金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

貧富のドップラー効果

2008年09月03日 | うんちく・小ネタ

「ドップラー効果」の例として良く使われるのが通り過ぎる救急車の例だ。救急車が接近してくる時はサイレンの音が高く聞こえ、遠ざかる時はサイレンの音が低く聞こえる。このように音波や電波の発生源と観測者の相対的な速度の違いにより、周波数が異なって観察されることを「ドップラー効果」という。

ニューヨーク・タイムズのコラムニストが次のようなことを書いていた。「アメリカ人を所得の多寡で半分に分けると、下半分の層の所得格差は過去何十年の間安定している。しかし上半分の層の所得格差は非常に拡大している。それは私(コラムニスト)が、経済の赤色シフトと呼ぶものだ」

赤色シフトは「光のドップラー効果」で、遠ざかる光源は赤っぽく見え、近づく光源は青っぽく見えるというものだ。所得区分で上半分に入る層でも下の方の人から見るとトップレベルの人の所得の伸びはもの凄く、どんどん引き離されていくと感覚を持つ。これを経済の赤色シフトとこのコラムニストは呼んでいる。

そしてこの感覚を持つ人々、典型的にはプロフェッショナルと呼ばれる専門職の人々は自分が所得のスペクトラムの中で取り残されることを恐れ、休日も返上して働いているのが今のアメリカである。

日本でも投資銀行に勤める人やゲームソフトの開発に携わる人の中にはかなり高給を貰っている人がいる。この人達は経済の赤色シフトを感じているだろう。しかし私は日本では経済の青色シフトを感じる人が増えているのではないか?と懸念している。「経済の青色シフト」は私の造語で、所得が低下して低いレベルに安定する奇妙な安定感を指している。

例えば厳しいノルマや社内の競争に嫌気がさし、給料が低くても楽な仕事を選ぶ・・・などというのが青色シフトだ。

ところで年に1,2度位、完全にリタイヤした銀行の大先輩達と明治神宮などに野鳥の観察に行きその後軽く一杯やることがある。大先輩の中には社長・副社長を勤めた人もいるのだが、お勘定は100円単位まできっちり割勘にしているので面白いと感じたことがあった。無論誰かが大目に払う理由は何一つないのだが、現役時代の所得格差や羽振りの良さを思うと違和感を感じないこともない。しかし退職して年金暮らしをするということは皆が青色シフトをすることだと考えると理解し易いかもしれない。

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Deep pocket (イディオム・シリーズ)

2008年09月03日 | 英語

Deep pocket「深いポケット」はアメリカの俗語で、元々は「豊富な資金を持つ」という意味で企業を形容する言葉だが、ビル・ゲーツのような大金持ちにも使われるとオンラインのThe free dictionaryに書いてあった。本来の意味からすると少し大袈裟だが、次の文章がニューヨーク・タイムズに出ていた。

Business that depend on deep-pocketed consumers also rose, as investors hoped that an easing in energy prices would encourage Americans to spend more freely.

「裕福な消費者に依存している業種(の株)も又上昇した。何故なら投資家はエネルギー価格の低下によりアメリカ人がより自由に消費できるようになると希望するからだ」

この記事はクルド・オイルの先物が5ヶ月振りに1バレル105ドルまで低下して、一時株価が大きく上昇した9月2日のニューヨーク市場に関する説明だ。(ダウ平均はその後資源株の下落でマイナスになった)

大金持ちの消費性向は、景気に余り影響されないから、ここでいうDeep pocketは小金持ち程度の意味だろう。景気の悪化で贅沢品の消費が鈍っている例では同じ日のニューヨーク・タイムズにボストンでロブスターの消費が落ちて値段が下がっているという話が出ていた。ロブスターはボストンの夏の名物だが、消費者は財布の紐を締めて今年は余りロブスターを買わないからだ。このためロブスターの漁師は燃料代の上昇とロブスター価格の下落の挟み撃ちにあっている。原油高が経済活動に打撃を与えている一例だ。

コメント (1)
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