レバレッジLeverageは一般には「梃子(てこ)」の意味だが、金融や経済の文脈の中では「借金をする」特に「借金をして投資を増やす」という意味で使われる。昨年夏頃までアメリカ経済が順調な発展を遂げてきた原因はこの「レバレッジ(借金)効果」が大きかった。銀行は企業や個人に融資を拡大し、その資金で企業は設備投資を、個人は消費を伸ばしてきたのである。
エコノミスト誌はモルガン・スタンレーの調査を引用しているがそれによると、GDPに対する総負債(家計・企業・国の純負債の合計)の割合は、大恐慌当時が約300%で、40年代から70年代までは大体150%で推移していた。ところが80年代にはいると負債比率が急増し始め90年代初めには200%を超え2008年には350%にも達している。
銀行は大体自己資本の10倍程度の信用創造(貸付など)を行っている。このことは銀行の自己資本が減少すると信用創造が収縮することを意味している。一連の金融危機で世界の銀行をトータルすると、1,700億ドル程度資本が減少した。このことは潜在的に信用創造が1兆7千億ドル減少するということだ。信用創造が減少するということは、企業や個人が借金の返済を求められたり、貸し渋り(好きな言葉ではないが)に出会うということだ。
1兆7千億ドルというと約180兆円、日本のGDPの3割を越える大変な数字だ。
自己資本が減少すると銀行は自己資本を維持するために、資産の売却を行う。売却を行う資産が、国債のように流動性が高いものである場合は良いが、モーゲージのように値崩れした資産の場合は、売りが売りを呼び値を崩すという悪循環を起こす。
米国政府がローン資産買取機構を設立しようとしている意図は、この売りが売りを呼ぶ負の連鎖を止めるためだ。買取機構の設立はまだ立法化されていないが、私は多分設立されると判断している。
だが問題は借金漬けになれた米国の家計(企業の自己資本比率は健全)が軟着陸できるかどうかだ。急速な消費の縮小は不景気を招き、それがまた企業や個人の倒産増を生み、そして銀行の貸出減少を招くという負の連鎖に入るからだ。長年にわたって積み上げてきたレバレッジ(負債)を短期間に減少させることは簡単ではない。