金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

銀行の看板にいつわりあり

2007年06月08日 | 金融

「銀行の看板にいつわりあり」というと、少しキワモノ的な話に聞こえるかもしれないがそんな意図はない。ただ銀行の収益が銀行業務以外から得る割合が多くなったといっている訳である。これはたとえば○○時計などという会社の主な売り上げが電子部品で、時計の売り上げは数%という様なものである。

無論銀行の業務は銀行法に基づく認可業務であるから、銀行の収益が銀行業務以外からあがるというのは正確な表現ではない。銀行は銀行業務として認められたことしかしてはいけないのである。従って正確にいうと銀行は企業貸付など伝統的な銀行業務以外で稼ぐ割合が多くなったということである。

では銀行が稼いでいる新しい業務は何かというと「個人ローン」や「投信の販売」などであり、個人業務で稼いでいる様にみえる。しかし切り口を変えると銀行が稼いでいるのは「資本市場に係わる業務」という見方ができる。例えば投資信託を例に考えてみよう。

投資信託は株式や債券などの有価証券に集団で投資するスキームで、「運用者」(委託会社)と販売会社(銀行・証券会社など)が目に付くプレーヤーである。これらに比べると地味だが、受託者(信託銀行)も重要な役割を担っている。

大手銀行(正確にいうと銀行を傘下におく持ち株会社を含めて)は、投資信託の入り口つまり運用者と出口つまり販売会社の双方で美味しい思いをしている訳だ。これを持って私は銀行は「資本市場に係わる業務」の稼ぎで伝統的貸出業務による稼ぎの低下を補っていると見ている。なお住宅ローンについてもローンを証券化して資本市場に売却して利益を得ているから、資本市場に係わる業務という見方もできる訳だ。

ところで三井トラストホールディングスという銀行がある。この銀行が最近発表したところでは、孫会社の中央三井アセットマネジメントと言う会社と中央三井キャピタルという会社を直接の子会社にした。愚念ながらこれはホームページに出ている公開情報だ。因みにこの処置で三井トラストホールディングスは二つに信託銀行と二つの会社を傘下に持つことになる。

ここで私が着目した点は「アセットマネジメント」と「キャピタル」という会社が資本市場にかかわる業務を担っている点だ。「アセットマネジメント」は投信委託会社であり、「キャピタル」はベンチャーキャピタル会社である。つまり三井トラストホールディングスはこれから「資本市場(キャピタルマーケット)に係わるビジネスを中核に据えますよ」というメッセージを投資家に送っている訳だ。

それにしてもこの会社は横文字で名前をつけることが好きな会社だ。ホールディングスとかアセットマネジメントだとかやたら横文字が多いが、私はこれは少しコケオドシ的だと見ている。我々の周りにも日本語で言えば済むことでも兎角英語で(しかも時に不正確な英語で)話す人がいる。いかにも自分が英語が達者だいわんばかりだが、本当にできる人は余りこういうことはしないものだという話を聞いたことがある。

私のワイフは一応大学の英文科を出て数年外国で暮らしたこともあるのだが、ワイフにしてアセットマネジメントという言葉の意味を良く理解していなかった。アセットAssetは資産でマネジメントManagementは管理だが、アセットマネジメントというと集団投資スキームによる有価証券運用を指す。もっと平たくいうと投信運用である。ワイフの出来不出来は別として、ご高齢の方などアセットマネジメントという言葉を正確に理解されない方がいることは容易に想像できるところだ。国内専門銀行の三井トラストのような銀行がどうして平易な日本語を使わないのかと、私は疑問に感じている。

話がそれたが、結論をいうと銀行は(伝統的な)銀行でなくなることにより収益を稼いでいる。それ自体は悪いことではない。既に述べた様に多くの事業会社は一般の人がその名前から想像するものとは違う製品で稼いでいることも多い。

投資家の観点からいうと、銀行の看板にいつわりのある銀行の方が面白みがあるかもしれない。

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