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インド映画の平和力

ジャーナリストさこう ますみの NEVER-ENDING JOURNEY

日印関係のダークサイド:日印共作アニメ『ラーマーヤナ ラーマ王子伝説』〈Ramayana: The Legend of Prince Rama、1993〉の周辺

2022年10月11日 | 日本とインド
 元ボンベイ総領事の武藤友治(Tomoji MUTO;1930-2021)氏が、外務省を定年退職したのち、初の著作『今日のインド 類をみない多様性の国』(サイマル出版会)を出したのは、1994年だった。
 書店の新刊書棚で見つけ、直ちに購入した。当時(いまもたいして変わらないが)、日本人が書くインド関係書籍の貧しさに憤懣をかかえていたぶん、一読して感激。その気持ちを書きつらねた手紙を武藤氏に送ったところ、とても丁寧な返事をいただいた。

 以来、武藤氏が新刊を出すたびに愛読してきたが、『五〇年の経験を本音で語る 巨象インドの真実』(出帆新社、2017年)で最後になった。
 それを手にした5年前、酒向雄豪(Yugo SAKO; 1928-2012)という人物との交遊録の一部分に、目を剝いた。 

 インド2大叙事詩のひとつ『ラーマーヤナ』を、日本とインドで共作した長編アニメーション化した作品がある。『ラーマーヤナ ラーマ王子伝説』〈Ramayana: The Legend of Prince Rama、1993〉だ。この実質的な立役者が酒向雄豪である。
 同作が存在すること自体は、かなりむかしから知っていたから、酒向の名も見聞きしてはいたはずなのだが。

 ちなみに映画の公式サイトもある。
 画質は良くないが YouTube にもアップされている。

 以前から、インド関係のイベントなどがあると、それにちなんで特別に上映機会が設けられることも、そう頻繁ではないがあった。先日(10月1日)も、神奈川県横浜市にあるミニシアター、シネマノヴェチントで特別上映されていた。

 東京外国語大学の定例上映会「TUFS Cinema」でも、2019年に告知、2020年に実績がある。
 製作・制作の背景については、このページがいちばんわかりやすい。といっても、PDF にリンクされている、著作権者によるものであろうチラシの解説が反映されているだけだが。

 それによると、ワールドプレミアは1993年1月のインド・デリー国際映画祭。その次にこう説明されている。

「インドでの初公開から世界各地での映画祭で高い評価を受けたが、いよいよ公開という時に、オーム真理教地下鉄サリン事件、インドのバーブリマスジッド破壊事件が勃発。作品は配給の機会を奪われた。」

 オウム真理教による地下鉄サリン事件は1995年3月、バブリマスジッド破壊は1992年12月である。ここでいう配給とは日本での話だろうと思うが、なぜ時系列やコンテクストを無視した、奇妙な書き方をするのだろうか。

 日印関係には、きな臭い部分が、少なからずある。
 しかし、日本人の圧倒的多数のとらえ方は、いわゆる「お花畑」だ。

 この意味合いで、『ラーマーヤナ ラーマ王子伝説』をめぐる覚え書きでも示しておこうと考えていたところ、重要な記事が『WIRE』にアップされた。
「B.B. Lal and the Making of Hindutva Archaeology」(2022年10月10日付)である。

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