先進国の国債金利が正常化に向けて上昇し始めたということは、前回のエントリーで書いた。今回の話題はジャンク・ボンドの金利が落ち着きだしているという話。
FTによると今年の米国ジャンクボンドへの投資パフォーマンスは非常に良好で金投資に次ぐ15%というリターンを上げた。記事についているグラフを見ると2008年から09年にかけてハイイールド債の利回りは21%、ハイイールドローンのスプレッドは20%近くに上昇し、今年は6%程度に低下している。(バンカメ・メリルインデックスによると、米国のハイイールド債券のリスクフリー金利に対するウプレッドは568bpで07年の241bpに較べるとまだかなり高い水準にある。)昨年ハイイールド債を仕込んでおけば、相当なキャピタルゲインを得ることができるから15%という眼がくらむようなリターンもレバタラ話ではない。
昨年のアイイールド債の利回り急上昇はデフォルト率の高さを反映している。08年のデフォルト率はFTのグラフによると、ハイイールド債で2%強、ハイイールドローンで4%弱。それが09年には各々10%、13%弱に急増した。今年は再び低下して、債券のデフォルト率は1%弱、ローンのそれは2%に低下している。因みに来年、再来年も横ばいから少し高い程度のデフォルト率で推移する予想だ。
社債市場が非常に効率的であるとすれば、投資適格債券への投資リターンとハイイールド債券への投資リターンは本来収束するはずだ(流動性とか担保適格性の問題があるから、投資適格債券のリターンの方が低いはずだが)。つまりクーポン利回りからデフォルト時の損失予定額を引いた期待利回りは、信用リスクのスペクトルを通じて余り差がないはずである。
ハイイールド債券の今年の高い利回りは昨年の不況時にリスクを取った投資家への褒美である。無論リーマンショック前に低い金利でハイイールド債券を買った人は手痛い損失を蒙ったが。
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日本で金融周辺業務を行なっている立場からいうと、二桁の信用スプレッドは言うに及ばず、4,5%のスプレッドでも羨ましい限りである。もっとも日本では米国ほどデフォルト率は高くない(少なくとも表面上は)ので高い信用スプレッドは正当化されないとしても、現在のスプレッドの低さは貸し手の過当競争の産物である。
力のある日本の金融機関が投融資の水平線を海外に広げることで、国内の過当競争が緩和されると信用コスト面の正常化が図られると思うのだが・・・・
この当りで信用コストの正常化を図る努力をしないと、金融円滑化法に蓋されたリスクが暴発する日が懸念される。