資産を証券化するビジネスが投資銀行の大きな収益源になりだした。といってもこれは欧米の話で日本の話ではない。日本では銀行と証券の垣根論争を延々とやっている間に世界ははるかに進んでいる。
JPモルガンのレポートによると、2006年に全世界ベースで資産担保証券ビジネスによる収入は300億ドルになった。これは株式デリバティブまたは生(なま)株取引による収入に匹敵する。
ファイナンシャルタイムスによると、欧州でこの分野をリードするのはドイツ銀行とクレディスイスでグループの税前利益の約1割を証券化ビジネスが稼いでいる。証券化ビジネスが伸びている理由は需要と供給両面にニーズが高いからだ。供給サイドつまり銀行側は貸出リスクを資本市場に引き受けさせたいし、投資家はより利回りの高い証券を求めているからだ。
モルガンのレポートによると証券化市場は2000年の5千億ドルから昨年の3兆ドルに拡大している。証券化の77%は米国で組成され米国の投資銀行は199億ドル稼ぎ、欧州の投資銀行は75億ドル稼いでいる。
ということは欧米以外つまり日本やアジアの証券化ビジネスの収益は26億ドル程度と全世界の1割にも満たない。その大きな理由は日本の多くの銀行が伝統的な貸出債権を帳簿に載せて、僅かな利鞘を稼ぐことに固執しているからだと考えられる。
だが利益率の点からみると証券化ビジネスの収益性はきわめて高い。モルガンのレポートは最大手投資銀行のコスト・収益比率は50-55%で、平均的な投資銀行業務のコスト・収益比率70%を上回るという。
先程日本の多くの銀行が伝統的な貸出業務に固執しているといったが、今後見込まれるの金利上昇が証券化ビジネスを加速する可能性があると私は見ている。ただ手数料競争が激しい日本で欧州並の収益を上げることは難しいだろうが、セキュリタイゼーションが出来る銀行・証券が収益面で優位に立つことは間違いない。証券化が進むと、ストラクチャーと引受・販売を行う巨大投資銀行(ユニバーサルバンク化したとしての話)と各地にローコストで展開するモーゲージバンカーのようなオリジネーターのネットワークが出来て、地域金融機関等の貸出市場を侵食するという構図が予想される。