「大人の見識」 阿川弘之著 (新潮新書) 定価:680円
【この本を読んだ理由】
新潮新書話題作という文句に惹かれて・・・。
【読後感】
この本の帯に大きな文字で書かれた次の文句、チョッと気になった。
『軽躁なる日本人へ』
これについては、この本の本文の一番最初に説明があった。
『日本人の国民性を一言で言い表すと・・・・?
世界中の人が多分すぐ思い浮かべるのが、「勤勉」、「几帳面」、それと並んで、残念ながら「軽躁」も、・・・・・・・・
字引で引くと、「落ち着きがなく、軽々しく騒ぐこと」とある。・・・・・・
何かあるとわっと騒ぎ立ち、しばらくするときれいさっぱり忘れてしまう。熱しやすく、冷めやすい。』
本当に、ごもっともなる解説である。
そして、最後まで読み終わって、この本が気に入った。
この本が述べていることを、著者の“序に代えて”の文中より拾い出してみた。
『最近は、大学生でも受験科目の選択によっては近現代史をほとんど知らないといいますが、日本人だという自覚があるなら、一度自国の歴史をきちんと振り返ってみたらいい。この国にもなかなかの見識をもった人物がいたのが分かるはずです。』
私自身、身につまされる思いがした。
『戦争中、ある意味で日本人は思考停止の状態にありましたが、戦後も逆のかたちで思考停止をやっている。実際は、過去も現在も未来も切れ切れのものではなくて、つながっているんでして、大人の見識を持つためには、良きにつけ悪しきにつけ、その点を見誤らないようにしなくてはいけないでしょう。』
ごもっともなご意見である。
『自分の若い頃からの具体的見聞や読書体験に即して、時代風潮の移り変わり、近代日本の不易と流行について、考え考え話しますから、読者がこれを老文士の個人的懐古談として読んで、自分たちの叡智を育てる参考にして下されば幸いです。』
86歳の著者はこう述べて、最後の『温故知新』まで、全部で8章に亘って熱く語っていた。