磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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象さんのすべり台

2005年12月07日 | 短編など
象さんのすべり台

1.

動物園のなかの公園には二つのかわったすべり台がありました。
一つはキリンが地面に顔をつけていました。
首の部分がすべるところでした。

もう一つは象のすべり台でした。
象は鼻を地面につけていました。
そして鼻がすべる所なっていました。

階段はキリンと同じで尻尾になっていました。
そして鼻がすべるところになっていました。

そして象とキリンは互いに顔を見合わせて並んでいました。

「わーい、今度は象さんのすべり台にしよっと」
「私はキリンさんよ」
「あはは……」
その中にイタズラ坊主の健坊がいました。

そして健坊はキリンさんのすべり台にみんなが並んでいるのに、
「ふん」
と言って押しのけ、すべり台に登って、
スィーと
滑りました。

「ウヒャー」
と手を離していました。

「あぶない」
女の子がいいました。

健坊はパッと飛んで、チャンと着地しました。

パチパチ……。
数人の子どもが拍手しました。

健坊は
「えへへへ……」
笑って鼻をこすりました。
手が土や何かで汚れていたので、
鼻は真っ黒になりました。

「今度は象さんだ」
健坊はわりこんでさっさっと一番先にすべりました。

すると、すべり台の象さんは鼻をもたげました。
「ウワッ、ウワッ」
健坊は驚きました。
「こらー、割り込んだらダメじゃないか」
象は鼻を上に持ち上げました。

みんなは困りました。
「順番まもってよね」
「ぼくら、ずっと並んでいるんだよ」

「そんなこと知るかよ」
健坊は飛び降りました。
「あぶない!」

象のすべり台は、夜空をみて、
「こんな生活いやだ」
と隣のキリンに話しました。


2.

ノッソ ノッソ エヘン。
大きな象が歩いてきました。
お相撲の横綱でもあんなに堂々としてはいません。

ノッソ ノッソ エヘン。
まるで動物園の飼育係をお伴にのようにして通りすぎていきます。

ノッソ ノッソ エヘン。
象のすべり台の横で立ち止まりました。

プッフォー!
鼻をまっすぐにあげて泣きました。

ノッソ ノッソ エヘン。
「あの象さん、今度、動物園に来た新入りの象さんだよね」
キリンが話しかけてきました。

「そうみたいだね」

いつもどおり健坊がイタズラをしています。

「ねぇー、なんだか象さんしょんぼりしているわね」
女の子たちは、象のすべり台にやさしい言葉をかけました。

「ねえー。キリンさんのすべり台に行きましょうよ」

象は余計に悲しくなって、涙をポローッとこぼしました。


3.

夜になりました。
「ねえー。象さん。どおしたの」
「僕」
「どおしたの」
「僕、本物の象さんになりたいんだ」
すべり台の象は思い切っていいました。

「でも、象さん。それは無理よ」
「僕は本物の象さんになるんだ」
「どうしてなりたいわけ?」

キリンは象をなだめようとしました。
「私たちって、子どもたちと触れ合えて楽しいと思わない」
「ぼくは本物の象さんになりたいんだ」

今までお月様が光っていたのに、
厚い大きな雲がそれを隠しました。
あたりは真っ暗になりました。

「歩いてやる、歩いてやる」
象さんの声が暗闇に響きした。

「無理よ」
キリンの高い声が響きました。

「歩いてやる。立派な象さんになってやる」

「あなたは今でも立派よ」
「違う。立派なんかじゃない」
象はいいました。

ドスン!

「ねえーねえー、どうしたっていうの!」


4.

子どもたちがやって来ました。
「私、象さんのすべり台で遊ぶのよ」
「私はキリンさんよ」
「アッ」
「アッ」
二人は真ん丸小さなお口を開けて驚いていました。

「象さんのすべり台、倒れている」
「わあー、象さんのすべり台、こけている」
次々にくる子どもたちは驚きました。

昨夜、象は歩こうとしました。
でも、足をあげたとき、こけてしまったのです。
立ち上がり方なんてわかりませんでした。

「象さん」
子どもたちの輪ができました。

象はうつろな目で歩けなかったと涙を浮かべていました。

「でも、象さん。すごいわー」
キリンは驚いていました。

「健坊、大変だぞおー。すべり台の象さんがこけているぞ」
それをきくと健坊は走り出しました。

「象さん、しっかりしてくれよ。ちゃんとルールを守るからね」
悪戯小僧の健坊がいうと、まわりの子どもたちも話しました。

象さんは今度はコンクリートで足を昔よりも、
しっかりつけられました。

象さんは悲しんでいるだろうって、
そんなことはありません。
ほら、楽しそうに子どもたちと遊んでいます。

象は、みんなに思われてとても幸せだったのです。









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ありがとうございます。




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2 コメント

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心が (雨漏り書斎)
2005-12-07 21:30:18
和みます。
返信する
くらい話題ですが。m(_ _)m (鱧男)
2005-12-07 23:12:56
三世代同居の老人の自殺率の方が、

独居老人の自殺率より高いそうです。



その理由は、

孤独には耐えられるが、

ゴミ扱いには耐えられないそうです。



この記事を読んでいろいろ考えました。

ぼくが父を独居老人にしていましたから……。

でも、邪魔者扱いは一度もしたことありませんよ。

よかったような、悪かったような……。
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