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「流通革命」へのアンチテーゼ2冊「問屋と商社が復活する日」&「流通戦略の新常識」(酒の本棚)

2008-01-16 10:46:41 | 酒の本棚(書評?)
仮に年間365冊本を買うとして、10冊も買わないのがいわゆる経営・ビジネス書ですが、たまたま2冊読むことになりました。

月泉博(2007):「流通戦略」の新常識(PHPビジネス新書041)、PHP研究所、206P.

松岡真宏(2001):問屋と商社が復活する日、日経BP出版センター、275P.


最初の本(以降、「新常識」と略)は昨年10月の新刊、対して後の本(以降、「復活」と略)は2001年ですから7年前の発行です。

両者に共通するのは過去50年近くにわたり世間を席巻した林周二(1962)「流通革命(中公新書)」へのアンチテーゼとしての問屋有用論です。
(その他、勝ち組流通企業として「しまむら」と「ユニクロ」を掲げているところも同じです、、、、、7年を経て、挙げられるこの2企業、たいしたもんです)

まず、2001年発行の「復活」から見てみましょう。
この本は、第一章に「『流通革命』はウソである」を据え、「流通革命」という言葉からしばしば言われる流通業の生産性の(アメリカとの比較の中での)低さが実は誤りであることを理論的に説明するとと共に、そもそも「流通革命」という言葉自体が不明確で、それ故、時代背景にのって広まり、信じられた、としています。

その上で、「流通革命」でイメージされる問屋不要論、中抜き論に対し、問屋の機能として、
(a)品揃えを豊富にする
(b)小売業における参入障壁を下げ、小売業における健全な競争の促進を図る

を挙げ、これらは消費者にとってメリットがあることから問屋有用論を唱えています。
ただし、問屋が有用なのではなく、「優秀な問屋」が有用であるとして、その条件を4つ挙げています。
①幅広く総合的な品揃えができる問屋
②ある専門的な分野に特化した「深い」品揃えができる問屋
③日本のさまざまな地域での商品の売れ筋を掴み、適切に提供できる問屋
④小売業の財務審査力に優れて、経営指導だけでなく財務指導も出来る問屋




この本も序章に「45年後に訪れた’申請’流通革命」を据え、流通革命は起きていない?的な視点でこれまでを整理しています。

その上で、これまでの業界の動向について、現在の再編など、デパートの統合等といった最新の状況も念頭に、その歴史的必然性を説いています。
その意味では「お勉強」の本とも言えます。
ただ、第5章で仮説/中間流通基幹主導論として、問屋の役割についてなどの著者の仮説を展開しています。正直、「中間流通基幹主導論」という言葉の係り結びは全然分からなかったのですが、中身は、「メガ卸」や「小売業進出」あるいは「情報と物流システムの強化」などです。
その中で、アメリカのシステムとしてホールセラーに加え、ラックジョバーを肯定的に紹介しているのが興味深いものでした。


両者とも、どちらかというと「再編」「メガ卸」という流れで書かれており、酒類関係での「よい例」も菱食、国分さんなど。

中小卸や、我々のような零細卸は、、、、、どうなのでしょう?
恐らく、こうした流れの中でのニッチ - 地域酒販店さんのフォローや東京という大都会の中での指向超細分化への対応 - を狙っていくことになるのでしょうか。
そこには恐らく典型的な成功例は無く、自ら成功例を作っていくことになる、という感を強くしました。

(担当:附属酒類経済・文化研究所)

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