金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

レバレッジを解きほぐす大変さ

2008年09月28日 | 社会・経済

レバレッジLeverageは一般には「梃子(てこ)」の意味だが、金融や経済の文脈の中では「借金をする」特に「借金をして投資を増やす」という意味で使われる。昨年夏頃までアメリカ経済が順調な発展を遂げてきた原因はこの「レバレッジ(借金)効果」が大きかった。銀行は企業や個人に融資を拡大し、その資金で企業は設備投資を、個人は消費を伸ばしてきたのである。

エコノミスト誌はモルガン・スタンレーの調査を引用しているがそれによると、GDPに対する総負債(家計・企業・国の純負債の合計)の割合は、大恐慌当時が約300%で、40年代から70年代までは大体150%で推移していた。ところが80年代にはいると負債比率が急増し始め90年代初めには200%を超え2008年には350%にも達している。

銀行は大体自己資本の10倍程度の信用創造(貸付など)を行っている。このことは銀行の自己資本が減少すると信用創造が収縮することを意味している。一連の金融危機で世界の銀行をトータルすると、1,700億ドル程度資本が減少した。このことは潜在的に信用創造が1兆7千億ドル減少するということだ。信用創造が減少するということは、企業や個人が借金の返済を求められたり、貸し渋り(好きな言葉ではないが)に出会うということだ。

1兆7千億ドルというと約180兆円、日本のGDPの3割を越える大変な数字だ。

自己資本が減少すると銀行は自己資本を維持するために、資産の売却を行う。売却を行う資産が、国債のように流動性が高いものである場合は良いが、モーゲージのように値崩れした資産の場合は、売りが売りを呼び値を崩すという悪循環を起こす。

米国政府がローン資産買取機構を設立しようとしている意図は、この売りが売りを呼ぶ負の連鎖を止めるためだ。買取機構の設立はまだ立法化されていないが、私は多分設立されると判断している。

だが問題は借金漬けになれた米国の家計(企業の自己資本比率は健全)が軟着陸できるかどうかだ。急速な消費の縮小は不景気を招き、それがまた企業や個人の倒産増を生み、そして銀行の貸出減少を招くという負の連鎖に入るからだ。長年にわたって積み上げてきたレバレッジ(負債)を短期間に減少させることは簡単ではない。

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貸しクラブも悪くない

2008年09月28日 | ゴルフ

昨日(9月27日)3ヶ月振りにゴルフに行った。今年3回目だ。場所は千葉県の季美の森ゴルフ倶楽部、東急が運営するリゾート的な美しいゴルフ場だ。数日前まで車で行くつもりだったが、相棒との連絡ミスから急に電車で行くことに変更した。宅急便でゴルフバックを送る時間がないないので、貸しクラブを使うことにした。

季美の森ゴルフ倶楽部に置いてあった貸しクラブはゼクシオ。シャフトはレギュラーを選んだ。アウトのスタートは私はオナー、初めて使うゼクシオのドライバーだが力まずに振ったらフェアーウエー真ん中に220ヤード程飛んだ。非常に軽い打球感だった。

最近はすっかりゴルフから遠ざかっているので、アプローチの距離感が合わずスコアーはアウト47、イン52トータル99と平凡なもので終わった。もっとも一緒に回った連中は年がら年中ゴルフをやっている人達だが、スコアは皆90台だったので滅多にゴルフをやらない私としては納得するべきスコアなのだろう。アマチュアの間ではスコアは必ずしもラウンド数に比例しないのかもしれない。

「貸しクラブの割りにはまともなスコアですね」と仲間が言ったが、私はむしろ貸しクラブのおかげでスコアがまとまったと考えている。というのは私が今使っているクラブよりも打ちやすかったのだ。今使っているクラブのメーカー名は敢えて伏しておこう。何故なら10年位前のモデルだから、そのメーカーのクラブも今は使い易くなっているだろうから。あるいは私が年を取って昔の硬いシャフトに筋肉が付いていかなくなったのかもしれない。

貸しクラブ代は4,500円だった。ゴルフクラブを宅急便で送るよりは少し高くつくが、出荷の手間がないので楽である。また新しいクラブを試打するつもりで使うのも面白いだろう。

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ライン型対アングロサクソン型

2008年09月26日 | 国際・政治

資本主義にライン型資本主義とアングロサクソン型資本主義があることは周知のとおりである。ライン型とはドイツや日本(少なくとも少し前までの)を代表とする資本主義で間接金融のウエイトが高く、企業の利害関係者(ステーク・ホルダー)全体を重視し、終身雇用や小さい所得格差を特徴とする。アングロサクソン型は米国と英国を代表とし、市場金融依存型で株主価値を最重視する。雇用は流動的で所得格差は大きい。経営効率を重視するので、早期の企業リストラが可能という長所を持つが、企業活動に対する政府の規制が緩いので、短期的な利益極大化に走る企業行動により、バブル経済を生む可能性がある。

サブプライム問題で金融の大混乱が起きるまで、アングロサクソン型資本主義が優位に立っていたが、米国の金融問題が深刻になるにつれて、ライン型が勢いを盛り返してきた。象徴的な出来事の一つはドイツの金融相シュタインブリュックが議会で「米国は金融におけるスーパーパワーの地位を失うだろう」と述べたことだ。ファイナンシャル・タイムズによると彼のコメントはドイツ人の「英米人の無茶苦茶な金融エンジニアリングと米国モデルの経済自由主義に対する怒り」に呼応している。

ドイツ人はライン型資本主義つまり金融よりも産業を重視し、より規制的で長期的視野に経った経済運営の方がより弾力的だと主張する。

シュタインブリュック氏の金融面の規制に関する提案は幾つかあるが、一例を引くと金融機関の資産の流動化に関する制限がある。彼は金融機関は引き受けたローン等の8割以上を証券化して外販することを禁じるべきだと主張している。

奇しくも同じ時日本では構造改革・規制緩和を旗印に掲げた小泉元首相が政界からの引退を表明した。

私自身はライン型・アングロサクソン型のどちらか一方が絶対的な正解ではなく、正解はその中間点にあると考えている。そして日本にはまだまだ構造改革が必要だと考えている。一度アングロサクソン型に大きく振れた振り子は今、ライン型に振れようとしている。こういう場合「実は私は昔からライン型だったのだ」などという隠れライン派が出てくるが、こういう輩にだけは気をつける必要があるだろう。ムードとしては構造改革派にはアゲインストの風が吹いていることは確かだが。

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モーゲージ買取の難しさ

2008年09月25日 | 金融

先週ポールソン財務長官が、不良資産化したモーゲージ関連債権を金融機関から買い取る政府機関を作る法案を2週間程で作りたいと発表した後、マーケットは好感して株価が急伸した。その後ゴールドマン、モルガン・スタンレーが銀行持株会社を作るなど好材料が出たものの、今週に入ってクレジット市場で緊張が高まっている。大きな理由は「モーゲージ関連債権の買取価格をどう決めるか?」ということに、議員や国民の間に疑問が高まっていることだ。

ニューヨーク・タイムズはある一例を出して、モーゲージの価格決定の難しさを説明する。ベアー・スターンズが組成したAlt-A Trust 2006-2007という債券がある。これは平均金額45万ドルのAlt-Aと呼ばれるモーゲージ2,871契約をパッケージにし、幾つかのレイヤーに分けたものだ。Alt-Aというのは、サブプライムより質は良いが、プライムな住宅ローンよりは信用度合いが低い住宅ローンだ。Alt-Aでは住宅ローン実行会社は債務者の所得証明などを求めていないので「うそつきローン」とも呼ばれている。

この2,871の住宅ローンの内既に778件は完済されるか競売に付され回収された。残る2,093の内23%が返済遅延に陥っているか競売途中である。発効当時AAAに格付された最上級のトランシェも既にジャンクボンド並みに格下されている。

これはモーゲージ債券の中で比較的簡単なものだが、この債券(債権)が買取機構に持ち込まれた時、どのように価格をつけるのか?というのが大きなっ問題になっている。一つ一つのモーゲージの値段を出すことは、可能なのだろうか?今米国では家を売ろうにも価格が折り合わず売るに売れない人が沢山いる。これらの人は「政府機関が高い値段で、モーゲージ債権を買うということは金融機関に対する贈与だ」と憤慨するだろう。

一方バーナンキ連銀議長は「買取機構は『投売り価格でモーゲージ債権を買うのではなく長期投資ベースで価格を決めるべきだ」と証言している。だが現在の妥当な価格がはっきりしないとすれば、何をもって長期投資ベースで妥当な価格か?ということは決めにくいだろう。上記のように比較的簡単なモーゲージ債券でもこのような状態だから、複数のモーゲージ債券を組み込んだCLOなどになると、価格決定は極めて困難だ。

この問題にウオール・ストリートとワシントンの知恵者達はどのように応えていくのだろうか?これが当面の課題だ。

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Hard - pressed (イディオムシリーズ)

2008年09月25日 | 英語

Hard-pressedは「働き過ぎや借金の重荷で疲れ切った」という意味である。ニューヨーク・タイムズに次の文章が出ていた。The House of Representatives on Wednesday approved a $25bn package of low-cost loans to help hard-pressed carmakers.

「水曜日に下院は疲弊した自動車メーカーを救済するために250億ドルの低コストローンを供与することを可決した」という意味だ。法案は上院に回され数日の内に可決される予定だ。この法案は昨年12月に可決されたエネルギー法の中で認められているもので、自動車メーカーはこの資金を使って燃費の良い車の製造に体質転換を図ることになる。

今米国では7千億ドルの不良資産買取機構を巡って議論が活発になっているが、ウオール・ストリートよりは10万人のブルーカラーを抱える自動車産業の方が国民の支持を得られたようだ。

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