲の冒頭も20秒ほどの謎の音が入り、カシャっという音と共に、演奏が始まります。「笑顔が多いほどに 一人の夜は辛いものと…」という歌詞から、苦悩し葛藤する心情が浮かび上がってきます。イマドキの若者の中にも、こういう気持ちをもつ子は多いだろうなって思います。引き裂くようなギターの音と結城さんの歌が絶妙に絡み合っているのもまた、この曲の素敵なところ。ただ、全体的に、前作の影響が見られていて、この作品本来の魅力は二曲目以降に出てきます。
02.D-BLOCK
刺々しいパンキッシュな曲。いや、棘しかないようなソリッドな曲。歌詞も「0.15g ガラス管から」と出てきます。どんどん追いつめられていく人間の緊張感がビンビンに感じられます。根が真面目な(だけどどうすることもできない)不良の心境を描いている、というか。若者ならではの衝動と怒りがぎゅっと詰まっていて、カッコいい楽曲です。サビの結城さんの裏のコーラスが「悲鳴」にも似て、狂気的な感じもします。
03.FACE
本作の中で最も攻撃的な曲の一つかな。90年代V系のサウンドのエッセンスもぎゅっと詰まっています。「名古屋系ってこういうのだよね」っていうサウンド。SILVER ROSEにも似ている楽曲。「すべてを解放しろと自分に問いかける」というサビのフレーズがとても印象的。「ぶっ壊したいけど、ぶっ壊れない」という葛藤がこの曲のモチーフかな、と。大人になると忘れてしまうようなネガティブな感情が炸裂した曲構成になっていますね。こういうストレートに「怒り」や「戸惑い」を吐き捨てるカッコよさが、ディザイの、結城さんの最大の魅力だと今になって思います。でも、「切なく 熱く 遠くまで 叫び続けたいから」と謳っていて、ポジティブさも垣間見えます。(ここに、ポジティブパンクの要素がありそうな…)
04.10&10-風ノ向コウデ-
この曲は、ずばり「バイク」の歌ですね。この時代、まだ「族」という言葉が通用していました(今でもいるみたいだけど)。単車の爆音と共に夜の道路を飛ばしている人に聴いてもらいたい一曲。歌詞の中に、「last riding day」ってあるから、おそらく「引退」する日の歌かな、と。巷によくあった「族の歌」とはちょっと違って、ここでもV系的な世界観を出しています。「自由と孤独 いつも勘違いしていたけれど スネル気もない Fight Body Talk」というフレーズがずっと頭に残っています。自由であることと孤独であること、これは僕の永遠の問いでもあるんだよな、、、。
05.忘却の彼方
90年代のV系バンドは、わりと「バラード」にも強かった気がします。今のヴィジュアル系バンドって、あまり「バラード」を奏でていないような気がします。この曲は、ディザイテイスト満載のメロウでゆったりとした曲で、実に7分37秒の「大作」。どこかGlass Valleyにも似た浮遊感のある幻想的な曲。Aメロ2番に、「訪れた悲しみ 諦めかけている 振り返る 未踏の地さえ 貴方の不在を痛感した 「独りにしないで…」 心の中で祈り」とあります。01の「路上から」とも通じる「別れの曲」。ここに、ディザイがただの「不良バンド」との違いがあるように思います。ギターのクリーントーンの美しさは、今聴いても、素敵だなぁと思います。もちろん結城さんの歌も、こういうバラード系の曲でこそフルに発揮されているわけですけど♪
06.Bougainvillaea
これ、「ブーゲンビリア」って呼ぶんですよね。意味的には、「オシロイバナ科ブーゲンビリア属に属する熱帯性の低木」のこと。なんで、こんなタイトルにしたんだろ?、と2019年の今も考えています(苦笑)。この曲はなんといっても、ギターのカッティング! こういうギターのカッティング、10代の頃にいっぱい練習して多用したなぁ、と。サビは今も理解できていない(-_-;)。「群がるSituation 行き詰まりさえ 仕組まれた方式と… 戸惑うBad measure ためらう声を 今全ての答えと夢を」。ギターソロ前の静まるところと最後のサビ後のドラムがとってもカッコいいんです。ちょっとYUKIHIROっぽくて♪
07.CALL
90年代のデカダントな楽曲を彷彿とさせるノイジーなギターで始まるアッパーな曲。歌詞は、めっちゃ痛烈。「機械仕掛けに踊る操り人形の様さ 舗道のふちに腰掛け 助けを待っている」「口に出す事も出来ないなら 昨日と同じ今日を求め 歩き続けろ」「作り笑いでつなぎ止めた明日 探り合う心 ボロが出ぬ様に…」、と。この歌詞、今の若者にも十分に通用すると思う。「友だち地獄」の中で、作り笑いを浮かべて、ホンネを隠す人は今も多い。90年代の曲だけど、今もなお、突き刺さる人には突き刺さると思う。
08.Di・es I・rae
ここまでずっとマイナー調のやるせない曲が続いてきたけど、ここでメジャーコードの突き抜けた曲をもってきます。後にも先にもこんなに明るい感じのサビの曲はないんじゃないかな? Sixthになってわりと明るめの曲もやっていたけど、結城さんの音楽人生の中でここまで綺麗でキャッチーな曲はこの曲だけじゃないかな。Dies Iraeは、ラテン語で「怒りの日」、ないしは「レクイエム」のこと。この辺も、90年代のV系のボキャブラリーの豊富さを感じさせます。(今のV系の歌詞は、こういう難しい言葉を使わなくなってきていて、残念)
09.Flag
この曲も08同様、メジャーコードの曲で、明るさも少しだけ感じられます。でも、結城さんの歌だけに、ただ脳天気に明るい曲ではなくて、しっかり毒を盛っています。「人混みに紛れた自分の顔さえ 言い訳にしがみついて… 隠れている不器用な心を 今素直に解き放てよ」。このメッセージは、この作品以降の結城さんの一貫したものになります。「警告と解放」、結城さんはずっと僕らにそれを叫んでいたように思います。演奏も、またギターのリフや音色も、90年代をとっても感じさせてくれます。
10.Voice in …
90年代のV系バンドのアルバムの最後の曲は、どれも「パワーソング」でした。最高の一曲を最後にもってくる、というのが「暗黙の前提」だったと思います。ZI:KILLの華麗、For My Life、LUNA SEAのPrecious、Wish、ジルドレイのWillなど…。このSIDE Bの最後を飾る「Voice in...」もそういう「最高の一曲」でした。色々と辛いことや苦しいことや悩むことはあるけど、それでも「I still believe you」という強いポジティブな言葉で締めくくるわけです。絶望で終わらずに、最後は希望で終わる、それが90年代のV系の「ポジティブさ」だったのかな、と。今のV系バンドのアルバムのラストソングはどうなっているんだろうな?
…そして、10曲目の後、しばらく「沈黙」が続いて、、、
(当時はこういう「しかけ」がいっぱいありましたね)
***
というわけで、お粗末なメモみたいな全曲紹介でした。
このアルバム、是非、手に取って聴いてもらいたいですね。強烈ですから。
特に、行き場のない苦しみや悲しみを抱えた人や、右往左往してどうにもならない人や、まわりの人間がすべて敵に見える人など、そういう尖った人の心には響くアルバムだと思います。
演奏は粗削りです。でも、だからいいんです。
若者たちは皆、「未完成」です。粗削りです。だからこそ、音も粗削りな方がいいんです。
今の音楽は、技巧に走り過ぎていて、面白くない。演奏は(加工技術も向上して)上手になっているけど、歌詞は「劣化」の一途をたどっているように思います。歌詞の言葉数は多いけど、心に刺さらないというか…。
そういう意味では、今の音楽業界に疑問をもっているバンドマンに聴いてもらいたい一曲かも!?
結城敬志さん。
板谷祐師匠と並び、僕の人生で最も大きな影響を与えてくれた一人。
もう、音楽シーンに戻って来ることはないのかな、、、
でも、結城さんの歌に、言葉に、僕は今も支えられています。
多分、僕は、自分が死ぬまで、結城さんの歌と共に生きるんだと思います。
マーケットとしては「成功」しなかったかもしれませんが、
僕という一人の人間の中では、「唯一無二の絶対的存在」になりました。
そういう「永遠のファン」をつかまえた結城さん、ディザイはひょっとしたら大成功かも?
10万人に薄く愛されるよりも、1人の人に死ぬほど愛されたいですからね。
僕は、結城さんとディザイを死ぬまで大事にしたいし、聴き続けたいと思います。
音楽は永遠なんだな、、、と。
ずっと、結城さんの背中を追っかけて、生きていきます。
結城さんと同じ時代に生きられてホントよかったと思います。
今のこの腑抜けた時代を、結城さんはどう見ているんだろうか。
誰もがロボットのようにスマホの画面に目をおとすこの時代を…