今日(9月24日)の東京株式市場は少し値を下げてスタートした。三菱UFJも10円程値を下げている。その中で野村の株価は50円程上げている。市場は野村がリーマン・ブラザースのアジア・欧州のオペレーションを買収することを評価しているのだろう。(株価には需給など様々な要素で形成されるので断言はできないが)
さて米国の大富豪バフェット氏率いるバークシャー・ハザウエィがゴールドマンに50億ドルの出資を決めたことで、投資銀行3社への主な出資者の顔ぶれがそろった。それぞれに出資目的が異なるので誰が一番賢い投資を行ったか判断するのは簡単でないが、私なりに評価を下して見よう。
まずバークシャー・ハザウエィの場合は純投資目的なので投資利回りの測定は簡単だ。同社はゴールドマンの優先株を50億ドル購入し、さらに50億ドルの普通株を行使価格115ドル(ゴールドマンの現在の株価は125ドル)で購入するワラントを取得。優先株の利回りは10%だ。またゴールドマンは優先株を随時買い戻すことができるが、その場合10%のプレミアムを支払う必要がある。
三菱UFJのモルガン・スタンレーへの出資は最大20%で85億ドルと言われているが詳細は交渉中だ。また取締役を一人送ることが決まっているようだ。投資銀行のノウハウの移転については今後の決め事だろう。
野村はリーマン・ブラザースのオペレーションつまり勤務員を引き継ぐが、資産・負債は引き継がない。購入金額は未発表だが数百億円。つまり三菱UFJに較べると一桁小さい。野村はリーマンの勤務員を受け継ぐことでオペレーション・ノウハウと顧客へのアプローチを手に入れることが出来るが問題も抱える。それはリーマンの従業員の処遇だ。処遇が悪くなると優秀な従業員は他の銀行に転職してしまい、出来の悪い社員だけが残ってしまう。しかしリーマン系列の処遇が同じ仕事をする野村プロパーの社員の処遇より著しく高いと野村プロパーの不満が高まる。権限をどこまで委譲できるかという問題もあり、リーマンの買収を成功させるのは簡単ではない。成功すれば見返りは大きいが。
三菱UFJは純投資と政策投資の二股を狙ったのだろう。しかし二兎を狙って成功するかどうかは不明だ。モルガン・スタンレーの投資銀行ノウハウは、知識の問題ではなく、その基盤にあるリスクとハイリターンを選好する企業哲学の問題である。ノウハウを受け入れるには自らの中にリスクを許容する風土があるかどうかに関わる。
以上をまとめるとバフェット氏の投資が投資としては最も確実(アップサイドも少ない)で、野村の投資は最も戦略的だが、リターンは不明。三菱UFJは狙いが今一つ見えないというのが現時点での私の印象だ。