S嬢のPC日記

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「障害児のきょうだい児」の恋愛と結婚

2005年05月24日 | 「障害」に関わること
娘がまだ赤ちゃんだった頃に、当時住んでいた地域でのダウン症児の親の会で、先輩のお話を聞く勉強会がありました。
別の地域に居住される、もう、成人された方のおかあさまをお呼びしたのですが。
このときのお話の中で、印象に残るお話がありまして。
障害児の「きょうだい」にあたる長男には、中三のときにきちんと話をした。
あなたの結婚には、姉のことが影響するハンディがあるだろう。
だから、きちんと恋愛できる人間になること、結婚を早めに意識すること、と。
質疑応答の時間に、この話が出ました。
こちらの親の会を中心に回してきた主だったメンバーの方は、まだ小学生の親という立場の頃だったのですが。
「ダウン症のきょうだいがいることで結婚に難癖つけられる相手との結婚は、所詮、きょうだい児の結婚にとってもいいことにはならないんだから、それはそれでいいではないですか」
こうした傾向のことが中心だったと思う。
そのときの講師になった方いわく、「それは理想論だ」と。
現実的に結婚は相手とのことだけでなく、家も関係してくる。
それを乗り越えるだけの「恋愛する力」が、きょうだい児にも必要なのではないか、と。

今ひとつ、納得できない表情をしている人が多い中で、なんかすごく納得したんですよね、わたしは。
まずひとつは、「結婚時のハンディ」ということ。
仮定として、わたしに障害をもつ子どもがいなかったとして、そしてたとえばわたしに弟と妹がいたとしたら。
弟が「障害児のきょうだい児」と結婚したいと言ったら、いかにそのことがハンディになったとしても、「よしオマエが決めたんだから、オマエの人生がんばれ」というだろうなと。
しかし、妹が「障害児のきょうだい児」と結婚したいと言ったら、反対とは言わずとも、「再考を」とは言うだろうなと。
「家」というものは、諸雑事が全て「女」にかかってくる。
結婚することで、成人した「障害のある義きょうだい」に関しての諸雑事は、全てあなたに直接ふりかかってくる可能性は高い。
そのことを冷静に判断して、相手のきょうだいを自分のきょうだいとして、本当に覚悟して受け入れられるのかと。
で、「ああ、確かにハンディはあるなあ」と思った。

それともうひとつ。
所属する親の会の「先輩たち」から口々に出てきた、以下のこと。
「ダウン症のきょうだいがいることで結婚に難癖つけられる相手との結婚は、所詮、きょうだい児の結婚にとってもいいことにはならないんだから、それはそれでいいではないですか」
その発言自体に「んんん???」と、わたし自身はかなり疑問だった。
当時は口には出しませんでしたが。

あのさ。
世の中にはさ。
誰が見ても微笑ましいような恋愛があふれているわけでもないわけです。
どう考えたって、性格的に問題があって、意地悪だったり、イヤなヤツだったりする人間に「惚れちゃいました」ってケースはそこらじゅうにあるわけです。
(まあ、あの相手じゃ苦労もするわな)
と思ったって、極論を言えば、本人が惚れてりゃいいわけです。
周囲に賛成られるか反対されるかということを超えて、「恋愛の自由」というものがあるわけです。
周囲が「ありゃりゃ」と思う相手であったとしても、その相手を選択する自由と責任は、本人にあるわけです。
そうした「自由」が、障害児のきょうだい児ということだけで、間接的に結果的に「親から制限される」ことって、違うんじゃないかと。

極論、なんですけどね。
わたしは、障害児のきょうだい児であるわたしの息子には、障害および障害児・者に対して、差別的侮蔑的視点を持った女性とだって恋愛する権利がある、と思っています。
そのことが彼の人生にどう影響していくかは、まったくもって、彼の問題なわけです。
そこに「親」という立場をもって、堂々と当たり前に、しかも本人のしあわせを確定するように「踏み込む」ことは、違うんではないか、と思うわけです。
恋愛は、まず、当事者のものであるべきだし、その関係の可能性や将来像も、当事者のものであるべきです。
わたしが息子に対してできることは、息子がどんな恋愛を選んだとしても、その恋愛で出てくる問題に対して解決する力を育てる源になる、「人を大事に思う力」と「自尊心」を育てることを意識することだけです。

まあ、今のところ、優しい子に育っておりますのでね、息子。
まあ、なんとかなるんではないかな、と。

先日、笑っちゃうことがありまして。
息子、オノレの手のひらを見つめて、何か、考え事をしているようにぼーっとしていまして。
「どうしたの?」と聞くと、イトコから手相を見てもらったと。
「結婚できない」と言われたと言うんですね。
「おかあさん、運命は決まっているの?」と、手のひらを見ながら、言う。
母、黙って、下を向く。
(その深刻な表情に、爆笑こきそうな勢いを、必死にこらえてました)

息子、叫ぶ。
「結婚できないなんて、人生最悪じゃないか!」
(この年で、結婚観かよ・・・・、もう呼吸困難になりそう。。。)

呼吸を整えて、彼に言いました。
「だいじょうぶよ。
 あなたは人を大事に好きになることができる力をたくさん持っているから。
 だから何も心配しなくて、だいじょうぶ。
 あなたはとても相手を大切に好きになることができる大人になるし
 あなたを好きになる女の人は絶対にあらわれるから。」
(それがかーちゃんの、アンタに対しての育児の目標なんだよ)

安堵した表情で、こっそり教えてくれました。
名前は言えないが、好きな子がいるんだそうです。
学校に行くのが、楽しいそうです。

うっくっくっく、たまらん。
(息子、ネタにしてゴメン)