トロムソでは、1月21日、2か月ぶりにお日様が顔を出し、
日に日に明るくなっています。
待ちに待ったお日様。
しかし、私はそれを
溢れる涙と嗚咽で見ることができませんでした。
今日は、皆さんに悲しいお話をせねばなりません。
1月28日ソラは、永久の眠りにつきました。
●ソラに起こった激痛。
1月19日の夜、ソラはいつもと変りなく散歩に出たのですが、
帰り道突然歩けなくなったのです。
翌朝一番にお医者さんに行き、
できるチェックは全部してもらいました。
健康的にはまったく異常なし。
ただ高齢からくる
脊柱脱臼を起こしているということがわかりました。
(これは痛烈な痛みだそう)
それによってある反射神経も反応していない。
ソラには以前から痛みがありました。
ですから散歩も気をつけていました。
そして、いつからか、
以前と同じ方法で撫ぜたり抱いたりしにくくなっていました。
しかし、それとはまた別です。
突然、脊柱脱臼に襲われたのです。
そして、先生は、私たちに「安楽死」の話もされました。
は?
私たちには全く考えられない話でした。
しかし、後に「これしかない」と思う時が来るのです。
●回復の希望をもっての痛み止め。
この反射神経がつながれば回復の見込みがある。
そのために反射神経を修復する薬と痛み止めの薬を使うことになりました。
すると、反射神経が一本繋がったのです!
15歳にして奇跡!
しかし、それも束の間と化しました。
薬の強さを調整したり安定剤も服用しましたが、
どれも回復にはつながらず、
ソラの歩行は日に日に悪くなっていきました。
何度も腰を下ろそうとするのですが、痛くてできない。
そして、また歩き続ける。
私が止めようとすれば、甲高い声で叫んで逃げる。
腰から背骨を通して体中が痛いようだ。
その間に脚はよろける、ついには転ぶ。
それでも立ち上がって、歩き続ける。
何とか、抱き止める方法を見つけたのですが、
何分経っても激しい息遣いは休まらず、
そのうちまた鳴いて、歩き出す。
薬の効く時間が短くなったり、
効いているのか?という状態も訪れるようになりました。
そのうち薬が効かなくなる・・・。
ソラはどうなるのか・・・
これは、どういうことを意味するのか・・・
●「安楽死」を肯定する考え方の基本
「安楽死」。
それは、もう歩くこともできず、
食欲もなくなって、
もうすぐそこに「死」が見える状態の時に使うもの。
私はそう思っていました。
この痛みの中、15歳の誕生日を迎えたソラは、
食欲もあり毛並みはつやつや。
私が思い浮かべていた姿とは、全く違うのです。
しかし、今ソラを襲っている、
そしてこの先和らげることもできない激痛は避けようがないのです。
「動物の立場になって、
動物に不必要な苦しみを与えてはいけない」。
それが、ノルウェーでは動物を飼う基本的考え方。
飼い主の気持ちは別なのです。
犬だけでなく、酪農国で野生も含め、
身近に動物がいる彼らの生活には、
この考え方に沿ったエピソードがいくつかあります。
それを聞いた時はピンと来なかったのですが、
すべてに納得が行きました。
もし、それしかないとしたら、いつが一番いいのだろう。
何度も電話で相談する相方さんに、先生は
「穏やかにおれる時。早い方がいい」
と言われていたそうです。
●ハープが役に立ったとき、役に立たなくなったとき
ソラにできることが限られた私たちに、
ひとつ救いの術がありました。
それは、ハープ。
ハープを弾くと、
歩き続けるソラがゆっくりゆっくりと腰を下ろし
眠りに就くのです。
私の相方さんは、「マジックだ」と言いました。
ソラは私のハープの第一聞き手で、
本当に好きでいてくれました。
6年間毎日毎日聞いてくれたお蔭で、
こうしてソラに弾いている時間。
なんと尊く思えたことでしょう。
しかし、ハープマジックが効いたのも
私たちが決心する2日前まで。
ついに弾いても弾いても歩き続けるようになるのです。
●この日のこの時間帯がベスト
26日金曜日、
私たちは「いつがいいのか?」を本気で検討しました。
これまでのデータ(表に記録していました)、
薬の効力時間、ソラの症状と傾向などから、
私たちなりに予測すると
「日曜日の午前10時」。
すでに薬の効力時間は短くなっているしムラもある。
でも、前倒しに薬をあげたら、
土曜日に短時間でも穏やかな時間を作れるだろう。
しかし、ソラの変化が早まっていることから、
月曜日では穏やかな時間を作る自信はない。
二人の間で、迷いなく異議なく決まったことは、
私たちの救いでした。
●土曜日、プレゼントのような時間
土曜日は、これまでにないソラの落ち着いた日になりました。
まずは、ソラの15歳の誕生日を祝いました。(当日は、それどころでなかった)
息子と娘の声にソラは反応し、カメラ越しの彼らを見つめます。
私も相方さんもソラを抱いて思いのたけ撫ぜることができました。
ソラとよく一緒に過ごした私たちの友だちにも会いに来てもらうことができました。
私と相方さんの演奏も聞いてもらいました。
今思っても、あれは「プレゼント」のような時間でした。
●いよいよ日曜日・・・
日曜日朝5時、相方さんが、言いました。
「4日間、大便が出てないじゃないか。
だから余計に痛いんじゃないか?」
ささやかな可能性を見つけようとする相方さんの言葉でした。
「そうや!今日はそれを試さなあかん!」
ところがその直後、早朝からソラは大便をしたのです。
それから薬も飲んだにも拘らず、
ソラは痛がり鳴き歩き始めました。
そして、なんとか穏やかにおれるようにと
お医者さんに確認し、痛み止めを追加しました。
●ソラ、今度は空高く飛ぶよ。
ソラが穏やかにおれる環境で、
ということでお医者さんは私たちの家に来てくださいました。
「ソラは、ここまで飛行機で飛んできたなあ。
今から、らくーになって、
もっと高-く、空たか―く翔ぶよ。
だって、ソラの名前は、"お空のソラ"やからな」。
ソラは、私の膝で私の言葉をじっと聞いてくれました。
そして、穏やかに静かに眠りにつきました。
この日は前日までの連日の曇天と打って変わって、
太陽の光、月の光、星の瞬き、オーロラまで手伝ってくれて
朝から晩までずっと満天、美しい空模様。
それが連日続いています。
全身全霊でソラと過ごした10日間の疲労感、
心に残った重きもの。
まるで、それらを見通しているかのように。
ソラ・・・ありがとう・・・。
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何とかこのブログを書くことができました。
皆さん、長文を読んでくださって
ありがとうございました。
生前お世話になった皆さん、ありがとうございました。
そして、ソラのことをずっと遠くから見守って下さった皆さん、
ありがとうございました。
本当にソラは幸せもんです。
2013.11.