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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

UBSのトップ、安易な融資に警告

2007年06月20日 | 金融

19日付のFTはスイスの大手銀行UBSのトップ・Wuffli氏が「投資銀行が行っている危険なローンが増加していて将来訴訟に発展し、評判を悪化させる可能性がある」と警告していると報じている。Wuffli氏はFTのインタビューに答えたものだが、彼の警告は投資家・銀行家・規制当局からの一連の警告の中で一番新しいものだ。

危険なローンの一つの典型は今年特に流行している"Cov-lite"というローンだ。CovはCovenantでLiteはライトビール(軽いビール)のライトで「軽い」ということ。つまり財務制限条項が緩いローンのことだ。

財務制限条項とは一定の財務的制限、例えばデッド・サービス・カバレッジ・レシオ(元利金返済前キャッシュフロー÷元利金返済額)を維持するというものだ。金銭消費貸借契約に財務制限条項が付くことが、かっては欧米のローンと日本のローンの最大の違いであり、欧米のローンの安全性を高めていた。ところが財務制限条項を緩めるということは、借り手により多くの債務を取り入れる自由を認めることになるので、ローンの安全性は低下する訳だ。

Cov-liteローンの明確な定義があるのかどうか知らないが(恐らくないが)、S&Pは「財務条項のトリガーについて入り口の制限のみで、ローン実行後の制限はない」財務制限条項がついているものをCov-liteローンと定義してはどうだと提案している。

またS&PによるとCov-liteローンの回収率は伝統的なローンより1割低いということだ。

世界的大手銀行が貸出基準を緩和し、安全性の低いローンを実行している背景は資金供給サイドではプライベート・エクイティとの競争があるからだ。また買収ファイナンス等で資金を取り入れる方も貸出基準の緩和を求めている。

ところで今となっては追憶話になるが、80年代の後半頃邦銀が米国でまだプレゼンスがあった頃、日本国内と同様不動産担保融資に力を入れた銀行があった。そしてその反面その銀行は「無担保融資であるコベナンツによる貸出」を危険なものと判断して企業与信に余り組まなかった。

結果は数年後に出た。不況がアメリカを襲い、ホテルなど担保に取った不動産からの収益は下がり元利金の遅延が多発した。しかしノンリコース・ローンであったため銀行は借り手の一般財産に請求することは出来ず、担保不動産を安い価格で処分せざるを得なかった。一方不況になってもコベナンツの縛りで一般企業融資は不動産融資ほどダメージは受けなかった。

どうしてこの様な間違いを犯したのだろうか?それについて私は「日本の銀行員はローマ史を勉強していないからだ」と考えている。ローマの歴史を勉強すると「担保付貸出」と「無担保貸出」に対する西洋人の考え方が分かる。担保付貸出は奴隷への貸出と言われた。つまり担保があれば奴隷でも金を借りることが出来、債務不履行になっても担保処分をされるだけでそれ以上の罰則はなかった。一方無担保貸出は貴族への貸出と言われた。債務の不履行は貴族社会での信用失墜につながったので、債務者は必死に履行を行ったのである。

このことを知っていたならば、財務制限条項付の無担保融資が不動産担保融資より安全であることが分かっただろうがどういうものだろうか?

尽きるところ金融力のベースは高度な教養Liberal Artsなのだが、現在の日本では余り重視されないものの一つである。日本の金融機関が世界に伍していけない理由の一つはここにあるのかもしれない。

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日本株、バリュー投資の季節

2007年06月19日 | 株式

今日のファイナンシャルタイムズ(FT)は外人投資家の日本株買いが継続的に増えていることを記事にしている。このことは東京証券取引所等が既にリリースしていることで特段目新しい話ではない。念のためデータを書いておくと1990年には僅か4.7%だった外人投資家のシェアは2006年26%にそして今年3月には28%に増加している。この1年で個人投資家のシェアは1%下がり18.1%になっているので「個人の日本株売り・外人の日本株買い」という構図だ。

投資の観点から注目しておくべきことは外人投資家の日本株買いの短期的影響と長期的影響だろう。FTは外人投資家が日本株を買っている理由を3つあげている。

  • 日本の景気回復期待
  • アンダーパフォーム株の反騰
  • 経営陣に圧力をかけて増配させ、自己資本利益率(ROE)を改善させる

余談だが増配を求めるの原文はsqueezing out higher dividentsである。squeezeは野球のスクイズで有名だろうが、圧搾するという意味だ。果物を果汁を搾り出す時にも使う。外人投資家が日本企業に圧力をかけて配当を絞りだしている様子が浮かんで面白い。

FTによるとUBSの日本株ヘッドのハンター氏は「ヴァリュー投資家が日本株の購入を進めているのが注目点だ」といっている。このことから敷衍して短期的な予想を立てると「株価が企業の本源的価値を下回っている株」つまり割安株、英語でいうとヴァリュー株に妙味があると見ているプロの投資家が多いということだ。注目しておいて良いところだろう。

長期的に見ると西洋スタイルの資本主義が日本に定着していくと考えるべきである。つまりROAと株主価値を重視した経営である。このことを敷衍すれば次のことが見えてくる。

  • 利益率の低い会社が合併・倒産等で淘汰され、過当競争が緩和される。その結果材料費等コストの製品価格転嫁が進み、物価上昇につながる。
  • しかしこのことは弱小企業の倒産が増えることを意味する。弱小企業への融資に固執している金融機関は思わぬ痛手を被る可能性がある。
  • ROAの低い企業が淘汰されることで株式の配当利回りが欧米水準に近づいて行く。つまり配当目的で株式を長期保有する投資家が有利になってくる。

企業価値を高めることより、目先の買収防衛策に注力する様な経営者が淘汰される日は意外に近いかもしれない。しかしそのことでマイナスの影響を受ける人よりもプラスの影響を受ける人が多いと私は考えているが如何なものだろうか?

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米国預託証券投資の実際

2007年06月18日 | 株式

週末の日経新聞に米国預託証券投資の話が出ていた。まだ預託証券に投資していない人で興味を持った人もいると思うので私の経験を踏まえてより具体的な説明をしたい。

米国預託証券とは?】American Depositary Receiptの訳語。略称ADR。米国外の企業が米国で資金調達を目的に発行する譲渡可能な証券で、自国で発行する株式(原株)を預託銀行に信託し、原株とほぼ同じ権利を付与したもの。米ドル建てで取引され配当も米ドルで支払われる。詳しい情報を知りたい人はこちらへ。英文だがシティバンクがADRについて詳しく説明している。http://wwss.citissb.com/adr/www/faqs/index.htm

どんな会社がADRを発行しているの?】国際的に知名度の高い会社が多い。日本ではキャノンや三菱UFJファイナンシャルなどがADRを発行している。インド企業ではインド最大の民間銀行ICICIバンク、情報産業2位のインフォシス、タタ自動車などがADRを発行している。発行企業は米国会計基準に基づく決算内容の開示が求められるので発行会社のディスクロは信頼できる。

どこで購入することができるの?】岡三証券・東海東京証券・楽天証券などで購入することができる。私はたまたま仕事でお付き合いのあった岡三証券を利用したが手数料はネット証券の楽天証券が安いといわれている。

どれ位の資金で購入できるの?】私はインフォシスのADRを買ったが、岡三証券の最低購入単位は100ADRだった。1ADRが60ドル程度(当たり前のことだが刻一刻値段は変わる)だったので、60ドル×100×120円(為替レート・当時)=72万円。投資金額は購入するADRの価格によってことなるが、50万円から100万円位が目安だろう。

ADRの値段を調べるには?】取引証券会社に聞けば教えてくれるだろうが、インターネットを使って無料で調べることもできる。ウオール・ストリート・ジャーナルのホームページを開き(アドレスバーにwww.wsj.com と入力してEnterキーを押す)、Market Data Centerというタブを開き、値段を調べたい会社の名前を入力すると価格や簡単なチャート、企業情報を入手することができる。

ADR投資って儲かるの?】それが分かれば苦労はない。普通の株式投資と同じで、儲かる時は儲かるし損をする時は損をする。ADRや新興市場国の株式投資がいかにも儲かる様に書き立てているホームページを見ることがあるが要注意だろう。なお投資リスクは原株の価格変動リスクに加えてドル・円為替リスクも存在する。

ではどうしてADR投資をするの?】インドなど新興国の一流企業の株式(に近いもの)を保有できる。ちなみに一般の外国人がインドの株式市場で原株を購入することはできない。長期投資で新興国の経済成長のおこぼれを頂戴するにはその国の代表的企業に株式投資をするのが良いからだ。ADRを購入することで英文で企業情報や業界情報を読むので、語学力が付きぼけ防止になるという副次効果がある。

たとえば今インフォシスは好調な企業業績にも係わらず若干株価は低迷している。これは米国の景気が後退すると米国企業からインドのIT産業へのアウトソース額が減るのでないか?という予想が働いているからだ。一つの銘柄を通じて世界経済の動きが見えてくるので視野が広がるというものだ。

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夜空の切子グラス

2007年06月17日 | 写真

夜私の家の2階から田無タワーのてっぺんを見ると紫色の切子グラスの様に輝いている。田無タワーのライトアップは翌日の天気予報に合わせて変えている。紫色が晴、黄緑色が曇、青色が雨だ。

昨日のライトアップはきれいな紫色だった。2階の窓に望遠レンズを据えて写真を撮ってみた。

Tower1

上の写真は露出1/10秒、ホワイトバランス6000k(曇天)で撮影したものだ。青色が目で見たよりも強く出ている。

Tower2

上の写真は露出1/8、ホワイトバランス7500k(晴天の日陰)で撮ったもので目で見た感じよりも白っぽく写っている。

Tower3

上の写真は露出1/10秒、ホワイトバランス5300k(晴天の屋外、花火を取る時)で撮ったもので一番見た感じに近くなった。

この夜色々カメラの設定を変えてライトアップの紫色を再現しようとしたが満足の行く結果は出なかった。理由は3つ考えられる。「腕が良くない(露出やホワイトバランスの設定が十分でない)」「カメラの色再現能力が低い」「そもそもライトアップは橙色と青色を合成して紫色に作り出しているが、人が肉眼を通じてとらえる色とカメラが分析的にとらえる色では異なる」

さあどういうものだろうか?

夜空に浮かぶ紫色の切子グラスの再現は簡単ではない。

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あじさいとトンカツ

2007年06月16日 | まち歩き

あじさいとトンカツの間に一般的な関係はない。しかし特定の条件の下では中々良い関係がある。それは鶴ヶ島方面のあじさいの季節のオモシロスポットだということだ。

6月15日土曜日入梅最初の土曜日だが凄い素晴らしい快晴だ。前日麻雀で遅くなったワイフが前から行きたがっていた日高市のサイボクガーデンhttp://www.saiboku.co.jp/asobu/park.htmlに行くことにする。こういう時は多少しんどくてもがんばらなければいけない。サイボクガーデンというのはサイボクハムというこの町のハム屋さんが経営しているレストラン・売店などの複合施設である。美味しい豚肉でも食べるとスタミナが回復するかもしれない。

サイボクハムだけでは半日ドライブに物足りないので少し先の越生に「あじさい山公園」のあじさいを見に行ってからサイボクにまわることにした。

あじさい山公園の住所は埼玉県入間郡越生町麦原である。越生は関越鶴ヶ島ICから西に10km程のところ。あじさい山公園にバスで行くと1時間程歩かなければならないが、結構歩いている人が多いのには驚く。公園手前に無料の公共駐車場があるが、私は一番奥まで行って400円の駐車料金を払った。

さて肝心のあじさいの方だが、入梅が遅いせいか花はあまり咲いていない。咲いている花も白っぽく鮮やかさが出ている花は本当に少なかった。

Ajisai2

あじさいの花の詩情を写すには雨上がりでなくてはいけない。例えば雨上がりの古刹の石段に咲くあじさいを撮ってみたいが中々チャンスがない。

あじさい山公園のメインストリートを少しはずれた小道を歩いていると目の前を雉が走った。カメラを構える前にあじさいの茂みの中に消えていったが、野生の雉を見たのは初めてである。越生あたりまでくると山深いのだ。

雉が消えたあじさいの群生をカメラに収めて越生を後にした。

Ajisai1

さてサイボクガーデン。ここは1千台近い駐車場があるが相当混んでいた。家族連れが多い。まずレストランに行きワイフはトンカツ、私はスパイシーグリルを食べた。スパイシーグリルというのは胡椒とカレー味のする少しピリ辛系の味だ。二人で三千円也。高くないところが良い。高くないというと豚肉・ハム直売所や地元で取れた農産物直売所も新鮮で質の高い食材を極めて手頃な値段で提供しているところが良い。

Saiboku

パンフレットや案内についている豚さんの絵も可愛らしい。なお今回は入らなかったがガーデン内には日帰り温泉もある。トンカツを食べて温泉に入り一週間分の肉やお野菜を買って帰ると納得の週末を過ごすことができそうだ。

なおサイボク製品はクイーンズ伊勢丹など東京でも取り扱っている食料品店が拡大している。応援したくなる良いお店である。

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