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散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

カラヴァッジオ

2007-01-03 12:28:32 | 思考錯誤
ドイツではイタリアバロック前期の、ましてやカラヴァッジオだけに集中した展覧会企画は今まで無かったらしい。
という事で、デュッセルドルフ市にあるKunst Palastへカラヴァッジオの展覧会に行ってきた。



鳴り物入りで騒がれていたからか、カラヴァッジオの人気なのか展覧会終了を間近に控えた今も観客が押し寄せているようだ。
昔、カラヴァッジオといえばその名前は知っていたし、図版は見ていたけれどそこで止まっていた私の興味が頭をもたげたのはデレク・ジャーマンの映画『カラヴァッジオ』を見て後の事だ。
とはいっても私はカラヴァッジオに詳しいほど見ていないし勉強もしていない。要するに興味はあったけれども特に進んで求めて見ようとした事が無かった。
さて、今回の展示ではどんな作品に出会えるのかと想像していたが、思ったよりも期待の作品が少なく(期待するほうが間違っているのかも知れないけれどね。)少々がっかりもしたのが本音だ。デュッセルドルフ市は自前のカラヴァッジオ収蔵が無いため全展示作品を遠路調達をしなければならない。
38点の作品展示とはいえかなりのコピーが数を占めている。
展覧会の副題を見れば"天才の軌跡”とあるし、そこから推測すればわかってくることなのだが、生前からコピーが氾濫したカラヴァッジオのオリジナルとコピーを並べての比較、イタリアのカラヴァッジオ研究機関が発表しているレントゲン写真によるオリジナルとコピーの違いなどが提示されている。真偽がわからないという作品もあるようだが、案外見ているとコピーである事はわかる。
これはこれで大変興味深く面白いことだった。
特に輝くように描かれた部分にカラヴァッジオは白鉛を使ったらしく、それがレントゲン写真に現れてくる。カラヴァッジオは暗い背景に白鉛で描き始めるという独自の画法を編み出してもいる。
ところが、確実にお墨付きカラヴァッジオであるロンドンの"エマオの晩餐”には白鉛の輪郭もハイライトも見られないというからややこしい。
”アモルの勝利””エマオの晩餐””マグダらのマリアの法悦””執筆するヒエロニムス””聖母の死””リュートを弾く若者”などの見所はもちろんあったけれども、大目玉の中心みたいな作品がかけていたようだ。
それをカバーする如くの苦しい展覧会のコンセプトの工夫だったのじゃないか?と言う気がしてしまった。
もちろん中々貸し出してもらえない事だろうから、簡単に”あれが無いじゃない”といわれても困るんだろうけれどね。見たければイタリアにでも、パリにでも出かけていって見るしかないのかな。
カラヴァッジオの作品を眺めながらシンディー・シャーマンの写真作品が思い出されてきた。
ラ・トゥールやレンブラント、ルーベンスその他数限りない画家たちへの影響もさることながら現代の作家たちにも影響を与えてきた彼のスタイル、そして光と影はやはり素晴らしい。