磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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27.横綱ジョンさん

2005年07月04日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



三、タイベン

27.横綱ジョンさん





 翌日、幸江が蝋石(ろうせき)で別館の前にかわいいコックさんの大きな絵を書いている。

 蝋石は駄菓子屋さんで買ったものだ。別館の前はコンクリートで固められていたので、蝋石で絵をかくのにあっている。

「この絵は歌があってね。♪棒が一本あったとさ……」
 と幸江が歌い出した。
 みんなもつられて歌い始める。

「そういや、幼稚園のころのお絵書きにこのコックさんよく書いたなあー」
「絵書き歌、おもしろいですね。タコの絵書き歌を知っています」
 ジョンさんはうれしそうに話した。
「ぼくも知っているよ」
 幼稚園に通っているころによく書いたと雄二は思い出した。

「でも、かわいいコックさんは、お絵書き歌だけでは終わらないのよ。これで、ケンケンパをするのよ」

「ほおー、おもしろそうですね」
 ジョンさんはケンケンパに興味をおぼえたようである。
 雄二は分校でグリコをしたのを思い出した。

「みんな、それぞれ気に入った石をもってきてね」
 幸江はもうきれいな緑色の石をもっている。

「最初はコックさんの左の靴に石を投げ入れるんだよ」
「石のあるところは、足を置いたらいけないんだ」

「石がなければ、両足で着地できるのよ。今、コックさんの足のところには石ないでしょう。両足で着地できるのよ。コックさんの靴は左に石が置かれているから、私たちの足は置けないのよ。左の靴のところは石がないんで足を置いていいから、片足で着地するのよ」

「ケンケンするわけやあー」
 雄二はわかりやすいようにと教えた。

「両足はパなんや、両足でパと着地するからね」
 と幸江は教えた。

「だからケンケンとパでケンケンパなんや」
 池山は明るく話した。
「ほおー、それでケンケンパなのですね」
 ジョンさんはすごく納得していた。

 石を置いて、幸江はコックさんの右足にケンケンでいき、両足ではパで着地してリズムよく折り返してきて、右足で片足立ちして石を拾い元のところにもどってきた。
 幸江は成功したので、石を次の右の靴に石を投げ入れる。次は恭子の番だ。

 この遊びは女の子が好きな遊びだった。ジョンさんは足が長いので、ケンケンパは上手い。

「ジョンさん、ジョンさん、お電話です」
 幸江の母の声がした。それは新館のスピーカーから聞こえてきた。アパートには電話が管理人室の前に一台あって、電話がかかってきたら放送された。
 ジョンさんは遊びをやめて、管理人室へ向かった。

 何度かしているとあきてきた。

「次なにする」
「たんす長持(ながもち)したい」
「うん、やろう、やろう」
 みんなで、本館の共同炊事場の前に行く。

「♪たんす長持 どなたがほしい」
「♪お兄ちゃんがほしい」
「♪どうしていくの」
「♪お嫁さんになっておいで」
「ぷっ、池山がお嫁さんやって」
 みんなは大笑いである。池山は頬に手をあて、内股で歩いてくる。さらに、爆笑。

「何をしているのですか」
 それは、ジョンさんだった。

「たんす長持や」
「そうですか。日本に古くからある遊びですね」
「そのとおりです。ジョンさんも入れていいわよねえ」
「いいよ」
 池山は青空を見ていた。

「じゃ、ルールを教えないとね」
 幸江が詳しく教えた。

「♪たんす長持 どなたが欲しい」
「♪ジョンさんがほしい」
「♪どうしていくの」

「♪大鵬になって」
「大鵬って横綱のですか」
「そうです」

「わかったでごわす」
 ジョンさんは、しこを踏みはじめた。
「ジョンさん、うまいなあー」

「ほんまや」
 みんな、うれしそうに笑った。

 しばらくたんす長持をした。

 雄二は最初のころジョンさんはこの遊びに入りたがったけど、池山はいやがって駄菓子屋に行ったのを思い出した。
 ジョンさんはとても楽しそうだった。

「次なにする」
「タイベンしようや」
「おお、しよう、しよう」
「うん、私らの楽しいのやったから、今度はお兄ちゃんらので仕方ないわ」




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