VII.みどりの部屋(虹の世界) D092.花が美しいのも…… 「花が美しいのも、ミミズくんやバクテリアのおかげというわけです」 「それに、これからも虫と植物の友好は続くでしょう」 「そうでしょう。豊かな実や果物をならせるのも、虫と植物の友好があるからというものです」 「果物、ジューシー、ア・ハー」 カールはよだれをこぼした。 「しかし、あなたのように大食いでは困りますなあー」 大きな木は現実を見つめはじめた。 「まあ、それは、それは、終わったことですから、こう植物もまた生えたのですから、お許しくだされ」 カールは老人のような口調になっていた。本当は魔法使いのおじいさんですから、それも仕方がないことではある。 「幼虫のいたりとして、今度だけは許してあげましょう」 わかげのいたりというのは聞いたことがある。虫でいえばそうなるのかなあーとゆりかは思った。 「ありがとう、これもユリカのおかげだよ」 カールはお礼を言ってくれた。 それから、しばらくして、ユリカとカールはどうしたら地上におりられるのかを考えていた。 木が二人の様子を見てたずねる。 「どうしたんだね」 「わたし、この不思議な世界に迷いこんでしまったの」 ユリカは困り顔だった。 木は同情なんかまったくしないで、 「あ、そう」 愛想もくそもなく返事した。 ユリカがいい子だといっても、人間であることで心をゆるせないのだろう。 それでも、ユリカは続けて話す。 「それで、いろんな世界に入りこんで、ここまで来たの」 木は、表情ひとつかえないで、 「そう、それで」 と、もっと話すようにとせがんだ。 「どうやったら、地上におりられるか、考えているの」 ユリカは真剣に話した。 木は、いとも簡単に、 「あ、そう。それじゃ、これがイエロー・ルームの入口だよ」 と枝をユリカのところにおろした。 「イエロー・ルーム?」 カールは首をかたむけた。 「そう、ここから出ようと思ったら、それしかないんだよ」 木は残念そうに言った。
↓1日1回クリックお願いいたします。 ありがとうございます。 [レインボー・ループ]もくじ |
最新の画像[もっと見る]
- いい音ってなんだろう-あるピアノ調律師、出会いと体験の人生- 12年前
- 音楽演奏の社会史-よみがえる過去の音楽- 12年前
- AERA ’12.7.16 12年前
- 週刊現代 2012-8-11 12年前
- AERA ’12.7.9 12年前
- 必ず来る!大震災を生き抜くための食事学-3・11東日本大震災あのとき、ほんとうに食べたかったもの- 12年前
- 僕のお父さんは東電の社員です-小中学生たちの白熱議論!3・11と働くことの意味- 12年前
- 日本の原爆-その開発と挫折の道程- 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/13 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/6 12年前