『人間の心ヒロシマの心』
秋葉忠利・編/三友社1988年
いろいろな方が書かれている本です。それを編集されているのが今の広島市長さんですね。
「広島・長崎の経験を人類の祈りを基盤に」大江健三郎
－－広島にはげまされた二十五年。
大江さんらしい文章が続く。
大江は「キリスト教」について書く。下「」引用。
「私が、キリスト教徒的な祈りに期待するといいますのは、地球的な規模で「核の冬」というものから「生命の春」というふうに変わっていくということは、人類にとって非常に大きい転換だと、大きい根本的態度の変更だと言わなければならないからです。それは、キリスト教で言えば「コンバージョン（Conversion）」と言いますが、改心ということだと思います。したがって、私ども無信仰の人間には、キリスト教の伝統の中で、改心を、今まであった状態をすべて捨て、新しい生命に向かうという、そういう伝統の中で、改心を、今まであった状態をすべて捨て、新しい生命に向かうという、そういう伝統に期待を寄せることが、むしろ自然であると思うからであります。」
キリスト教ぬきに、西欧文学を考えることはできないだろうし、哲学もまた同様だろう。
それらの基盤をぬきにして、平和を語るなど不可能であるだろうと思う。
－－唯物史観だけというのは、間違いだろうと思う。
資本主義の言葉「物が動くとき必ず心が動く」
人がする行為に、唯物史観的な見方だけでは、狂った世界観になるだろうとボクは思う。
さらに、大江は「祈り」を書く。下「」引用。
「私どものディスカッションでは、浄土真宗の光寺先生の、仏教徒としてのお話もございます。日本人も伝統に立って、現代に生きる祈りを忘れたのではない。しかし、今日の経済大国日本において、祈りの声はよく響いているか？」
物、物になって、人の心もヒロシマの心も伝わりにくくなったようにボクには思えます。
井伏鱒二の『黒い雨』はアニミズムの祈りと大江。
高橋昭博さんが文章をよせられています。
「アメリカが憎いから」とうわごとを……。下「」引用。
「私は四十二年間を病弱な身体を引きずりながらも、なんとか生きてきましたが、あの一年半にわたる火傷の治療は、いま思い出してもたまらないほどの苦痛の連続でした。被爆後三週間くらいは失神状態が続きました。高熱のためうわ言を繰り返し、「アメリカが憎い！」と、口汚なく吐き続けたと、あとで母が教えてくれました。」
それから、東條が憎いに変化したという。下「」引用。
「それは長崎にも投下されたこと、何十万の人が死んだこと。私にとってはあまりにも衝動的なものばかりでした。そのようにいろいろなことを知った私は、「東條が憎い！」初めて思いました。」
戦争が憎いに変わって欲しいものです。
差別が憎いに変わって欲しいものです。
そしてラブ＆ピースになってほしいものです。
目次
－－修学旅行の原点とも言うべき学校が、東京の上平井中学校。
ツッパリ少年「広島へ行ってよかった。被爆者の痛みをとおして人間の痛みがわかる心をヒロシマで学んだ」
高橋は被爆の体験をしていない人は被爆者の気持ちはわからないといった。
俳優の山本亘さんが意見したという。下「」引用。
「高橋さん、あなたからそんな言葉を聞こうとは思わなかった。被爆者がそんなふうに私たち若者を突き放し、わかってもらえないから話しても無駄だと言えば、ヒロシマのことを一生懸命に知ろうと努力する若者や、被爆者の気持ちを真面目に理解しようとする若者は、果たしてどうすればよいのか」
そして、高橋さんはこう思われるようになったという。下「」引用。
「私が話したことの、たとえ一つでも二つでもいいから、若い人が心に何かを刻んでくれればそれでいいではないか」
大江健三郎が大田洋子について語っています。下「」引用。
「太（＊ママ）田洋子はゆがんでいると言えばゆがんでいます。ゆがでいるけれども、ゆがんでいるところに人間的真実があります。そういうゆがんだ人間がいろんな試行錯誤を重ねて、そこに、すべてゆがんでいながらまっすぐな人間の肖像というものがあらわれていくというのが文学だと思います。」
どうも、ボクは大田洋子よりも、その周辺の文学界の人たちがよほど曲っていると思う。
草饐（くさずえ） 評伝大田洋子－－
若杉慧と郷土
佐々木禎子さんのころには、まだ原爆病院はなく、広島赤十字病院で亡くなられたという。
もくじ
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目 次
秋葉忠利・編/三友社1988年
いろいろな方が書かれている本です。それを編集されているのが今の広島市長さんですね。
「広島・長崎の経験を人類の祈りを基盤に」大江健三郎
－－広島にはげまされた二十五年。
大江さんらしい文章が続く。
大江は「キリスト教」について書く。下「」引用。
「私が、キリスト教徒的な祈りに期待するといいますのは、地球的な規模で「核の冬」というものから「生命の春」というふうに変わっていくということは、人類にとって非常に大きい転換だと、大きい根本的態度の変更だと言わなければならないからです。それは、キリスト教で言えば「コンバージョン（Conversion）」と言いますが、改心ということだと思います。したがって、私ども無信仰の人間には、キリスト教の伝統の中で、改心を、今まであった状態をすべて捨て、新しい生命に向かうという、そういう伝統の中で、改心を、今まであった状態をすべて捨て、新しい生命に向かうという、そういう伝統に期待を寄せることが、むしろ自然であると思うからであります。」
キリスト教ぬきに、西欧文学を考えることはできないだろうし、哲学もまた同様だろう。
それらの基盤をぬきにして、平和を語るなど不可能であるだろうと思う。
－－唯物史観だけというのは、間違いだろうと思う。
資本主義の言葉「物が動くとき必ず心が動く」
人がする行為に、唯物史観的な見方だけでは、狂った世界観になるだろうとボクは思う。
さらに、大江は「祈り」を書く。下「」引用。
「私どものディスカッションでは、浄土真宗の光寺先生の、仏教徒としてのお話もございます。日本人も伝統に立って、現代に生きる祈りを忘れたのではない。しかし、今日の経済大国日本において、祈りの声はよく響いているか？」
物、物になって、人の心もヒロシマの心も伝わりにくくなったようにボクには思えます。
井伏鱒二の『黒い雨』はアニミズムの祈りと大江。
高橋昭博さんが文章をよせられています。
「アメリカが憎いから」とうわごとを……。下「」引用。
「私は四十二年間を病弱な身体を引きずりながらも、なんとか生きてきましたが、あの一年半にわたる火傷の治療は、いま思い出してもたまらないほどの苦痛の連続でした。被爆後三週間くらいは失神状態が続きました。高熱のためうわ言を繰り返し、「アメリカが憎い！」と、口汚なく吐き続けたと、あとで母が教えてくれました。」
それから、東條が憎いに変化したという。下「」引用。
「それは長崎にも投下されたこと、何十万の人が死んだこと。私にとってはあまりにも衝動的なものばかりでした。そのようにいろいろなことを知った私は、「東條が憎い！」初めて思いました。」
戦争が憎いに変わって欲しいものです。
差別が憎いに変わって欲しいものです。
そしてラブ＆ピースになってほしいものです。
目次－－修学旅行の原点とも言うべき学校が、東京の上平井中学校。
ツッパリ少年「広島へ行ってよかった。被爆者の痛みをとおして人間の痛みがわかる心をヒロシマで学んだ」
高橋は被爆の体験をしていない人は被爆者の気持ちはわからないといった。
俳優の山本亘さんが意見したという。下「」引用。
「高橋さん、あなたからそんな言葉を聞こうとは思わなかった。被爆者がそんなふうに私たち若者を突き放し、わかってもらえないから話しても無駄だと言えば、ヒロシマのことを一生懸命に知ろうと努力する若者や、被爆者の気持ちを真面目に理解しようとする若者は、果たしてどうすればよいのか」
そして、高橋さんはこう思われるようになったという。下「」引用。
「私が話したことの、たとえ一つでも二つでもいいから、若い人が心に何かを刻んでくれればそれでいいではないか」
大江健三郎が大田洋子について語っています。下「」引用。
「太（＊ママ）田洋子はゆがんでいると言えばゆがんでいます。ゆがでいるけれども、ゆがんでいるところに人間的真実があります。そういうゆがんだ人間がいろんな試行錯誤を重ねて、そこに、すべてゆがんでいながらまっすぐな人間の肖像というものがあらわれていくというのが文学だと思います。」
どうも、ボクは大田洋子よりも、その周辺の文学界の人たちがよほど曲っていると思う。
草饐（くさずえ） 評伝大田洋子－－若杉慧と郷土佐々木禎子さんのころには、まだ原爆病院はなく、広島赤十字病院で亡くなられたという。
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