政府は外資系企業の地域本部を誘致するため、外資系企業に国内企業を大きく上回る税制優遇措置を与えることを決めた。ファイナンシャル・タイムズはこのニュースを大きく取り上げていた(邦字新聞では気がつかなかった。見落としかもしれないが)
それによると、経済産業省の寺澤達也経済政策課長は「日本史上初めて外資誘致のため、税制面の優遇措置を与えた」ということで、日本に地域本部や研究センターを設置する外資は5年間課税所得の2割を控除することができる。税金面の優遇を受けるには、新しい地域本部は最低他の2カ国のオペレーションを傘下に置き、1億円の資本金が求められる。
この優遇税制と来年度の法人税の5%減額を合わせると、税制適格の外資系企業の税率は20.4%から28.5%となる。
政府の狙いは、アジアの地域本部として台頭するシンガポールや中国に対抗するため、税金を優遇して外資誘致を図ろうというものだ。当局はこれにより来年度15の地域本部と研究センターの誘致を予想している。
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財政赤字と税収不足の中、政府はずいぶん思い切った外資優遇措置を打ち出したものである。狙いは雇用の拡大など経済の活性化なのだろうが、本当に狙い通りに行くのだろうか?
仮に外資系地域本部が日本に設置されたとして、そこで使われる言葉は当然英語を中心とした外国語。高い言語能力、専門スキル、交渉能力等が求められる。外資系企業が日本人を採用するという保証はどこにもない。少なくとも今就職戦線で苦労している新卒者に雇用機会が回ってくるとは思い難い。日本で勉強した優秀な外国人留学生を採用する方が手っ取り早いという判断もあるからだ。
そんな不安定な外資を頼むより、日本企業に雇用を高めるインセンティブを与える方法はないのだろうか?
国内で税金を取りやすい個人から取り、一部の外資系企業を優遇するという政策は本当に国のためになる政策なのだろうか?そんなに外資頼みが好きなら、政府の高官を世銀からの派遣に替えた方が効率的な政治と行政が行なえるかもしれない。