VI.青の部屋(虹の世界) D072.人間の御先祖さま? カールは、いつものへんな笑いをした。それから 「これが、きみたち人類のご先祖様だよ。この弱くって小さな生き物がきみたち脊椎動物の祖先なんだよ」 と教えてくれた。 ユリカは、小さな魚の体は透き通っていて、ほそい背骨があるのがはっきりと見えた。 「その背骨、つまり脊椎を持った構造が重要だったんだ。海の世界は、ほら、ますます、生き物が増えていく、つまり……」 カールは目の前の魚たちは、たくさんに増えていた。 ユリカたちは流されているので、ちがう場所に来たともいえるのだが……。 「このように海の中が生物でいっぱいになるんだ。生き物たちは陸にあがろうとする。その時、兜で身を固めたものは重すぎて、陸上に上がることはできず、この小さな魚の子孫が上がることができたんだ」 人類がまだ誕生していない遠い昔のことを教えてくれた。 「そして、ずっとたって人類が生まれたのね」 「まだだよ。恐竜の時代があったり、人類の歴史はとっても新しく、人類の歴史はまだとっても短いんだよ。この地球の歴史から考えたならばね」 カールはどこかの博士みたいだなーとユリカは思った。だって、とても物知りだからである。 「恐竜と人間はいっしょにいなかったんでしよう」 ユリカは質問した。 「そう言われているね、反対意見をいっている人たちもいるけどね。この魚たちも人類と同じ時代の地球にはいなかった。オウム貝などの一部の生物を除いて……。ところで、こんな話をしていたのかな」 カールは首をかしげた。 「弱肉強食の話をしていたのよ」 ユリカは思い出してはなした。 「そうだった。強いから生き残り、弱いから生き残るというものじゃないんだ。この目の前の魚の子孫が生き残り繁栄していくんだ。弱肉強食はたとえでしかないんだ。すべてではないんだ。人間は科学というものをもった。それで人類こそが支配者だと思っている。科学というのも、あの兜に似ているよ。確かに今までは役に立った兜だったろうけど、その兜によって滅びるかもしれない」 カールは嘆いていた。 ユリカはカールがユリカのおじいさんのように思えた。よく似たことを言っているからである。 「ライオンは百獣の王と言われるが、もし、ライオンだけになったら、ライオンは滅ぶだろう。なぜなら、食べ物がなくて、お腹がすいて、死んでしまうだろうね。ライオンは兎たちや弱い生き物によって生かされているんだよ。弱い動物は草や木の実を食べて生きている。何も意見を言わない植物たちが、動物全てを生かしているんだよ」 カールは熱心に話している。 話をおえるとユリカがテレビや図鑑で見慣れている海にかわっていた。でも、いろいろな色はなく、青色だけしかない。 「わぁー、クジラよ」 ふたりは、クジラが通るあいだ。暗闇の中にいた。
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最近は「人間の修理工場」と病院のことをいう人がいます。
患者さんが退院していくとき、「これで家にかえって、
やっと病気がなおせます」とブラックジョークがぴったり
くるような感じもしないこともないと思いました。
生語? 「医は算術」
よく言われますよね。