金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

モーゲージ買取の難しさ

2008年09月25日 | 金融

先週ポールソン財務長官が、不良資産化したモーゲージ関連債権を金融機関から買い取る政府機関を作る法案を2週間程で作りたいと発表した後、マーケットは好感して株価が急伸した。その後ゴールドマン、モルガン・スタンレーが銀行持株会社を作るなど好材料が出たものの、今週に入ってクレジット市場で緊張が高まっている。大きな理由は「モーゲージ関連債権の買取価格をどう決めるか?」ということに、議員や国民の間に疑問が高まっていることだ。

ニューヨーク・タイムズはある一例を出して、モーゲージの価格決定の難しさを説明する。ベアー・スターンズが組成したAlt-A Trust 2006-2007という債券がある。これは平均金額45万ドルのAlt-Aと呼ばれるモーゲージ2,871契約をパッケージにし、幾つかのレイヤーに分けたものだ。Alt-Aというのは、サブプライムより質は良いが、プライムな住宅ローンよりは信用度合いが低い住宅ローンだ。Alt-Aでは住宅ローン実行会社は債務者の所得証明などを求めていないので「うそつきローン」とも呼ばれている。

この2,871の住宅ローンの内既に778件は完済されるか競売に付され回収された。残る2,093の内23%が返済遅延に陥っているか競売途中である。発効当時AAAに格付された最上級のトランシェも既にジャンクボンド並みに格下されている。

これはモーゲージ債券の中で比較的簡単なものだが、この債券(債権)が買取機構に持ち込まれた時、どのように価格をつけるのか?というのが大きなっ問題になっている。一つ一つのモーゲージの値段を出すことは、可能なのだろうか?今米国では家を売ろうにも価格が折り合わず売るに売れない人が沢山いる。これらの人は「政府機関が高い値段で、モーゲージ債権を買うということは金融機関に対する贈与だ」と憤慨するだろう。

一方バーナンキ連銀議長は「買取機構は『投売り価格でモーゲージ債権を買うのではなく長期投資ベースで価格を決めるべきだ」と証言している。だが現在の妥当な価格がはっきりしないとすれば、何をもって長期投資ベースで妥当な価格か?ということは決めにくいだろう。上記のように比較的簡単なモーゲージ債券でもこのような状態だから、複数のモーゲージ債券を組み込んだCLOなどになると、価格決定は極めて困難だ。

この問題にウオール・ストリートとワシントンの知恵者達はどのように応えていくのだろうか?これが当面の課題だ。

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