父の様子がおかしいと、母から聞かされたのが今月初めである。
「ご飯を食べなくなっちゃってね。口に入れても、噛まずにずーっとそのままの姿勢でいるんだよ。放っておくと、昼過ぎまで座っているよ。動くのもイヤみたい」
いよいよ認知症かと覚悟を決めた。
「実は、認知症の薬は5年前から飲んでるんだよ。木の実を見つけたとか言って、ガラクタばかりを拾ってくるようになったからね」
そんなことがあったとは! でも、薬を飲み始めてからは元に戻ったそうだ。
「気になるのが足のむくみでね。何でだか知らないけど、パンパンになってるんだよ」
「それはもう、病院に連れて行くべきだよ」
「そうだねぇ。そうしようかねぇ」
母もだいぶ参ってきたらしい。数日後には、いやがる父を無理やり病院に引っ張っていった。
「肺炎です。すぐ入院してください」
医師の診断はまったくの想定外で、母も私も驚いた。
50年近く喫煙を続けていたせいで、父の肺はボロボロになっているそうだ。十分な酸素を取り込むことができず、頭はボンヤリ、酸素が行き届かない足はパンパンとの説明を受けた。酸素ボンベからつながった管を鼻に入れて、毎日ベッドの上で過ごすことになった。
先週、娘と一緒に父の見舞いに行った。母から聞いた病室に着くと、「砂希か」と声がする。
よかった、ボケていなかった。
話が弾む相手ではないので、妹が置いていったタブレットを借りる。数独、五目並べ、ソリティアなどのゲームをしていると、父も笑って見ていた。1時間ほど滞在したあと、母が一人で住む家に向かった。
いつもは那須塩原駅まで父が迎えに来てくれるが、あいにく入院中なので、東北本線に乗って最寄駅まで行く。
「うわ、無人駅だよ、ここ」
自動改札はおろか、券売機すらないではないか。
券売機の代わりにあったのが、乗車駅証明書を発行する機械である。
これを持って、他の駅で清算すべしと書いてあった。のどかだな……。
両親の家まで、歩いて15分かかる。蝿がブンブン飛び、毛虫が地面を這う道をトコトコと歩いた。田んぼではカエルがゲロゲロ合唱している。マイナスイオンがたっぷりありそうだ。
「こんにちは~」
一泊して夕食を作り、少しは母の手伝いができたかな?
酸素が十分に行き渡ったせいか、父は2週間ほどで回復した。
「おかげさまで、お父さんは今日退院だよ。ありがとうね」
朝から母の弾むようなメールが届いた。それは何より。今日はいい日だな~。
ラジオから「4月26日。今日は何の日」という声が聞こえてきた。
「1937年、ドイツがスペインの都市ゲルニカを攻撃し、2000人以上の死者を出しました。画家のピカソはこれに抗議し、わずか1カ月で大作『ゲルニカ』を仕上げました」
「1986年、ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所で大規模事故が起こり、多くの人が被ばくしました」
…………。
おっと、ろくな日じゃないぞ、今日は。
ちなみに、私がブログを始めたのも2008年の4月26日である。今日は記念すべき10周年のはずなのだが、ゲルニカとチェルノブイリのあとでは素直に喜べない。
ひとまず、父の退院おめでとう!
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「ご飯を食べなくなっちゃってね。口に入れても、噛まずにずーっとそのままの姿勢でいるんだよ。放っておくと、昼過ぎまで座っているよ。動くのもイヤみたい」
いよいよ認知症かと覚悟を決めた。
「実は、認知症の薬は5年前から飲んでるんだよ。木の実を見つけたとか言って、ガラクタばかりを拾ってくるようになったからね」
そんなことがあったとは! でも、薬を飲み始めてからは元に戻ったそうだ。
「気になるのが足のむくみでね。何でだか知らないけど、パンパンになってるんだよ」
「それはもう、病院に連れて行くべきだよ」
「そうだねぇ。そうしようかねぇ」
母もだいぶ参ってきたらしい。数日後には、いやがる父を無理やり病院に引っ張っていった。
「肺炎です。すぐ入院してください」
医師の診断はまったくの想定外で、母も私も驚いた。
50年近く喫煙を続けていたせいで、父の肺はボロボロになっているそうだ。十分な酸素を取り込むことができず、頭はボンヤリ、酸素が行き届かない足はパンパンとの説明を受けた。酸素ボンベからつながった管を鼻に入れて、毎日ベッドの上で過ごすことになった。
先週、娘と一緒に父の見舞いに行った。母から聞いた病室に着くと、「砂希か」と声がする。
よかった、ボケていなかった。
話が弾む相手ではないので、妹が置いていったタブレットを借りる。数独、五目並べ、ソリティアなどのゲームをしていると、父も笑って見ていた。1時間ほど滞在したあと、母が一人で住む家に向かった。
いつもは那須塩原駅まで父が迎えに来てくれるが、あいにく入院中なので、東北本線に乗って最寄駅まで行く。
「うわ、無人駅だよ、ここ」
自動改札はおろか、券売機すらないではないか。
券売機の代わりにあったのが、乗車駅証明書を発行する機械である。
これを持って、他の駅で清算すべしと書いてあった。のどかだな……。
両親の家まで、歩いて15分かかる。蝿がブンブン飛び、毛虫が地面を這う道をトコトコと歩いた。田んぼではカエルがゲロゲロ合唱している。マイナスイオンがたっぷりありそうだ。
「こんにちは~」
一泊して夕食を作り、少しは母の手伝いができたかな?
酸素が十分に行き渡ったせいか、父は2週間ほどで回復した。
「おかげさまで、お父さんは今日退院だよ。ありがとうね」
朝から母の弾むようなメールが届いた。それは何より。今日はいい日だな~。
ラジオから「4月26日。今日は何の日」という声が聞こえてきた。
「1937年、ドイツがスペインの都市ゲルニカを攻撃し、2000人以上の死者を出しました。画家のピカソはこれに抗議し、わずか1カ月で大作『ゲルニカ』を仕上げました」
「1986年、ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所で大規模事故が起こり、多くの人が被ばくしました」
…………。
おっと、ろくな日じゃないぞ、今日は。
ちなみに、私がブログを始めたのも2008年の4月26日である。今日は記念すべき10周年のはずなのだが、ゲルニカとチェルノブイリのあとでは素直に喜べない。
ひとまず、父の退院おめでとう!
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
私は2年に一度しか実家に帰らない親不孝ものですが気にはしております~
来週の休日は95歳になる祖母に顔を見せて来ます。自分の“解放”も兼ねて~
父は80歳になりました。
日本男性の平均寿命がそれくらいですから、よく生きたなぁと思います。
しかし、世の中には100歳でなお現役サラリーマンを続ける男性もいるとか。
なら、もっと生きられるかもしれませんね。
見舞いに行ったら、私と娘がタブレットで遊んでいる姿を見て喜んでいました。
ZUYAさんもおばあさまを喜ばせてくるんですね。
原因が分かってよかったですね、治療に専念なさってください。
タバコを吸わない父でしたが、病名は間質性肺炎というものでした、常時酸素ボンベをつけての生活と医者から言われても、言うことを聞かずすぐに外してしまうので困っていました…
脳に酸素が回らなくなったのか、強い薬のせいなのか、急に呆けが進んで…
追伸
今庭でウグイスが鳴いています、まだちゃんと鳴けないで練習中のようです(笑)
肺炎は身近な病気なんですね。
父は常時酸素ボンベを携行しているのか、母に聞いてみましたが返事は来ず。
父自身は「好きで吸っていたんだから仕方ない」と割り切っていましたよ。
片割れ月のことも脳裏に浮かびました。
やはり、今からでも禁煙なさったほうがよいのではと。
ウグイスも練習するんですね。
音痴のウグイスだったらどうしましょう(笑)
肺炎といえば、誤嚥性肺炎も恐ろしいです。
口に入れたものが飲みこみにくくなる年頃に、ゴホッとむせたついでに、食べ物のかけらが肺の方へ行ってしまうのが原因になるとか。
タバコならば原因も思いつくでしょうが、そんなカケラの仕業とは気づくはずもなく、発見が遅れるのだそうです。
いつか自分も行く道、労わって差し上げてください。
豊かな酸素は私の脳にも必須です。
誤嚥性肺炎はよく聞きますね。
隠れインフルエンザと同様に、高齢者は発症がゆるやかのようです。
ちょっとの変化を見逃すと、取り返しのつかない結果になるかもしれません。
今回のことが教訓になりましたよ。
Hikariさんのコメントを読み、今度は母のことが気になりました。
父の世話で疲れ切っていないかな~。
ひとまずメールしてみようっと。
症状も程度も様々だけど、お父様は軽いようで、安心しました。
そして、退院も、おめでとうございます。
こちらのローカル線も、ワンマンカー。
バスのように、乗車整理券を取って乗ります。
でも発行器の方が楽しそうで、インスタ映えもしますね♪
認知症には誰もがなるようですね。
認知症になる前に亡くなるか、亡くなる前に認知症になるかの差だと話していた医師がいました。
納得。
ご飯の食べ方がわからなくなるなんて……。
嚥下力が落ちると、流動食になることもありますし。
食べる喜びは奪われたくないわぁ~。
一つ手前の駅には自動改札がありました。
でも、下車駅になかったらエライことですから、ICカードではなく切符を買ったんです。
正解でよかった。