昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

ビフテック・フリット

2012-03-24 12:22:00 | グルメ

またまた、ビフテキの登場である。なにせ、ここのところ、サミットで牛肉のセールを頻繁にやっているの、それを大量に仕入れて、簡単にできる料理で腹を満たすということに慣れてしまった。ビフテック・フリットについての薀蓄はもう嫌というほど書いた。しかしあえてまた書く。ビフテック・フリットはフランス人の国民食である。向こうのリーマンは、会社の近くのカフェで、この牛肉の焼肉を食い、そして家に帰ると女房の手料理で、また食うことになる。これが連中にとって全く飽きない。ちょっとしたレストランでは、もっとほかの料理もあるのだからそちらのほうを食味してみてもよさそうなのだが、彼らは牛肉と揚げ芋を食いまくる。もっとも、最近は、フランス人のほとんどが共稼ぎで、主婦はあまり家でおさんどんをすることがなくなったと聞く。その場合、主婦は、会社からの帰りがけに、シャルキュットリー(総菜屋)に寄って、サラダやソーセージ、ハムなどの類を仕入れて、晩の食卓に乗せる。これだったら皿に盛るだけだからいかにも簡単である。フリットとはポンム・フリット、フレンチ・フライドポテトのことである。これに大量の青菜を添えて食べるので栄養のバランスは取れている。そもそも牛肉を焼いて食う習慣は、18世紀にイギリスから渡った比較的新しい歴史のものである・しかし当時は、牛肉を食べられるのは貴族か都市のブルジョアで、農村部ではたまに塩漬けの豚肉を食べられるのがせいぜいだった。それに従えば、フランス人の肉食への情熱というものはすさまじいものがあることは容易に想像できるのであっって、太陽王ルイ14世は100皿にも及ぶ料理のコースを臣下や外国の賓客の前で食べたといわれる。もちろん全部、胃の腑に収めるわけではなく、つまみ食いであったろうとされている。要は権力の誇示である。この料理には、野禽や家禽なども含まれていたがすべて「王のヴィアンドゥ(王の肉)」と称されていた。肉を大量に食べることが権力の誇示になったのである。ところで、最近のフランス人は、エリートはスマートではなくてはならぬという呪文にはまり、肉は赤身のところを少々、パスタや芋はスキップする傾向にあるという。前世期のガストロノミー崇拝は、スマート&リーンの一大方針にかき消されてしまったかのようである。

ガラス戸を固く締めるや春の宵     素閑

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