佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダー感覚29――よくない心の状態とは

2007-02-18 11:30:01 | リーダーの暗示スキル
 人間を元気にするには、簡単に言えば二つの方法しかない。暗示というのは、このふたつの方法のスキルといえます。今日は暗示の根本にある心の状態をご説明いたしましょう。


「健全な心を取り戻すには」
 心が健全であるということはどういうことかといいますと、一つの感情に固執せず、次々と感情が浮かび上がることです。

 泣いた後には笑える。怒った後には笑えるということです。これが、ずっと泣きっぱなしでは人生は辛い。なかには、一生恨みを抱えて生きている人もいる。それがその人にとっては生きがいなのかもしれません。しかし、心の健全性という面ではどうでしょうか。
 
 ですから、人を元気にするには、固着した感情をほぐして、柔軟な心を取り戻させることがひとつの手段です。感情が固着しているというとわかりにくいですが、ひとつのことに囚われていると考えるとわかりやすいかもしれません。
 
 ひとつの問題に対して、視野を広く柔軟に対処すれば解決法が発見できるかもしれませんが、視野が狭いとなかなかうまい解決法がみつからないものです。先日の新人ドライバーの話もそうですね。視野が狭い人の運転は危なくてしょうがない。
 
 こういうのは、心が過緊張だということです。ひとつのことにとらわれるのは、そのことについて緊張しすぎているということです。そこで、この場合は、緊張をほぐす、あるいは気を抜く必要があります。気分を転換させるとも言えるでしょう。
 
 日露戦争のとき、日本陸軍は満州の沙会(さかい)というところで非常なる苦戦に陥っておりました。参謀本部では朝から会議をやっておりましたが、重苦しい雰囲気がただよっていて、よい案がでない。
 
 そんなとき参謀本部に、昼寝から覚めたらしい満州軍総司令官・大山巌(いわお)がひょっこりやってきた。大山と言う人は、作戦は全部参謀に任せて、自分は上に乗るだけというマネジメントスタイルをとった人でした。
 
 その大山がやってきて言うのです。
「児玉さん(参謀次長)。きょうはどこに戦がごわすかな。昼寝もできんほど大砲(おおづつ)の音がやかましゅうごわすのォ」

 それを聞いた一同、おかしくなって笑いが生まれ、その後会議がはかどったというのです。
 
 今のは大山の有名な逸話ですが、こういう苦しいときにジョークを言って仲間をリラックスさせられれば、リーダーとしては一流でしょうね。

 そこまで行かなくても、会議で意見が対立しているようなときにジョークを交えれば、感情的な対立は消えて、純粋に議論ができるでしょう。落語とかジョークを勉強しているのも、たまには役立つと思います。

 大山さんの例は、意外性ですね。だいたい笑いというのは意外性によって生じることが多いのです。それで笑うことで緊張がほぐれる。

 私の『リーダーの暗示学』では、笑い以外にも転換をはかる例がいろいろあります。いちばんよくやるのが、相手が考えていること相反する事実を指摘することです。これも意外性と言えば、言えないこともない。細かいテクニックは本をお読みください。
 
 さて、心が健全でない状態の二つ目は、心が散漫なことです。あれでもない、これでまないと、あれこれ迷う。迷ってなかなか収斂しない。
 
 これは心が分散しすぎている状態。さきほどは集中しすぎている状態でしたが、こっちは分散しすぎている。
 
 こういう場合には、心を限定させればよい。ひとつのことだけ考えさせるように仕向けるのです。
 
 よくリーダーが言いますね。
「お前は仕事だけやってくれ。結果の責任はおれがとる」

 これも、心を限定させていることといえるでしょう。人間が心を分散させるシチュエーションはいろいろあるでしょうが、結果と行為の両方を考えるというのは、その典型でしょう。これはかなり心が分散します。
 
 これに関しては、機能的に分けるのもひとつの手段です。ホンダの創業者本田さんが言っておりますが、本田さんはものづくりでは天才でしたが、金勘定、金集めは大の苦手。いくらよい製品をつくっても、集金が下手だから金が回収できない。そんなとき藤沢さんといいう人を得て、そちらを担当してもらったから助かったというわけです。

 野球界でも、監督は現場の指揮、フロントは選手の査定と仕事を分けています。これを監督が一人で行ったら辛いです。「あの選手を使うと、あいつの給料を上げようとえこひいきしてるんだ、と言われないかな」などと、余計な配慮をしてしまうかもしれません。
 
 もうひとつ、心が分散しやすいのが、「光があたったとき」です。希望と言ってもよいでしょう。
 
 なにかいいことが起こるとき、人間は必ず不安になるのです。光がさすと影ができるわけです。
 
 たとえば、ものすごくいい仕事が入って来そうになる。どうしてもこの仕事がほしい。そうなると、うちの実績では相手が承諾しないかもしれないなとか、いろいろ不安がわいてくる。希望が強いものほど、影が差す。
 
 もっと、わかりやすい例にしましょうか。
 
 すごくいい女がそばにいて、向こうもその気がありそうだ。「よし、声をかけてみるか」、とふつうはこうなります。

 ところが、思いいれが強すぎると悩みだす。「もし声をかけて断られたらどうしよう」「俺みたいな人間にはとても高嶺の花だ」「断られるにきまってる。そんな恥をかくくらいなら忘れてしまおう」
 
 ああ、光と影!
 
 心は千々に乱れますね。こういうのは私の暗示学では対象外です。私の手にはあまる。該当者は恋愛暗示学者にご相談ください。 


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