夕食は手間のかからないものとして、
アスカの提案で、ミートソースのパスタ
とサラダにパック詰めのハンバーグと
いうことになった。キタジマがミートソースを作り、
残りをファン女が担当することになった。
「パスタはヒラメちゃんのお母様が出てきてから、
最後にゆであげれば、いいわ。
3つの鍋を同時に沸騰させて、保温して、
おいておけば、すぐよ。キタジマさんの
ミートソースをかけるだけだから超簡単よ」
自称料理が趣味のアスカが言うと、
「木太郎の分はもちろんいらないわよね。
そこにあるツナ缶食べさせればいいわよ」
ヒラメがチウメをちらっと見て、意地悪そうに言う。
「ヒラメちゃん、そんなに木太郎が嫌いなの」
アユメが尋ねる。ヒラメはバスタオルが
とれた件はみんなには話していないので、
何故、ヒラメがこうも怒るのか
皆はよく理解できなかった。
「いい、風呂を覗くなんて、最低でしょ。
しかも、犯人みたいに逃走したフリをして」
ヒラメはまた同じことを言う。
「うーん、本当に覗く気だったのかしら?
いくら、木太郎さんでもそれほど
バカじゃないでしょ。永久さんの説明を聞かなくても、
あれだけ、露天風呂の周りを見ればわかると思うけどな。
他に理由があったんじゃない」アユメが疑問を投げかける。
チウメも頷く。キタジマが
「木太郎はどうにかみなさんに好かれたい
と思っていたみたいだから、
ワシも覗きが目的だったとは思わんぞ」
とアユメに同調した後、はっと例の
バスタオル事件を思い出し、
「でも、木太郎はバカだからな」
とごまかそうとしたが、変な言い方になってしまい、
ヒラメには木太郎の味方をしているように
しか思えなかった。ヒラメはむくれ気味
になって「みんなあの木太郎に騙されてるのよ。
後で、化けの皮がはがれるわ」と言う。
「覗きなんて、どうでもいいじゃない、
殺人じゃなくて本当良かったわ」アスカは皿や、
サラダの用意に夢中で、投げやりに言う。
「アスカちゃんはスタイルがいいから
そんなこといえるのよ」ヒラメが小声で反論したが、
アスカには聞こえなかったようだ。
アユメがヒラメに「なんかありましたの?」
と鋭いつっこみをすると「いいえ。ありません」
ヒラメはプイと横を向いてしまった。
「なんか、私悪いこと言ってしまったかしら」
と木太郎派のチウメの耳元でささやくと
「多分..ううん。この件はとにかく
ヒラメちゃんの言うことに反論しない方がいいと思うわ」
とアユメの耳元に返答する。
(続く)