6月15日、DIR EN GREYの待望の11thアルバムがリリースされました!
その名も、
PHALARIS
です!
PHALARISは、ギリシャ語で「Φάλαρις」と書きますね。
ファラリスはBC5世紀頃のシチリア島アクラガスの君主のことみたいですが、ディル世界の文脈では「拷問器具」である「ファラリスの雄牛」のことを指しているようです。なんか、今の時代では笑えないタイトルです。(民主主義国が減り、どんどん権威主義国や独裁国家が増えている時代故に…)
僕的には、ドイツの【中世犯罪博物館】に行っているので、ちょっと興味がありますが…
これは「拷問の教科書」です。
それはそれとして…苦笑
今回のアルバムもまた完全生産限定盤が出ています👆
PHALARIS【完全生産限定盤】
特殊パッケージ仕様
3枚組(CD+特典CD+特典Blu-ray) SFCD-0265~267 ¥9,900 (tax in)
3枚組(CD+特典CD+特典DVD) SFCD-0268~270 ¥8,800 (tax in)
僕はDVDの方の8800円の限定盤を購入しました。
今回も立派なケースに入っていました。
メインのフルアルバムに、2曲入りのCDに、ライブDVDが付いています。
ブックレットは二種入っていて、歌詞カードとインタビュー付き写真集。
インタビュー記事は必読ですね🎵
…
では、早速、全曲解説&moreを!
DISC 1:CD【PHALARIS】
01. Schadenfreude
早速一曲目からドイツ語タイトルの9分以上ある超大作で幕が開きます。Schadenは「被害」「損害」「損失」という意味で、Freudeは「喜び」「歓喜」という意味ですが、これが合わさると「人の不幸に対する喜び」となり、一気に不気味な感じになります。DIRのサウンド世界にぴったりあった言葉で、Schadenfreudeは英語?にもなっています(英辞郎のページはこちら)。クラシックとラウドロックを融合させた感じなのが凄い。圧倒感があります。一曲目から。「行けども地獄か」という言葉から、この世の地獄を感じさせる楽曲になっています。ウクライナ戦争の最中とあって、どこか「戦地」を思わせます。4分~からの静寂の部分になんともいえない「痛み」を感じます。
02.朧
ドラマティックで超大作のSchadenfreudeの後、続けてシングル化された朧。この1~2の流れもまた恐ろしく気持ちよいです。朧のあの不気味なベース音からピアノが加わり、京の囁くような歌が流れてきます。この曲はもうホント名曲ですよね。ギターの音が随分とよくなっている気もしますが…。リマスタリングはしているんだよな?! シングルの時より若干聴きやすくなっているような…?!(気のせいかも…💦)
03. The Perfume of Sins
続いて4分強のディープでラウドでカオスな楽曲。「罪の香水」…ですね。ドロッとしたイントロの後に、Shinyaの恐ろしく美しブラストビートが炸裂します。むちゃくちゃ綺麗なブラストビートでうっとりしました💓 わりとこれまでのディルにあるタイプの曲ですが、かつてよりも聴きやすさが増している気がします。(しかし、40代後半のメンバーがこんなサウンドを奏でているって、考えたら凄いな…💦)
プロモーション用の動画がYouTubeで公開されました。驚異のブラストビートをご堪能ください!(やっぱり今回のアルバムのコンセプトは「拷問」なのか…)
04. 13
13は、キリスト教圏では「不吉の象徴」となる数字ですね。まさにディルにぴったりの数字です。今回は「13階段」…ですね。そのタイトルどおり、すごく不吉さを感じるシンセ(ギターシンセ?)の音から始まり、徐々にテンションを上げていきます。「一人で生きて行く事が 孤独を生むんじゃない 必要とされない事」というところがズシリときます。必要とされてこなかった人が「無敵の人」となり、狂気の蛮行に及び、死刑判決となり…、というイメージが湧いてきますが、僕ら世代に多い「ひきこもり」の人の苦悩を歌った歌のようにも…。楽曲的にはこれまでのディルを踏襲する感じかな?!(でも、かつてよりは随分と聴きやすくなっています)。最後、「全てを」を連呼するところで、ブツっとなるところがもう…😢
05. 現、忘我を喰らう
本作はここから「新しいDIR EN GREY」の世界が徐々に開けてくる感じがします。曲もそうですが、京の歌い方のバリエーションが更に豊かになっていることに気づかされます。この曲の最初、京が一人二役を演じている感じで、SUKEKIYOの京とディルよりも更に男らしい?京が共存している感じになっています。その後、ディルの京が登場しますが、そこでもやっぱり歌い方が少し変?になっています。変というか、表現力が確実にupしてる…。デスボも落ち着いていて、デスやシャウトの円熟を感じさせます。また、「一度壊れた心はドロドロに纏わり付く熟したチーズみたいな悪臭放ち」ってところ(ラップ調?)はかなり中毒性が高いです。曲調は従来のディルを感じさせるかな。3分ちょっとの曲なのに、構成はめっちゃ複雑という…。ただ、音が昔ほど痛くないですね😊
06. 落ちた事のある空
この曲、めっちゃV系を感じるデカダントで破壊的で、そしてメロディアックさもあります! 90年代末期~00年代初期のディルを感じるサウンドになっていて、僕はすごく好きだな💓 タイトルもカッコいいじゃないですか。ちょっと大祐っぽくもあり…。No will living dead、生き馬の目を抜く?、生き地獄? でも、歌詞を読みながらこの曲を聴くと、ドキッとさせられます。普段、すごく抽象度の高い歌詞になっているのに、この曲では「8月6日の朝」って出てくるんです。この8月6日の朝をイメージしてこの曲を聴くと、、、?!
07. 盲愛に処す
この曲は本作の中でもかなり狂っていて、異彩を放っていますね。これまでのディル以上に狂った旋律&和声になっていて、震えあがりますね。おどろおどろしいサウンドで、不気味なスケールで、これまた名曲の予感です。途中、京の歌がとんでもなく多様化されていきます。「ホントに京が歌っているの?」って思うほどに、振れ幅が広くなっています。サビ前の「盲愛 慈しむ 口も拭き取って」と、それに続くサビの「名前も知んない 此処に居ないのも同じ」のところがもうホントに狂気的で凄いです。いったい何人役をこなしているんだ?!って。内容的にはホント猟奇的&凌辱的&変態的?な感じになっています。でも、06同様に、ホントにカッコいいディルロックです!!
08. 響
続いては、京が歌う響(ひびき)。哀しくも美しい旋律に心が奪われます。ディル風のバラードの極みみたいな感じもします。今回のアルバムの中でも最も美しい調べになっているような?! ギターの音もラウドながらも、すごくセンチメンタルな感じがします。特に2:52~の静かになるところの後、どんどんテンションが上がっていき、3:25のところのギター音がなんかDEAD ENDのYOUさんっぽいというか、どこかラルクのKENぽいというか…。80年代~90年代を感じる一音でしたね。キュンってなりました💓
09. Eddie
待ってました! これこそディルの超快速ナンバー! こういう曲が聴きたくて、ディルを聴き続けているんですよ~。ライブでも盛り上がること、間違いなし👆ですね。「始末書は書き終えたか」「ありがと無能共」など、ドキッとする言葉もいっぱい散りばめられています。遊び心満載。なんか、はるか前の「Я TO THE CORE」とか「JESSICA」に通じるものがあるようなないような…?!(そんなにポップではないですが、聴きやすいハイスピードナンバーです!)
10. 御伽
ネット上でも最後の三曲に驚いたファンも多いように見受けられます。僕的には(曲調は違えど)BUCK-TICKの「狂った太陽」のラスト三曲(神曲!)を思い出しましたね。90年代ヴィジュアル系バンドはアルバムのラスト3曲には「こだわり」があるんです。この「御伽(おとぎ)」は、もう間違いなく「名曲」ですね。京の歌を心から堪能できます。やっぱり京の歌は半端なくよい! 日本が生んだ最高のボーカリストだな、と。曲調や世界観的には、BUCK-TICKの【No.9】に通じるものがあって、東洋的な思想世界や東洋的な音楽観が反映されています。カッコいい…(n*´ω`*n) この曲が最後に来てもおかしくないくらい。最後の「痛みからの解放」というフレーズに、今回のアルバムの核心があるようにも思いました。もう次の作品が楽しみというか…
11. カムイ
御伽で終わってもよい作品ですが、トドメとなる最後の「カムイ」が流れて、もう僕は失神しそうになりました。なんだこの素晴らしい歌は…って。これはもう四の五の言わずに、ただただ聴いていただきたい一曲ですね。しかし、御伽が6分の曲で、最後のカムイは9分超えの曲…、それなのに全く「長さ」を感じない(今の人は感じるかもしれないけど…)。あと、「無慈悲の椅子」という歌詞を聴いて、DIE IN CRIESを思い出した人も少なくないはず(苦笑)。
…
続けて、ディルご用達の再構築の2曲入りCDです。
DISC 2:CD
01. mazohyst of decadence
『GAUZE』の名曲?が2022年に蘇る! もちろんただのコピーじゃなくて、ディルお得意の再構築バージョン。実際、聴いても、(相当なファンやリスナーでない限り)最初は絶対にこれがmazohyst~だとは思えない(苦笑)。この曲の歌詞、僕の今の研究ともつながっているんです。この曲(歌詞)を聴いて、最初はただ「あー、黒夢系か」としか思えなかったのですが、徐々に「これって問題だよな…」って。「望まない妊娠」や「予期せぬ妊娠」、そしてそれに続く「中絶」や「遺棄」って、ヴィジュアル系界のある種「基礎」になっているんですよね。さて、これが2022年、どうなっているかは、…買って聴いてみてください(苦笑)
02. ain’t afraid to die
この曲は、アルバム『MACABRE』リリース後に発売されたシングル曲で、MACABREのエンドロール的な曲でした。
この曲が2022年、どう生まれ変わっているのか。これもまた、やっぱり買って聴くしかないですね! 確実に「音」がよくなっていて、京の歌を存分に満喫できます。すごくよかったです😂 ギターソロもなんかすごくよかった。エフェクター、当時のもの? 或いは90年代のエフェクターを使っている? なんか懐かしい「音」でした。
そして、最後にライブDVDです! こちらも必見ですよ!!
DISC 3:Blu-ray or DVD
疎外 2021.6.5 東京ガーデンシアター
01. DOZING GREEN (Acoustic Ver.)
02. 絶縁体
03. 空谷の跫音
04. 人間を被る
05. Devote My Life
06. CLEVER SLEAZOID
07. DIFFERENT SENSE
08. 赫
09. Ranunculus
10. 谿壑の欲
11. The World of Mercy
12. 朧
13. かすみ
14. Followers
15. OBSCURE
16. 落ちた事のある空
17. Sustain the untruth
18. 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
Blu-ray付きはこちら!
通常盤はこちら!
本作2曲目に入っている朧のシングルです。
これは入らなかったんだな、、、😢
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40代後半を迎えるメンバーたち(僕と同世代なので…)
がむしゃらに突っ走った20代、己のサウンドを確立させた30代、そして、音楽世界の深みに入っていく40代。常に変化し進化し続けてきたDIR EN GREY。
今回の作品はその40代の集大成的なものも感じましたね。「構築」から「統合」に向かっているというか。ヴィジュアル系バンドから出発して、ラウドロックに「転向」して、そして、その両者が「統合」に向かっている。そして、その統合は、明らかにこれからのディルを映し出している。
何よりも「歌」「楽曲」のエッセンシャルな良さがどんどん極まってきている気がします。
今の若い人たちはまず聴かないとは思うけど、聴いてもらいたいなって心から思います。特に「生き辛さ」や「愛の渇き」を感じている人には、、、
それに、彼らや僕と同じ世代の人にも、ホント聴いてもらいたいな。僕ら世代はみんな、(家族がいようといまいと)本当に日々の生活を必死に生きてます。40代は辛いです(-_-;)。そんな辛い日々を忘れさせてくれて、音世界の中に入り込めてしまうディルのサウンドは、ホント「癒し」としか言いようがないです。
是非に!!