金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国はインフレも輸出するか?

2007年06月13日 | 社会・経済

中国で物価上昇が進行している。5月のインフレ率は3.4%に達した。これは3ヶ月連続の上昇で、中央銀行が「快適なレンジ」としている3%を上回っている。3.4%というインフレ率は1年の預金金利3.06%を上回っている。

中国政府は伝統的にインフレを警戒している。それはインフレが貯蓄に影響を与えるばかりか、固定収入で暮らしている人々の生活に悪影響を及ぼすからである。80年代後半にはインフレに怒りを覚えた学生達が政治騒動を引き起こした。

中国のインフレというともう10年以上も前のことだが、当時まだあった北京の事務所を訪問した時、事務所の車の運転手さんから秘密だけどと言って教えて貰ったことがあった。それは「政府は著しく値上がりしている商品があるとその商品を物価指数のバスケットからこっそり外している」ということだ。これが事実かどうか確かめる術はなかったが、もし卵の値段が異常に上がっているとすると卵を物価統計から外すといったことをしているという噂があったのは事実だ。

最近の中国はこの様な統計操作はしないのか、あるいは主要産品である豚肉の値段を物価統計から外すことは出来ない故かはしらないが、ファイナンシャルタイムズによると、今インフレを牽引しているのは豚肉である。中国の物価指数の3分の1は食品価格が構成するが、その食品価格が5月には8.3%上昇している。卵の値段も上がっているが最大の原因は豚肉にある。昨年は豚肉の値段が安く、飼料が高かったので農家が豚の生産を抑えたことが要因の一つだ。しかし最大の原因は病気のため数百万頭の豚が死んだことだ。

豚肉の値段が上昇したことで、農家は増産体制に入っているので豚肉の値段は安定に向かうと言われている。

しかし中国の物価は高止まりすると見ておいた方が良い。既に食料品の上昇により賃金が平均して15%程上昇している。今のところ賃金の上昇は生産性の向上と利益率の減少で吸収されているが、数四半期後には輸出品価格に転嫁されるのではないかといわれている。

世界の工場である中国がインフレを輸出し始めると世界経済に大きな影響を与える。では中国政府が物価抑制のために金利引き上げを行うかどうかというと専門家筋でも読み難いそうだ。ひょっとした中国政府のインフレ防止策の不透明感が先進諸国の長期金利上昇につながっているという見方もできるかもしれない。

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長期金利上昇の一つの背景

2007年06月13日 | 金融

今朝(6月13日)日本の10年物新発国債の利回りが1.98%をつけた。これは2006年7月のゼロ金利政策解除後の最高利回りだ。日本の長期金利は海外の長期金利高の影響を受けて上昇を続けている。この動きと今後の予測には海外の金利高の背景の理解が欠かせない。

米国の10年国債の利回りは昨日5.27%まで上昇した。これは2002年5月以降一番高い利回りである。また米国では昨年6月から長短金利が逆転する逆イールドが続いていたが、昨日の金利上昇で10年国債利回りが初めて短期金利(フェド・ファンドレート)を上回った。

余談だが昨日ある外人と酒を飲んでいた時、米国の長期金利上昇の話題になった。その外人(仮にマイケルとしておこう)は不動産業者向け貸金業をやっているので、金利には敏感なのだ。「マイケル、金利が上昇しているがどこまで上がるかなぁ」「僕は6%まで上昇すると思うよ」「ということは後0.75%か。でも昔から大統領選挙の前には長期金利は下がるという傾向があるが・・・」「選挙は来年だ。それまでに一回上がってまた下がるかもしれない」

ところで欧州でも国債利回りは数年ぶりに高いレベルに達しているが、この背景は何だろう?一つは世界経済の順調な発展とインフレ懸念の台頭だ。これについては別の機会に論じよう。ここでは「中国などの海外投資家が米国債をこのレベルで買わなくなった」ことが金利上昇を招いているという分析を紹介しよう。

元々この動きについて私はかなり注目して、このブログの中でも述べているが、昨日のファイナンシャルタイムズ(FT)に記事があったので引用しよう。

外国勢、例えば中国の中央銀行の米国債買いがここ数年金利を押し下げてきた。しかし中国は大手プライベート・エクイティ会社ブラック・ストーンに出資することを発表するなど資産の分散化を始めた。

無論中国が国家資産基金を使ってプライベート・エクイティに投資をするといっても、その金額が直ちに米国債市場にインパクトを与えるものではない。しかし市場は投資家の行動を先読みするものである。つまり米国債は投資家の旺盛な買い意欲により実勢より買い進まれていたとすると、これからそのプレミアムがはげる時と考えられる。

ではそのプレミアムがどれ位かというとIMFは30BPから100BPと推計している。つまりプレミアムが剥げると金利は0.3%から1%位上昇するということだ。こうなると米国の10年国債の利回りが6%に達するということは十分ありうることだ。

しかし長期金利の上昇は住宅ローン金利の上昇につながり、住宅市場の冷え込みを招く。米国最大手のモーゲージ・バンク・カントリーワイドは5月までの1年間で競売件数の前年の倍になったと報じた。高い金利は景気の減速を招き、景気の減速は金利の引き下げを促す。米国にとって現在の金利水準がすわり心地の良いところかどうかの判断をする正念場になってきた。

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